ボカロから“歌ってみた”、ゲンロン系までさまざまな展示・ステージがあったニコニコ超会議2。ここでは技術系展示にスポットをあててレポート。
●さまざまなボカロ立体投影系
ホール7に位置する“超ボーカロイドエリア”のボカロ展示。ディラッドボードと思われる大型スクリーンに、下方のディスプレーの映像を反射投影するシステム。このエリアのご本尊のような存在で、道行く人が吸い寄せられるようにやってきては動画や写真を撮りまくっていた。スクリーンが大きなこともあって、ボカロが本当にその場にいる、みたいな雰囲気。
この方式だと、背面投影ではないため、比較的コンパクトで、さらにスクリーンの延長線上の天井や壁面に“もう一人”が投影されることもない。
下の写真はその脇に設置されていた簡易システムだ。ちょっとわかりにくいが、ピラミッド状の反射面(スクリーン)に、前後左右の絵を反射投影する。さらにポイントは、映像の出力装置がタブレットであること。つまり、非常に小型なことに加え、このシステムだけで6時間程度は電源不要の自立駆動ができることになる。電源がとれない場所での展示にも使えるわけだ。
タブレットを使う投影システム |
↑上面のフタ部分にタブレットがあり、前後左右の映像をピラミッドの4面に投影する。 |
そしてタブレットよりもさらにコンパクトな究極的システムも発見。“あぴミク”展示スペースの投影システム(参考展示)はスマートフォンベース。スクリーンが小型になっただけじゃなく、前述のピラミッド方式にはない、手前にボカロ・奥に背景という“奥行き”を表現できるのがポイント。より立体的に見える。
スタッフによるとZ字型の特殊な反射方式で実現しているそうだが、自室に置いて使ったりするならこのサイズは結構いいかも。
『あぴミク』のスマホを使った小型投影システム |
↑周囲の黒い部分は照明の反射を防ぐ日除け。白い部分がミラーを複数組み合わせたボックスになっていて、写真ではボックスの奥側にiPhoneを設置して立体像を見る仕組みになっていた。 |
↑写真ではわかりにくいが、手前のミクさんと奥の背景は、物理的に2枚の映像をミラースクリーンの反射を巧みにつかって重ね合わせてある。物理的に奥行きがあるので、視聴感は上のiPad方式とも全然違って小さなステージがあるような立体感。 |
立体投影系の次はAR。超ニコニコ未来開発ブースでは、“ミニnicofarre”と名付けられたニコファーレのAR技術体験展示があった。スクリーン投影された初音ミクさんを手持ちのカメラで撮影するもの。実物のカメラで撮ると、上の液晶画面でそのカメラアングルを再現したCGをリアルタイムにレンダリング合成する。
カメラの空間的位置は、カメラ上部の3つの突起を使って赤外線で検出。不思議だったのは、カメラで実物のスクリーンを撮影しているのに、液晶画面上には合成されたCGミクさんしか映っていないこと。本当ならスクリーン上のミクさんも映って二重像になってしまうはず。仕組みを聞くと、偏光スクリーンを使って投影しているため、ビデオカメラには光学的(!)に写らないんだとか。な、なるほど……。
●2万円で3Dデータを立体化できる!『フルカラー3Dプリント』が凄い
世界初!? 約900万円のフルカラー痛3Dプリンター |
↑よーく見ると、この巨大フルカラー3Dプリンターがミクさん風に痛化されている。898マンエンなんですけど。中古のフェラーリ512TRとか360モデナくらいなら買えちゃう金額なんですけど。 |
クリス・アンダーソン氏の著作『Makers』のおかげで、昨年以降のモノづくり業界は空前の3Dプリンターブーム。ホリエモンこと堀江貴文氏も、発売中の週刊アスキー(関連リンク)の独占インタビューで「3Dプリンターはロケット開発にも役立つ」と語っていたほど。その親玉というかラスボスのような機種が有限会社コスモ・ファンシーさんが持ち込んでいたコレ。あとから型番を調べてみると、ZPrinter社の『Z650』というものらしく、価格898万円ナリ。横幅は1880ミリ=約1.8m。
このプリンターで出力すると、こんなものが全自動でつくれてしまう。
↑細かな塗り分けまで、すべて3Dプリンター任せ。このレベルの塗りを3Dデータ上でつくっておけば、ちゃんと再現されるということだ。 |
↑上のドラゴンがマット系の質感だったのに対して、REDALiCEはグロス。グロス仕上げも標準メニューで選べるとのこと。質感は、グロス仕上げの場合は陶器っぽい仕上がり。マット仕上げの場合は素焼きっぽい風合いになる。 |
ドラゴンと女の子(REDALiCEという名前だそう)は、どちらもプリンターで出力したほぼそのまま。表面の光沢処理の有無は違うものの、どちらも正規プランで納品する場合と同じ行程でつくられたもので、特殊な後処理や追加塗装は加えていないとか。凄い。
3D出力にかかる時間を聞いたところ、フルカラーでキャラクターを出力するだけなら、このサイズでも1日程度しかかからないとのこと。ちなみに素材は樹脂ではなく石膏で、フルカラー出力ではこの方式が基本という。実際に納品する際には、多少の手直し(おそらくバリとりなどと思われる)をすることになるが、それでも空いているときなら1週間かからずに納品できるそうだ。ちなみに高さ20センチ程度の結構大きめのフィギュアだが、プリントコストは2万2000円(標準プラン価格)と結構安い。
ちなみに目下の3Dプリントの課題は「3Dプリンター向け品質の3Dデータをつくれる人がまだ少ないこと」だそうで、自作フィギュアの3Dスキャンサービスも並行して行っているとのこと。自分でつくったフィギュアを3Dスキャンでデータ化・複製できるわけだ。
Z650の脇にはMakerBot社の超有名3Dプリンターが。こちらは直販価格で2199ドル(=円換算で22万円くらい)。安くはないけれど手は届く価格。樹脂系素材での出力のため着色は手作業。
●スクリーンで見ると弾幕が見える!? 不思議なプロジェクター
神奈川工科大学 ShiraiLabさんの展示。スクリーン投影された映像を、偏光スクリーンでのぞくと、おなじみの弾幕が浮かび上がる。3D表示の応用で、1枚の画面で複数の映像を見せられるパネルというのはあるが、これはスクリーンだからちょっと勝手が違う。どんな仕組みなのか?
聞いてみると、2台のプロジェクターを使ってGPU演算で文字の重なる部分のRGB色を間引いて表示すると、こういうことができるらしい(正確にはもっと難しいことをしているそうですが)。
たとえば、白地に見えている部分は実は真っ白に表示しているのではなくて、2台の投影像が合成されてはじめて白(RGBが飽和している状態)になるように計算していると。光の三原色ってやつである。ほほぅ〜。
↑スクリーンを通して見たところ。水色の文字等の弾幕が見える。裸眼だと、スクリーン上に微妙にうっすら何かが見える、という程度。 |
この技術が進化すると、たとえば映画館で追加料金を払った人にだけ眼鏡を配って3D視聴ができる、といったことができるようになる。いまみたいに2Dと3Dとで上映スクリーンを分けなくて済むわけだ。
●神アルゴリズムに自分で挑む“セルフ電王戦”
超将棋ブースでは、電王戦を戦った数々のアルゴリズムのマシンと対局できるブースが用意されていた。電王戦は週アスPLUSでもアクセスランキング上位の人気記事(関連リンク)だが、ここでも積極的な対局が行われていた。ニコニコ超会議2だからというのもあるが、対局している人は高校生や大学生も多かった。
●PCやスマホ以外でニコニコ動画を見る
一番身近な技術系、ということで最後にPCやスマホ以外で見るニコニコ動画展示を紹介。実はワタクシ、ブラビアやビエラでニコニコ視聴するのはほぼ初めて。メニュー操作などの実演をしてくれたが、結構深いところまで移植されてるんだなーと感心した。
ニコニコ動画のシステムアップデートでテレビが対応できなくなったりしないの?という疑問をスタッフの人にぶつけてみると、「家電メーカー提供の仕様にそってドワンゴ側で開発しているので、ニコニコ動画がアップデートされたらテレビアプリもそれに合わせてアップデートされる」とのこと。なるほど! テレビの脇ではPS Vita版やWii版のニコニコ動画アプリのデモもあったが、アプリ提供の仕組みはテレビもPS Vitaも同じような体制だったとは。
そんなわけで色々な技術に感心したニコニコ超会議2展示。モノづくり系ステージのあったニコニコ学会βシンポジウムに敬意を表して、最後にニコニコ学会βTシャツをお買い上げ!
↑やっぱりニーソは基本だよね、なんつって。 |
●関連リンク
ニコニコ超会議2公式サイト
有限会社コスモ・ファンシー
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