サムスンは、Windows Phone 7の最初期から端末を投入してきたメーカーです。Windows Phone 8では、フラッグシップ端末『ATIV S』や、米Verizon向けの『ATIV Odyssey』をリリースしています。
↑サムスンのWindows Phone 8端末『ATIV S』。 |
しかしWindows Phone 8を主力とするノキアや、AndroidとWindows Phoneの2本立て戦略を明確にしているHTCに比べると、サムスンのWindows Phoneは地味な存在と言えます。
今後、サムスンのWindows Phoneはどうなるのでしょうか。最新のGALAXY S4との比較も交えて考えてみたいと思います。
■Windows Phone 8におけるATIV Sの位置付けとは
これまでサムスンのWindows Phoneは、AT&T向けの『Focus』シリーズや、グローバル向けの『Omnia』シリーズがありました。特にFocusシリーズは、Androidのベストセラー端末であるGALAXY Sシリーズをベースとして作られてきました。
たとえば初代の『Samsung Focus』はGALAXY Sを、Windows Phone 7.5端末の『Samsung Focus S』にはGALAXY S IIの設計が色濃く反映されており、基本的な設計を流用していることがわかります。
↑Samsung Focus(左)とSamsung Focus S(右)。 |
この流れを受けてATIV Sは、GALAXY S IIIをベースにした端末となっています。ATIV Sの4.8インチ・Super AMOLED HDディスプレーは、GALAXY S IIIと同じスペックとなっています。
ただ、ATIV SはGALAXY S IIIよりもやや角張った印象があります。GALAXY Note IIに近いデザインと言えます。そしてこの傾向は、GALAXY S4にも受け継がれています。
↑左からGALAXY S IIIα(SC-03E)、ATIV S、GALAXY S4。 |
GALAXY Sシリーズがフラッグシップという位置付けであるのと同様、ATIV SもWindows Phone 8端末として、他社のハイエンドモデルに並ぶ機能を搭載しています。HD解像度はもちろん、マイクロSDやNFCといったWindows Phone 8ならではの新機能に対応しています。
ATIV Sの優位性は、このように多機能なハイエンド機であるにも関わらず、GALAXY S III譲りの薄型軽量なサイズに仕上がっている点にあります。厚さは8.7ミリ・重さ135グラムしかありません。さらにバッテリーは大容量の2600mAhを搭載しています。
ライバルであるHTC 8Xが厚さ10.12ミリ・重さ130グラム、Lumia 920が厚さ10.7ミリ・重さ185グラムであることと比較しても、ATIV Sがいかに優れているかがわかります。HTC 8Xは130グラムと軽いのですが、バッテリー容量は1800mAhにとどまっているのです。
↑左からHTC 8X、ATIV S、Lumia 920。 |
さらに、ライバル機より大幅に薄いにも関わらず、裏蓋を外すことができるのも特徴です。マイクロSDやバッテリーの交換ができるようになっており、この点もHTC 8XやLumia 920に対する優位性と言えます。
↑GALAXY Sシリーズ同様、バッテリー交換が可能。 |
ATIV Sにはカラーバリエーションがなく、カラフルな端末を揃えるノキアやHTCに比べるとどうしても地味な印象を受けますが、非常にバランスのよいWindows Phone 8端末でもあるのです。
■GALAXY S4から次世代Windows Phoneを予測する
サムスンがGALAXY Sシリーズをベースに新しいWindows Phone端末を開発しているとすると、最新のGALAXY S4をベースとしたWindows Phoneにも期待できると言えます。
GALAXY S4の特徴は、5インチ・フルHD解像度に向上したSuper AMOLEDディスプレーです。Androidのハイエンド端末はどれもフルHDの画面解像度を採用することがトレンドとなっており、そろそろWindows PhoneにもフルHDを期待したいところです。
しかし現在のWindows Phone OSは、1280×768ドット、1280×720ドット、800×480ドットの3種類の解像度にしか対応しておらず、このままではフルHD対応のWindows Phoneを作ることはできません。
そのため、今後いずれかのタイミングで、Windows Phone OSやアプリ開発用のSDKがフルHD解像度に対応するものと思われます。Windows Phone 8において16:9のアスペクト比である1280×720ドットに対応していることから、アプリ側の対応は比較的容易といってよいでしょう。
もうひとつ気になるのは、マルチコアCPUへの対応です。Windows Phone OSは、技術的にはクアッドコアにもオクタコアにも、それ以上のコア数にも対応できるものと説明されています。
しかし現実的に、Windows Phone端末の開発にはプロセッサーメーカーとの密接な連携が不可欠となっており、どのようなプロセッサーにも対応できる状況ではありません。これまでのWindows Phone 8端末は、すべてクアルコム製のデュアルコアプロセッサーを搭載してきました。
そこで、まずはWindows Phone OSの次のアップデートによって、クアルコム製のクアッドコアプロセッサーに対応できるかどうかに注目したいところです。
↑GALAXY S4ベースのWindows Phone端末は出る? |
もちろんスマートフォンにとって重要なのはプロセッサーのコア数ではなく、実際の使用感はどうか、ユーザーの用途に沿っているかどうかといった観点です。また、発熱やバッテリー駆動時間との兼ね合いも重要です。しかし現実的には、Androidスマートフォンの技術トレンドにある程度追随することで、端末開発がやりやすくなるのも事実です。
■Windows PCブランドはATIVに統一
ところでATIV Sが冠する“ATIVブランド”は、2012年9月にドイツのベルリンで開催されたサムスンのイベントで、Windowsプラットフォームのスマートフォン・タブレット端末向けに発表されたものです。
そして2013年4月25日、サムスンはATIVブランドをさらに多くのWindowsデバイスに展開することを発表しました。
たとえば脱着型タブレットのATIV Smart PCシリーズは『ATIV Tab 7』と『ATIV Tab 5』に名称を変更。ウルトラブックのSamsung Series 9は『ATIV Book 9』に、Series 7 Chronosは『ATIV Book 8』になるなど、ATIVブランドへの統合が行なわれました。
↑ATIVブランドで展開。 |
この発表ではAndroidベースのスマートフォンとの連携について言及されているものの、ATIVブランドのWindows Phone端末についての情報はありません。しかしWindows 8のPC製品をATIVブランドで統一したことにより、Windows Phone 8にも自然と注目が集まるはずです。サムスンのWindows Phone市場における次の一手に注目したいところです。
Samsung ATIV S
メーカー:サムスン
製品公式サイト
海外端末通販ショップ(Expansys)
山口健太さんのオフィシャルサイト
ななふぉ
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