GeForceを用いて円周率小数点以下8000兆桁目の計算を達成
アメリカ、サンタクララ大学のEd Karrels氏らの研究グループは、3月14日、数学者の間では“円周率の日”と呼ばれるこの日に、円周率計算の新記録を達成したことを報告した。研究グループは、円周率の小数点以下8000兆桁目(ただし2進法表記)の計算を達成したとのこと。
NVIDIA公式ブログ(関連サイト)
Computing Digits of π with CUDA(関連サイト)
計算に掛かった日数は約26日。使用したハードウェアは、スーパーコンピューターではなく、ネットワークに接続されたごく普通の約26台のデスクトップPCだ。うち、1台はNVIDIA GeForce GTX690搭載、うち1台は同GeForce GTX680搭載、残り24台は同GeForce GTX570搭載とのこと。
プログラミング環境はNVIDIAのGPGPU(General Purpose GPU)プラットフォームの“CUDA”。計算は、全て前述のGeForce GPU上で分散実行された。 研究グループは、8000兆桁目(2進法)の円周率のビットは“0”だったと報告している。
日本がもつ円周率計算の記録としては、2011年、長野県の会社員の近藤茂氏とアメリカの当時大学院生だったAlexander J.Yee氏とが共同で、自作PCで1年間掛けて達成した10兆桁の記録がある。これは、小数点以下1桁目から順番に桁数を求めていく計算手法を使用しており、この計算方式による新記録は未だに破られていない。
アメリカとカナダの数学者のDavid H.Bailey氏、 Peter Borwein氏、Simon Plouffe氏らが考案した16進法表記の円周率のn桁目を算出することができるアルゴリズムが1995年に考案されてからは、算出済みの桁は求めずに、続く桁を求めていく計算がコンピュータ性能を評価する際に行なわれる機会が増えている。この計算手法は“BBPアルゴリズム”と呼ばれ、この手法で計算した円周率記録としてはYahoo!の研究チームが2010年に達成した2000兆桁(2進法)がある。なお、Yahoo!の研究チームのこの時の記録は1000クラスタのCPUベースのコンピューターを用い、23日掛けて達成された。今回のEd Karrels氏らの研究グループは、BBP法を分散コンピューティング用に最適化を推し進めて高速化されたBellard法を採用し、Yahoo!の研究グループの記録を更新した格好となる。
「エネルギー効率のよいコンピューティングソリューション」として現在、GPGPUが注目を集めており、スーパーコンピューターの世界でもGPGPU採用事例が増え続けている。2012年末、米オークリッジ国立研究所の『TITAN』が、世界最速のスーパーコンピューターとして認定されたが、このTITANもNVIDIAのKeplerコアベースのGPGPUベースのものだ。科学技術計算、特に並列計算が有効な分野では、今後、GPGPUベースがますます主流になっていくことだろう。
今回の新記録達成にちなみ、2013年3月18日から米サンノゼ市で開幕する『GPU TECHNOLOGY CONFERENCE』にて、研究グループEd Karrels氏らの講演が行なわれる予定だ。
GPU TECHNOLOGY CONFERENCE(関連サイト)
(3月24日15:30 GTCで行なわれたKarrels氏のセッションを受け、内容を修正しました。お詫びして訂正いたします)
(誤)円周率小数点以下8000兆桁
(正)円周率小数点以下8000兆桁目
(誤)小数点以下8000兆桁(ただし16進法表記)の計算を達成したとのこと。
(正)小数点以下8000兆桁目(ただし2進法表記)の計算を達成したとのこと。
(誤)計算に掛かった日数は約35日
(正)計算に掛かった日数は約26日
(誤)8000兆桁目(16進法)の円周率のビットは“0”
(正)8000兆桁目(2進法)の円周率のビットは“0”
(誤)2011年に達成した2000兆桁(16進法)がある。
(正)2010年に達成した2000兆桁(2進法)がある。
(トライゼット 西川善司)
●関連サイト
(善)力疾走
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