本好き待望のお祭『東京国際ブックフェア』と、電子ブックに関する展示を集めた『国際電子出版EXPO』が今年も7月3日より東京ビッグサイトで開催された。初日には、KADOKAWAの角川歴彦会長による基調講演も行なわれ、図書館の電子書籍レンタル事業が話題になった(関連記事)。
昨年のように“新端末ラッシュ”はなかったものの、新機能を搭載したビューアーや、3DS向け電子ブックストアなど、新しいサービスが多数展示されていた。
BookLive!が発表した『BookLive!カメラ』もそのひとつ。スマホのカメラ機能を使い、名所や本を撮影することにより、関連書籍を表示したり、試し読みができるというもの。
↑浅草の雷門の写真にスマホをかざすと、浅草や雷門に関する書籍が表示され、クリックするとBookLive!で電子ブックを購入できる。展示はAndroid版のみだったが、iOS版も開発中とのこと。 |
↑書影を撮影すると、本の中身の一部を電子版で読める。書店での導入も検討しているとのこと。 |
■今年のキーワードは“音声読み上げ”
新端末の発表が一段落した今年、展示でよく見かけたのが『音声出力』。有名声優を起用したものから、自分の声を合成してくれるシステムまで、電子ブックの新たなサービスとして今後も続々と登場しそうだ。
なかでもユニークだったのが、NTTグループの展示。
『おともじん』は“しゃべるEPUB”として、合成音声付きのEPUB作成サービスを提供。自治体の広報誌などに利用されているとのこと。
一方、東芝では声優の山口勝平氏を起用した音声読み上げ機能を、自社の電子ブック端末『BookPlace MONO』や、専用アプリに追加。今後は、子供の声をはじめ、有名キャラクターや声優の声も用意していく。
モリサワでは『MCMagazine』の新機能として、音声合成機能を発表。Newsstandで購入した雑誌を、音声で聞くことができるようになる。
■3DSや4Kで電子ブックを堪能
展示されていたのは、電子書籍端末やタブレットだけではない。
東芝のブースでは、巨大な4Kテレビにコミックや雑誌を表示。大迫力の画面を堪能できた。
一方、DNP(大日本印刷)のブースで注目を集めていたのが、ニンテンドーの3DS向けの電子ブックサービス『honto for ニンテンドー3DS』。
子供向けの児童書や学習マンガなどの販売にくわえ、“すれちがい通信”の機能を使い、本の感想を交換し合える。アプリ自体は無料で、今秋より配信予定。スタート時は約350冊の児童書をそろえ、その後学習マンガなどを増やしていくとのこと。
■欲しい記事だけ読みたい! にこたえる
凸版印刷の『中吊りアプリ』は、スマホ内に表示された雑誌の“中吊り”をタップし、見出しごとに記事を購入できるシステム。記事を読んで、雑誌を1冊まるごと欲しくなったら、電子書籍ストアや、近くのリアル書店を案内してくれる。
↑さらに、スマホの位置情報システムや加速度センサー機能を使い、自分が今いる車両に同アプリのユーザーがいれば、そのツイッターも表示される点もユニークだ。
■BinBがバージョンアップ
Yahoo!ブックストアや集英社の『Manga Broadcast Station』にも導入されている、ブラウザーベースの電子ブックビューアー『BinB』。8月より順次、バージョンアップされていく。
↑左のiPadが従来バージョン、右が新バージョン。よりシンプルに使いやすくなっている。 |
↑ビューアー画面がシンプルになったぶん、そのほかのメニューや設定は別画面にまとめられている。 |
■電子ブックをより読みやすく
スマホで利用されることが多い電子ブック。より読みやすいコンテンツを追求し、電子ブックに特化した新しいフォントや、スマホ画面での表示方法なども展示されていた。
凸版印刷は、電子ブックでの閲覧に特化した日本語のオリジナル書体5種を発表。今秋より、順次追加していく。
↑明朝の旧書体と新書体の比較。各文字のバランスを調整し、これまで細かった部分を太くしている。 |
↑中央が、新しいゴシック体。横組みの長文でも、最大の読み心地を得られるようにデザインしている。 |
DNP(大日本印刷)が開発中の『読書アシスト』は、文章に合わせて、単語やセンテンスごとに改行し、文字を斜めにずらすことで、より読みやすくする。実験では、最大で20%読む速度が上がったという。
↑段落の始めを斜めにずらしていくことで、どこまで読んだのかがすぐわかるようにしているとのこと。 |
■これからは端末ごと買う時代!?
hontoで参考展示されていた『honto pocket』も、今年の注目コンテンツのひとつ。
『涼宮ハルヒ』や『ケロロ軍曹』など、シリーズ全巻をプリインストールした専用端末ごと販売するというもの。
参考展示として、コミックやライトノベル小説のほか、夏目漱石や太宰治など日本の作家を集めた『文豪』も展示されていた。
『honto pocket』の専用端末は、ドイツで昨年発表された『txtr Beagle』をベースに、honto仕様にカスタマイズしたもの。WiFi非搭載だが、hontoで購入した本はブルートゥース経由でスマホから転送できる。単4電池2本で、約1年使用可(1日30分読書した場合)。残念ながら、端末単体での発売は予定していないとのこと。
■まだ間に合う! ブックフェアの見どころ
そのほか、デジタルから紙の本まで、個人的に気になったブックフェアの出展をご紹介。
↑ダイワテックスでは、商品券2万円ぶんが当たるイベントを開催。シュリンク(袋詰め)の機械と競争し、勝てば2万円をゲットできる。
↑青幻舎のブースでは、中身の見える本の『福袋』を販売。“花”や“色”など、テーマ別の本が複数冊入って、お買い得!
↑児童書の出版社が一堂に会した『こどもアイランド』。人気の絵本や児童書がすべて2割引き!
↑ARの展示も目立った。こちらは、DNPの“デジタルえほんミュージアム”の『AR魔法の絵本』。ARマーカーをカメラにかざすと、画面にキャラクターが登場する。
↑KADOKAWAブースの『BOOK☆WALKER』デモ。ブース内では『涼宮ハルヒの驚愕 海外版』(中国・台湾・韓国)なども販売中。
↑凸版印刷のブースで発見。母型(活字の字面を作るための鋳型)を作成する彫刻機。
↑セガのブースに展示されていた子供向けのゲーム。クイズで遊ぶと、最後にミニ図鑑のおまけがもらえる。『ずかんのたまご』、11月稼働予定、1回200円。
各出版社ブースでは恒例の2割引き販売を実施。バーゲンブックのコーナーもあり、欲しかった高価な本を手に入れるチャンス。『東京国際ブックフェア』は7月6日(土)まで開催されているので、気になる人はぜひ足を運んでみよう。
※同時開催の『国際電子出版EXPO』などは5日まで。
●関連サイト
『東京国際ブックフェア』
『国際電子出版EXPO』
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