こんにちは。気がついたらグラボ系ライターになっていた加藤です。ハイエンドグラボが欲しくなるゲームといえば、サーバー問題のゴタゴタも落ち着きやっと遊べるようになってきた『シムシティ』ですが、今回はストレス解消にもってこいの最新FPS『クライシス3』の話題です。
シムシティと同時に発売されたクライシス3のウリは超絶な描き込みのグラフィック。『バトルフィールド3』あたりでもう打ち止めだろうと思っていたグラフィック表現が、最新のDirectX11世代の描画エンジン“CryEngine 3”でさらにパワーアップ。ゲームのストーリー自体がSF色バリバリの世界観とあって、リアルかつ幻想的なグラフィックに仕上がっています。
『クライシス3』
●エレクトロニック・アーツ(関連サイト)
Originダウンロード販売 5460円(デラックス版)
前作も結構なものでしたが、今回はNPCのヒゲの剃り残し具合とか、シワの1本までしっかり確認できます(登場人物はほぼ筋肉ダルマばかりなのが残念です)。それだけに描画は重く、ミドルクラスでも高めのグラボが必要な感じです。
ソロプレイ用シナリオ1面から、いきなりグラフィックのスゴさが垣間見られます。最高画質にすると仲間のサイコさんの顔に注目。特に無精ヒゲの表現とか、ゲームとは思えない表現です。
草ぼうぼうの荒野ふうに見えますが、これは前作『クライシス2』で散々暴れ回ったニューヨークの成れの果て。この描き込みをフルに味わうために良いグラボが欲しくなりますね!
●クライシス3はRADEONに最適化されている?
ここからが本題ですが、クライシス3はグラボ好きにとって非常に注目すべき点があります。それは“アバンタイトル(ゲーム開始前の映像)に入っていたNVIDIAのロゴが消え、AMDのロゴに変わっている”こと。今年、AMDは1年間新アーキテクチャーのGPUを出さないかわりに、ゲームデベロッパーとの関係強化とドライバーのチューニングでライバルに対抗していく戦略をとる、というコメントも出ています。クライシス3のアバンタイトルのロゴが変わったのも、この影響といってよいでしょう。
『クライシス2』まではゲーム起動直後にNVIDIAロゴが出ていましたが、クライシス3からはAMDのロゴに差し替られています。“Crytekとのパートナーシップを通じて、クライシス3の超絶グラフィックをRADEONに最適化したよ!”というAMDの偉い人のメッセージを受け取った以上、これはベンチでしっかり検証しておかねばなりません。
●GeForceと真っ向勝負!
今回はRADEON対GeForceということで、以下のグラボを調達してきました。HD7970がコアクロック1070MHzの超OC版なのに対し、GTX680はリファレンス版というのは反則のように見えますが、『R7970 Lightning』の実売価格はだいたい4万5000円~5万円なのに対し、リファレンス仕様のGTX680もほぼ同じ価格帯です。もちろん、公平(?)を期すためにNVIDIAの反則級ハイエンド『GTX TITAN』も調達しました。各グラボにどのような差がつくか見モノです。
『R7970 Lightning BE』
●MSIコンピューター(関連サイト)
※ベンチ環境
CPU:Core i5-3570K(3.4GHz)、マザーボード:ASUSTeK P8Z77M-PRO(Z77)、メモリー:Patriot PSD38G1600KH(PC12800 DDR3 SDRAM 4GB×4)、SSD:Intel SSDSC2CT240A4K5(240GB)、電源ユニット:Owltech AU-850PRO(850W、80PLUS GOLD)、OS:Windows8 Pro(64ビット)、ドライバー:Catalyst 13.3 beta2、GeForce 314.21(beta)。
●まずは3DMarkでようす見
いきなりゲーム性能を見る前に『3DMark』だとどんな性能差になるのか見ておきましょう。AMDは3DMarkへの最適化にも力を入れているので、HD7970のスコアーがどの程度伸びるかに注目です。
GTX680に大差をつけ、GTX TITANには勝てないまでもかなり良いところまで詰め寄っています。13万円のモンスターに半額以下のHD7970でもOCとドライバーの最適化でここまで迫れる、という点には驚きを隠せません。
●『クライシス3』でも凄かった!
ではクライシス3での検証に入ります。ゲーム中の画質設定はテクスチャー解像度を“高”、画質“最高”に設定し、アンチエイリアスはやや低めの“SMAA 2TX”に統一しました。いちばん負荷の高い“MSAA8X”だと、HD7970もGTX680も最低フレームレートが10~20fpsに落ち込みマトモに動けなくなるためです。 また、GTX680についてはNVIDIA独自のアンチエイリアス技術“TXAA 2TX2”設定時のデータも加えてみました。
クライシス3のアンチエイリアス設定はFXAA<SMAA<TXAA<MSAAの順で重くなるようです。検証はステージ2のオープンフィールドふうのマップ上で、『Fraps』を使い2分間動き回ったときのフレームレートを比較します。
なるほど、GTX680に対してはHD7970はしっかり優位に立っています。OCという下駄を履いているものの、1年前は「HD7970に完全勝利! やっぱり『GeForce GTX680』はすごかった!(関連記事)」状態だったことを考えれば、AMDさんはかなり頑張っているといえるでしょう。GTX TITANの凄さの前にはHD7970も完全屈服ですが、実売13万円の激レアグラボであることを考えると、まあ仕方ないよねという印象です。ただ、今回GTX TITANでも最低フレームレートが30あたりで打ち止めになっています。オブジェクトがやたら多そうなシーンでテストしたためかもしれませんが、今回のテスト環境だけではこの謎は解けない印象です(メモリー帯域の太いLGA2011環境で検証したいですね)。
もうひとつ意外だったのがTXAAのパフォーマンスの悪さでした。MSAAより速くて美しいのがウリの技術ですが、クライシス3でのTXAAは画質が“眠くなる”(シャープさに欠ける)という副作用がありました。もちろん最適化が不足しているのが原因の可能性もあります。
これがクライシス3では最重量の“MSAA8X”設定。MSAAは負荷のわりにはチラツキやすいことから、後発のFXAAやSMAAにとって代わられる可能性が高そうです。
今回テストで使った“SMAA 2TX”設定。軽いわりにジャギー感も少なく、シングルGPUで遊ぶには最適な設定と感じました。
Kepler世代のGeForceでのみ使えるNVIDIA独自の“TXAA 2TX2”。エッジが眠くなるうえにSMAAよりも負荷が高くクライシス3ではとても残念な設定であることがわかりました。
最後に一応消費電力も確認しておきましょう。計測は『Watts UP? PRO』を使い、前述のベンチ開始地点での消費電力を計測しました。また、システム起動10分後の値もアイドル時として計測します。
HD7970のピーク時はGTX TITANにかなり近い値が出ました。ドライバー最適化といっても、HD7970の素の消費電力まで少なくなるわけではありませんでした(当然ですが)。
●まとめ:もっとPCゲームを盛り上げておくれ!
AMDがドライバーやゲーム側の最適化でPCゲームを盛り上げてくれるのはPCゲーマーとして純粋にうれしいところ。もちろん、NVIDIAもこのまま黙っているわけではないでしょう。最新ハードでの直接対決は来年まで先送りというウワサもあるのがちょっと残念ですが、こうした水面下のライバルどうしの対決もおもしろいですね!
(2013年4月5日訂正)記事初出時に検証に用いた『R7970 Lightning BE』の製品名と画像が間違っておりました。お詫びして訂正いたします。
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