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思い出のMSX大集合! いくつ機種名を言い当てることができる?:MSX30周年

2013年08月13日 20時30分更新

MSX30周年スロット&スプライトロゴ

 

■最初期編

 こうして改めてみると赤とか白とかシルバーとか、MSXってホント色とりどりですよね。やっぱり家電を目指してたんだなあと改めて思うわけですが、ちょっと視点を変えると「パソコンのデザイン」が確立されていなかったので、あれこれ試行錯誤していただけという風にも見えます。でも機能などの必要性だけからデザインを詰めて行く前の暖かさやユルさを感じる気がしますがいかがでしょう。

※機種名後のカッコ内数字は、写真の掲載されたMSXマガジンの号数です。'84/09なら'84年9月号。

MSX30周年記事第10回

ソニー『HB-55』(写真左、'84/09)
 最初のHitBit。入門機としての位置づけからかキーボードが通常のJIS配列ではなく50音配列になっています。内蔵ソフトとして住所録、スケジュール、メモなどが用意され、とにかく初めてコンピューターを触る人にカンタンさをアピールしたかったようです。デザインも、女性にも抵抗なく愛着を持って家庭に置いてもらえるように意識したのでしょう。イメージキャラは松田聖子でした。5万4800円。

三菱電機『ML-F120』(写真右、'84/09)
 Letus(レタス)の愛称を持つML-F120。6万4800円。これも家庭への導入を強く意識した機種です。家計簿、住所録、ファイル管理、成績管理、メモ帳、健康管理、ロボット操作ソフトが内蔵されていました。またMSX-BASICの他に簡易言語C-BOLを搭載しプログラムの入門機という位置づけでもありました。ちなみにこのロボット操作っていうのは第8回で紹介した『ML-ROBO』を操作するソフトだったりします。簡易言語C-BOLでも操作可能というところにロボット魂が燃える!

MSX30周年記事第10回

松下電器『CF2000』(写真左、'84/09)
 松下のMSXは、このCF2000からスタートしました。まだ当然Nationalブランド時代のものです。イメージキャラクター&愛称は「キングコング」でした。シルバー基調にブルーのカーソルキーがCool(という言葉はまだ流行っていませんでしたが)。キーが少しだけ大きくなっており初心者でも打ちやすくなっていました。左上端っこのNationalマークが懐かしいですね。5万4800円。ちなみにMSX第一号機と勘違いしている人が多い機種でもあります。

日立『MB-H1E』(写真右、'84/09)
 日立のH1シリーズは工藤夕貴がイメージキャラクター。このMSXにはキャリングハンドルが付いていて、カタログの表紙ではラジカセのように工藤夕貴が学生鞄と一緒に持っていました。H1は見た目が丈夫そうで心なしか夕貴ちゃんが重そうにしているようにも見えましたが、実際には1.6キロで今のノーパソ程度でした。しかし持ち運んだとして出先にテレビはあるのだろうか? 絶対やらないよねとか突っ込まれまくりでしたね。写真の機種は5万4800円。

MSX30周年記事第10回

パイオニア『PX-7』と『LD7000』('84/09)
 パイオニアはVHSビデオに代わる映像コンテンツ供給媒体としてレーザーディスク(LD)を推進していましたが、LDの使い道としては映画などの供給の他にもカラオケや大容量のランダムアクセスデータディスクとしての応用展開も行なっていました。グラフィックが大きな弱点だったMSXに対してもLDの大容量メディアとしての特徴を生かし、スーパーインポーズ機能とP-BASICを駆使してゲームへの応用を実現しました。たくさんのLDゲームが発売されましたが、LD画像を重ね合わせて自作ゲームも作ることができました。本体意匠の統一を図ったのが写真のPX-7(8万9800円)とLDプレーヤーのLD-7000(19万9800円)でした。メタルボディが宇宙刑事みたいでカッコイイ~。

MSX30周年記事第10回

松下電器『CF3300』(写真左、'86/12)
 NationalのMSX1規格でのフラッグシップ機。本体には特別な機能は無く、MSX-DOSが付属しているだけでした。ごくオーソドックスな仕様ではありますが部品が高品位で信頼性、耐久性が高いと評価されていました。14万8000円。周辺機器としては『CF-2601』というスーパーインポーズユニットが用意されていました。

ソニー『HB-701FD』(写真右、'86/12)
 同時期に登場したソニーのMSX1のフラッグシップ機。松下機に対してスーパーインポーズ機能を搭載しグラフィックソフトをROMで持っていうえにFDでも付属ソフトが付いていました。規格がMSX1であることを除けばほぼMSX2の高級機で搭載されていたオマケ機能に近いコンセプトのいわゆる「全部盛りMSX1」でした。14万8000円。しかし、市場に出回った台数はライバルのCF3300の方がずっと多かったらしいというところが今からみると少し不思議です。

■激安戦争編

 カシオが『PV-7』(2万9800円)でファミコンに勝負を挑んだ時、その存在を恐れたのは任天堂ではなく、むしろ既存のMSXメーカーでした。ここではカシオ機に対し各メーカーが対抗するために出した低価格路線のMSXをいくつか紹介しましょう。(一部、マイナー系に入れている機種もあります)
 

MSX30周年記事第10回

カシオ『PV-7』(写真左、'86/12)
 もともと価格の安いMSXに対し、さらに超低価格化の大波を浴びせかけたのがこのカシオPV-7です。2万9800円という価格はゲームしかできないコンピューターの購入に抵抗感のあった親世代に、「これならコンピューターの勉強にもなるかも」という免罪符を与えるのに十分な価格競争力を持っていました。おかげで「マリオのできないゲーム機」がプレゼントされるという悲劇が日本中で巻き起こったのでした。あと「RAMが8KBというのもキツかった」という意見多数。ちなみによく言われる「消しゴムキーボード」というのは間違い。それはMX-10以降での採用でした。イメージキャラクターは山田邦子とか。

カシオ『MX-10』(写真右、'86/12)
 カシオMX-10は、これ以上定価は下がらないと思っていたMSX参入他社にトドメの一撃を加えました。カシオがMSXの総販売台数を大幅にアップさせるのに貢献したことは言うまでもありませんが、しかし1万9800円という定価は「10台売ってもNECの98を一台売るより利益が出ない」と販売店からもボヤかれたそうです。ちなみにこっちこそが世に言う「消しゴムキーボード」です。

MSX30周年記事第10回

松下電器『FS-1300』(写真左、'86/01)
 CF1200、CF2700と続けて使われてきたモールドを流用し徹底的にコストダウンしつつもRAMを64KBに増やしてほぼフルスペックにしたMSX1。3万9800円。これがカシオに対する松下の回答でした。

ヤマハ『SX100』(写真右、'86/01)
 ヤマハの回答はこちら。YISシリーズの堅牢なケースは使わず、プラスチック主体でコンパクトに構成し、スロットは1個のみとしてRAMはゲームをプレイするのに十分な32KBとしました。3万6800円。しかし、専用拡張ボックス(2万6800円)を使えば3スロットに増強できるなど拡張性の確保にもぬかりはありませんでした。

MSX30周年記事第10回

松下電器『FS-A1』(写真左、'86/12)
 松下電器の革命機FS-A1は、高額の花だったMSX2を定価2万9800円として一気に身近にしてくれました。この衝撃はカシオ以上だったとの証言も当時数多く耳にしました。この機種から松下は国内ブランドをNationalから国際ブランドのPanasonicに一新。カシオの1万9800円機と共に年末の商戦に「MSXあり」の存在感を見せつけました。イメージキャラクターはアシュギーネ。小さなお子様は発音できませんでした。

ソニー『HB-F1』(写真右、'86/12)
 このとき実質売価2.5万円前後で発売された低価格MSX2は松下、ソニー、サンヨーの3社からでしたが、こちらはソニー。定価は3万2800円。HitBitノートと呼ばれるスケジュール管理ソフトや電卓、住所録などの実用ソフトがバンドルされていました。本体にはゲーム等の実行速度を遅くする「スピードコントロール」というスライドスイッチが搭載されていました。ムリゲーやるのに便利でしたね。

■マイナー系、高級系MSX

 続いて高級ゆえにあまり見かけることの無かったあこがれの機種とか、MマガやMファンであまり紹介されなかったために知られていない機種とかいってみましょう。
 

MSX30周年記事第10回

サンヨー『WAVY2』(写真左、'86/03)
 カシオのPV-7ニッキュッパの衝撃は全MSXメーカーに影響を与えました。そこまで安くするよりも実用性を損ねない範囲で可能な限り低価格にしたサンヨーの答えがこのシリーズでした。キーボードは実用に耐えるクオリティでありRAM64KBと十分に本格的なMSX1でした。松下、ソニーに比べデザインが少し大人っぽかったですね。3万9800円。

サンヨー『WAVY25FD』(写真右、'86/03)
 サンヨーの高級路線MSX2機。13万5000円。日本語ワープロと地図グラフィックが付属していました。同じデザインで『WAVY25F』(11万8000円)がありましたが、こちらはVRAMが64KBでディスクドライブが1DDでした。ということはMSX2用ゲームで動かないものがたくさんあるということなのです。アキバで超安売りしていたからといって、うかつに手を出すとMSX2というマークの付いたMSX1ゲーム専用機になってしまうという悲劇が待っていたのです。ガビーン。

MSX30周年記事第10回

日立『MB-H50』(写真左、'86/12)
 日立もカシオに触発されて格安系MSXを発売しました。一体型が多いMSXのなかで格安系にも関わらずセパレートタイプとなっている点に特徴があります。コンパクトにまとめることでコストダウンを図りました。価格はPV-7を下回る驚きの2万4800円でした。が、実際に「驚いたよ」という声は聞いたことがありませんでした。マイナー機種だからなあ…。

日立『MB-H70』(写真右、'86/12)
 日立のMSX2フラッグシップ機。漢字ROMとRAM128KBを搭載し、日立からも流通していた統合化ソフト『HALNOTE』を使うことでスモールビジネスに対応させるというコンセプトでした。13万8000円。これもあまり見かけないですね。

MSX30周年記事第10回

松下電器『FS5500』('86/03)
 デジタイズ機能、スーパーインポーズ機能を搭載しセパレート型キーボードにトラックボールが付いているのが特徴のNational渾身の高級MSX2。FDDが2基搭載された『FS5500F2』はなんと22万8000円もした(写真はFS5500F1で18万8000円)。ここまで高いとMSX選ぶ必要あるのかとか言っちゃダメ。付属のソフトで簡単なビデオ編集やテロップなども手軽に作れたことから一時はプロの現場にも導入されたこともあったようです。

MSX30周年記事第10回

松下電器『FS5000F2』と『FSVG501』('86/12)
 FS5500からトラックボールを取り、よりオーソドックスなデザインとした上でAVコントロール部分を後述の『FSVG501』に譲り、RAMを128KBとして当時の高級MSX2の標準機として位置付けました。15万8000円。一方でFSVG501はフレームメモリユニットと銘打たれ、リアルタイムにデジタイズ処理を可能としたMSX用周辺機器としてはかなり本格的なプロユースに耐えうる製品でした。その代り29万8000円と、おそらくもっとも高額な周辺機器だったのではないでしょうか。しかし本体より高い周辺機器は一般のMSXユーザーはほぼ買いませんでした。当時ソニーからはよりホームユースに導入し易い価格(6万4800円)のAVステーションユニット『HBI-F900』が出ており、簡単なタイトルやテロップの制作程度であればこれで十分でした。

MSX30周年記事第10回

サンヨー『PHC30』(写真左、'86/03)
 三洋電機特機(サンヨーのグループ会社)お得意のカセットデッキ内蔵MSXでRAM16KB。6万4800円。白いボディがカワイイけど微妙に固い雰囲気が残る。ROMカートリッジとカセットテープの「二刀流」が売りでした。RAMを64KBに増やした上位機種の『PHC30N』(6万9800円)もありました。これは黒地に白と赤地に白ボディのバージョンもあって少し家電寄りのデザインでした。このメーカーはMSX系雑誌ではほとんど記事や広告を見かけませんでした。

キヤノン『V30』(写真右、'86/03)
 キヤノンのフラッグシップMSX2。大人の女性を意識した白基調の上品なデザインでした。別売の本格ワープロソフト『V-WORD』(3万4800円)との組み合わせで、「SOHO」需要にまで応えようと試みました。13万8000円。

MSX30周年記事第10回

サンヨー『WAVY77』(写真左、'86/12)
 これも「持ち歩いていた」という話を聞いたことが無いのに、なぜか時々発売される「キャリングハンドル付きMSX」のひとつでした。漢字ROMにワープロソフト、そしてFDD1基とプリンターまで内蔵してしまったMSX2でしたがさすがに重そうです。家の中をあちこち持ち運ぶのに便利というイメージだったのでしょうか。使っていた人の意見を聞いてみたいです。13万8000円。

松下電器『FS4700』(写真右、'86/12)
 その松下版ともいえるのがこちら。VRAM128KB、RAM64KBでMSX2としては標準的。しかしプリンター部が重い。やっぱりキャリングハンドルがあると持ち運びし易いかもしれません。『FS4000』、『FS4500』、『FS4600F』という仲間がいました。13万8000円。

MSX30周年記事第10回

ビクター『HC-80 io』(写真左、'86/12)
 ビクターのMSX2普及機。8万4800円。「io(イオ)」シリーズのMSX2版。伝統的にスーパーインポーズ機能を付けてきたビクターでしたが、この機種はオーソドックスにプレーンなMSX2でした。ビクターは最初の頃、小泉今日子がイメージキャラでしたね。

ビクター『HC-95』(写真右、'86/12)
 ビクターの高級MSX2。アナログ画面取り込み機能やスーパーインポーズ機能を搭載しているAVパソコンですが、最大の特徴は6.14MHzのZ80互換CPU『HD-64180』を駆使した「ターボモード」を搭載していたことでしょうか。あとVHDコントロール拡張基板とか挿すことができました。RAMは当初64KBだったのですが、型番が同じままバージョンアップしていったようで、最終的には256KBまで増やしたものもありました。未確認ですがPanasonicのMSXturboR『A1GT』よりも長く売っていた(ビクター直販?)というウワサがあり、もしかしたら最後まで売っていたMSXはこれだという都市伝説もあります。この辺の詳細な調査は宿題にさせてください。19万8000円。

■番外編

MSX30周年記事第10回

アスキーソリューションズ『MSXPC』(MSX20周年記念で限定発売、撮り下ろし)
 実はこれ、MSXじゃありません。MSX20周年のころ、MSXPLAYerは正式にリリースされたもののMSX本体(1チップMSX)はまだ生産できる見込みがたっていませんでした。そんな時MSXっぽいデザインの一体型Windowsが存在することがわかり、我慢しきれずついカッとなってMSXPLAYerをプリインして出しちゃったんですね。右横にFDDを搭載していますので、あとはMSXゲームリーダーをUSBに繋げばディスクもROMゲームも全部OKで気分はもうMSXそのものでした。アスキーソリューションズ社とMSXアソシエーションの共同企画。一回限りの200台限定生産で9万8000円でした。



 あれ?僕の思い出のMSXが無かったよ!という方はツイッターでお知らせください。倉庫とかまたあちこち探してみます。機会がありましたら紹介しますのでお楽しみに。

 さて、MSX規格発表から30周年ということで週刊アスキー本誌で4回、週アスPLUSで10回にわたって連載してきた『スロット&スプライト』ですが一応今回が最終回となりました。みなさまの暑い、じゃなかった熱い声援があれば今度は10月のMSX第一号機発売30周年(笑)とか、MSXマガジン創刊30周年の日とかで、またお会いできるかもしれません。それからリクエストがたくさん届けばMSXのことばっかりいっぱい載っている本とかの発売もあるかもしれませんよ。ツイッターとかフェイスブックとかへのコメントをよろしくです。もちろん、普通のご意見ご感想などもお待ちしております。では、またそのうちどこかでお会いしましょう。僕たちのMSXは永遠に不滅なような気がします!(弱気)

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