今週のテーマは、6月前半に見たい新作・注目作品編。「闇金ウシジマくん」「グッモーエビアン!」「フランケンウィニー」「カルロス 第1部 野望編」「クロッシング・デイ」の5作品を紹介します。
闇金ウシジマくん |
北野武監督の「アウトレイジ」のキャッチコピーが「全員悪役」とすれば、この映画は「全員屑」とも言うべき、徹底した役柄がすばらしい! 先週も書いたけど、ドキドキするのが大日本印刷からの電話くらいなもので、掛け値なしの非現実感が堪能できました。
冒頭くらいネタバレしてもいいと思うのだが、IT業界の成金パーティーが幕開け。イベント資金を集めているスタッフに、成金が賭けを提案する。ドンペリを1分で空ければ1000万円の資金提供+会場の女性全員に1万円プレゼント。負ければイベント用の女性を100人紹介という、ダメダメ思考の賭けを仕掛ける。結果は見事飲み干すのだが、2滴残っているから100万円に減額と難癖つけるのだ。ここで成金に借金取りのウシジマくんが登場する。
コンセントに差してある電源ケーブルの片方を成金の鼻に、もう一方を目玉に突っ込む脅しで、「成金ざまぁ」とビールがうまいのはここまで。弱者をいたぶる強者はさらに上から、そいつもさらに強者から、その強者も……とどのくらい続くかというと、最後までこの調子。勝者なしで、全身行方知れずか不随というキレキレのストーリーに、「盛者必衰の……」と祇園精舎を反芻した次第です。
ウシジマくんのためだけにスピリッツを読んでいるファンなので、原作との違いが気になるところだが、これがカットほぼそのまま再現、台詞も忠実なのがうれしいところ。原作でも人気の「ギャル汚くん」と「出会いカフェくん」を主軸に、他編のしんどいところを全部突っ込んでいるので、ファンはニヤリだし、知らない人も怒涛の展開に「どうすんだコレ」となるでしょう。この全部盛りは、ゲームでいうところのスパロボ大戦ですな。
カットが細かくて、漫画のコマ割りのようなスピード感ある展開も好印象。邦画の長回しが苦手なハリウッド大作育ちな人にも楽しめます。原作ファンには、コマ間の出来事が描かれているのも見所のひとつ。苦労に苦労して開催したイベントがどういう催しかは、映画で初めて分かるというサービスっぷりだ。テレビの深夜ドラマ版を観た人にだけのニヤリ場面もある。
撮影で興味深かったのは、渋谷が舞台なのにもかかわらず、真っ昼間のセンター街や公園通りでの大規模ロケが行なわれているところ。「太陽を盗んだ男」の当時の渋谷ロケが思い出に残るように、2012年の渋谷が記録されるのも渋谷育ちにはうれしい。
ちなみにPG12作品なのでグロいシーンは画面が暗くなるのだが、それが多々あって、そのたびに画面に自分の顔が映るほうがグロいのでは? とそこだけが惜しく思いました(三宅)
「闇金ウシジマくん」をiTunesで見る
(HD版レンタル:500円、SD版レンタル:400円)
グッモーエビアン! |
全国の大泉ファンのみなさん、「水曜どうでしょう祭 UNITE 2013(外部サイト)」楽しみですね〜。行きますか? 私もチケットさえ買えれば、週アスのどうでしょうファン軍団で遊びに行こうと計画してるんですよ。
旦那が大の「水曜どうでしょう」好きで、鍛えられているうちにいつしか大泉洋ファンになってしまった私。今では、自宅のBDレコーダーのキーワードに大泉洋ほかTEAM NACSメンバーの名前を仕掛けています。ドラマやバラエティーは大体もれなく観ますが、映画は全部は観きれてないんですよね。
で、新作一覧の中にコレがあったので選びました。ストーリーはまぁ素直な感じ。途中まで観れば、終わり方が予想できますが、わかっていてもなお、あたたかい気持ちで気持ちよく観られます。
主人公のヤグは、最近の大泉が演じる役柄とはずいぶん違うので、好き嫌いはあるでしょうけど、新鮮ですね。17歳で娘を産んだシングルマザーのアキを演じた麻生久美子はあまりよく知らなかったのですが、これを観て好きになりました。聞き慣れない名古屋弁のおかげで、バカっぽい2人の会話もいい雰囲気です。15歳の娘・ハツキを演じた三吉彩花(当時15歳)もすごくかわいいです。15歳くらいのときの青い危うい感じを思い出しました。
コメディー要素の入ったバタバタものって、やり過ぎなのが多くて苦手なんですが、大泉ファンだからかどうかわかりませんが、すんなり受け入れられました。気楽に観はじめてケラケラ笑っていると、最後はホロリとさせられますよ(山口)
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(HD版レンタル:500円、SD版レンタル:400円)
フランケンウィニー |
本作は、ティム・バートン監督が手がけた最新アニメ作品。「シザーハンズ」や「17歳のカルテ」などで有名なウィノナ・ライダーが主人公のクラスメート、エルザ役の声優を務めています。
ヴィクターは、科学が大好きで愛犬のスパーキーを大切にする心優しい少年。ところがある日、スパーキーが不慮の事故で死んでしまいます。悲しみのあまり、危険な科学の力を利用してスパーキーを生き返らせることに成功したヴィクター。つぎはぎだらけのフランケンシュタインのようなスパーキーでも、うれしさのあまり家族にも内緒にしてかわいがっていましたが、それを知ったクラスメートがよからぬことを思いつき……。というストーリーです。
つぎはぎのスパーキーや科学の先生、よからぬことをたくらむクラスメートや彼らが蘇らせた動物たちは、モノクロのカラーも合わさって不気味そのもの。鋭い目線や牙など、小さな子供さんなどが見ると驚いてしまうかもしれません。
もちろん、ティム・バートンの描くホラーの世界が大好きな大人たちにとっては、各キャラクターのいい意味での気味悪さにニヤニヤしてしまうこと間違いなしです。屋根裏部屋やお墓など、ファンタジーが好きな人にはたまらないセットも楽しみのひとつです。
そんなティム・バートンの作品の中でも、本作のよさは家族愛、友情、子供にとっての生死など、心あたたまるテーマがたっぷり描かれていること。本当に心の優しいヴィクターだからこそ、スパーキーは蘇り、最後まで彼を助け、最後には街中のみんながヴィクターの味方になったのでしょう。おなじみの世界観とストーリーのどちらも楽しめる良作です(藤村)。
「フランケンウィニー(字幕版)」をiTunesで見る
(HD版レンタル:500円、SD版レンタル:400円)
「フランケンウィニー(日本語吹替版)」をiTunesで見る
(HD版レンタル:500円、SD版レンタル:400円)
カルロス 第1部 野望編 |
こういう映画を見て、面白かったとか感動したとかという感想は一切ないですよね。内容はタイトルのとおりで、カルロスことイリイチ・ラミレス・サンチェスの半生を史実を基に描いた作品です。通称は、カルロス・ザ・ジャッカルと言われているそうで、「ジャッカル」というのは、フレデリック・フォーサイスの小説「ジャッカルの日」から取っているそうです。カルロスについて詳しくない人は、この作品を見る前にGoogleでバックグラウンドを調べましょう。
映画は三部作となっており全部見ると5時間近い超大作ですが、今回は第1部を見ました。「野望編」となっているだけあり、とにかく前にしか進みません。作品の内容はフィクションなので史実とは若干異なりますが、日本赤軍の大使館占拠事件などの出来事も描写されています。全体的にシーンがめまぐるしく移り変わるという印象ですが、これは裏を返すと「殺人者には良心の呵責はない」ということなんでしょうか。演出上、内面的な描写は不要なのかもしれません。
見終えたあとに印象に残ったのは「カネと武器と女」。カルロスは、自分に従わないものは議論や説得などの手段を採らずに殺してしまいますが、幼いころからひとつの考え方を植え付けられると、こうなってしまうものなんでしょうか。
平和な日本にいるとテロ行為自体が無意味に思えますが、当事者は大義を背負って実行しているのだと思うと、教育ってすごく大事だと思います。歴史的な経緯、政治的な経緯を偏った思想で塗り潰されてしまうと、人としてバランス悪くなっちゃいますね。過去の悲惨な出来事を学ぶことは大事ですが、それで国家や個人を恨んでも何も生まれないと思うんですけどね。
こういう映画は映画館で観るのは適さないと思いますし、わざわざDVDを借りて見るというのも稀でしょう。iTunes Storeのようなオンラインでいつでもどこでも映画が観られるという環境がないと、観る機会がない作品かもしれません(吉田)。
「カルロス 第1部 野望篇(字幕版)」をiTunesで見る
(HD版レンタル:500円、SD版レンタル:400円)
「カルロス 第2部 栄光篇(字幕版)」をiTunesで見る
(HD版レンタル:500円、SD版レンタル:400円)
「カルロス 第3部 完結篇(字幕版)」をiTunesで見る
(HD版レンタル:500円、SD版レンタル:400円)
クロッシング・デイ |
この作品には「駄作の予感」フラグが2つも立っていた。ひとつは、「事実に基づく物語」であると謳っている展。映画好きの間では、この謳い文句の付いた作品は過半が駄作というのはもはや常識だ(多分)。そしてもうひとつはタイトル。「クロッシング・デイ」いう邦題は、原題の「What Doesn't Kill You」とまったく無関係に見える。
ではなぜこんな邦題になったか。本作の主演の一人であるイーサン・ホークが出ている「トレーニング デイ」という過去作を連想させるためだと思われる。イーサン・ホークとデンゼル・ワシントンの共演作で、地味にいい作品だったが、いかんせん地味すぎた。しかも2001年の作品。その引用がピンとくる人なんて、0.1%ぐらいじゃないだろうか。そう考えると、自分は1000人に1人レベルののモノ好きということか。複雑な心境だ。
しかし、いい意味でそのフラグは2本とも折られた。結構面白かったのだ。ただし、「トレーニング デイ」の何倍も地味。寒い気候の貧しい街を、ドキュメンタリーっぽいタッチで描いているから、画面が恐ろしく地味。iTunes Storeでのカテゴリーはアクション/アドベンチャーだが、その種のドキドキ・ワクワクを求めている人は途中で飽きるかも。とにかく、冒頭とラスト以外は淡々とストーリーが展開するのだ。
じゃあ何がよかったのか。主演のイーサン・ホークとマーク・ラファロの演技、これに尽きる。悪役は過去にも演じているホークだが、この映画で演じるギャングの雰囲気はまさに鬼気迫る。そのさらに上を行くのが、ラファロの「家族を愛する父」と「恐ろしいギャング」の演じ分け方は、まさに神懸かっている。すげーよこの人。見た目にそんなに華があるタイプではないため、これまではよき脇役といったポジションで目立っていたが、本作の演技はまさに主演男優賞に値する。そしてそれは、ホークとのいわゆる「化学反応」によるものなのだよね。
万人向けではないが、役者の演技のうまさだでご飯が何杯でもいけるような変態の人には、ぜひとも見て欲しい1本。ジワジワ、ヒリヒリくるぜ〜。
「クロッシング・デイ(字幕版)」をiTunesで見る
(HDレンタル:500円、SD版レンタル:400円)
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