MacPeopleは、1月29日発売の3月号(関連サイト:Amazon)で通巻300号を迎えることができました。この300号では通巻300号記念特別号として、創刊号から最新号までの表紙や基調講演、People Watchingのアーカイブ、人気連載の特選集などを収録しています。320ページの特大ページで、そのまま立てられる分厚さです!!
また、300号に併せてNewsstandでの定期購読タイプの電子配信(関連サイト:App Store)もスタートしています。本文部分をタップすると、テキストのみが拡大表示されるインターフェースを採用していますので、iPadはもちろんiPhoneでもスムーズに読み進められます。試し読みも可能ですので、ぜひダウンロードしてチェックしてください。バックナンバーが気になるという方に向けて、単品販売も可能になっています。
なおMacPeopleでは、創刊当時から現在までのAppleを振り返る、記念企画を実施中。第4回はこちらです→OS X誕生、iCal、PowerBook G4、iPod mini――Apple絶好調の時代
■PowerPCからインテルCPUへの華麗なる移行
吉田 300号記念企画の5回目は、通巻201~250号です。時期でいうと、'05年9月~'09年10月ですね。MacPeopleは'04年に月2回刊行から月刊に戻ったので、50号ぶんといっても約4年間と結構期間が長いです。今回も引き続き、本誌の倉西編集人を交えて話を進めていきます。
倉西 この時期の最初の目玉はやっぱりインテルマックだよね。前回の座談会で少し話したけど、PowerPC G5は結局ノートには載らなかった。というより、Power Macのあのヒートシンクを見て、搭載するのはムリだと思ってたから、インテルCPUへの移行は必然だった。
吉田 PowerBook G5を見たかった気もしますが、叶いませんでしたね。当時、ノートユーザー、特に最先端の技術が搭載されるPowerBookユーザーにとっては、PowerPC G4の少しのクロックアップの新機種にはもうワクワクしなくなっていました。
倉西 '03年の6月に初代Power Mac G5が出たのに、PowerBookは'05年10月の最終モデルでもまだPowerPC G4だったからね。当時のアップルのマトリクスで考えると、ハイエンドカテゴリーで、デスクトップマシンであるPower Macのカウンターパートになるのは当然ノートマシンであるPowerBook。でも、CPUパワーからしてマトリクスが完全に崩壊してたな。
吉田 CPUのクロック周波数も、PowerPC G4は1.7GHzあたりで打ち止めでしたよね。サードパーティーがそれ以上のCPUを搭載したアップグレードキットを出してた記憶がありますが(デイスターテクノロジーが『XLR8 MAChSpeed CPU upgrades』というPowerBook G4用のCPUアップグレードキットで、2.0GHzのPowerPC G4を採用していた)。
倉西 俺のiBook G4が絶好調だったころだな。でもいまから思えば、あのころのiBookもPowerPCのロードマップに翻弄されていたような。兄貴分のPowerBookがPowerPC G4を卒業できないし、PowerPC G4のクロック周波数も上がらないしで、PowerBookとの性能差も縮まってしまって。ノートカテゴリーのプロ/コンシューマーのマトリクスまで壊れかけてたね。
吉田 ちなみにiBookは当時、画面の解像度とスペックがまったく同じで12インチと14インチを出してましたね。あれも今から思うと異例ですね。14インチを分解したら、12インチのロジックボードに下駄を履かせたみたいな構造でしたもん。
インテルマックを特集した'06年6月号。「Windows XPが動く!!」というコピーに時代を感じる。 |
倉西 現在、マックの売り上げの7割以上はノートだというのは周知の事実だけど、このころからアップルのノートマシンはラインアップが迷走し始めたと思うんだ。
吉田 と、いいますと?
倉西 ティム・クック現CEOは当時はおそらく当時COOでしょ? しかも商品管理のプロだと言われている人なのに、ノートマシンはラインアップが多すぎる気がするんだよね。
吉田 私も前から感じてますが、13インチが多すぎです。インテルCPUを採用してからもMacBookとMacBook Air、MacBook Pro。現在でもMacBook AirとMacBook Pro、MacBook Pro Retinaといずれも3モデルもあります。
倉西 現在はマシン性能が格段に向上したので、プロ/コンシューマーという境目はもうないけどさ、ユーザーはどれ選べばいいか迷うよね。俺なら間違いなくRetinaだけど。
吉田 販売店では、AirとRetinaをお勧めしても、CDやDVDを使うには外付けドライブが必要ですと説明すると、全部入りのProを選ぶ人が意外にも多いと聞きました。まあ、Proはなんだかんだいっても性能がいいのに安価ですしね。
倉西 えー、でもRetinaで決まりでしょ。光学式ドライブなんていらないじゃん。
吉田 あとカメラマンさんに聞くと、撮影してすぐにデータを渡すには光学式ドライブがあったほうがいいと言われますね。数GBのデータとなるとクラウドは遅いし、容量も少ないので。大容量データのデリバリーについては、まだまだクラウドは厳しいかと。
倉西 とにかく、iBookと性能があまり変わらない12インチのPowerBook G4を出してみたり、アルミボディーのMacBookをMacBook Proに昇格させてみたり、ProとPro Retinaを併売してみたりと、いまいちしっくりこないんだよなぁ。
光学ドライブを搭載した“全部入り”の『MacBook』。 |
吉田 話は変わりますが、インテルマックが登場して4ヵ月後の'06年4月にBoot Campのベータ版が出て、「マックでウィンドウズ」祭りになりましたね。
倉西 それ、俺あんまり興味ない。
吉田 特集記事とかやるとすんごい人気ありましたよ。これでウィンドウズからの乗り換えユーザーも増えるんじゃないかと思いました。
倉西 で、MacPeopleの読者で乗り換えましたという人は増えたの?
吉田 実はOSマニアにはものすごく受けました。でも、ご指摘のようにBoot Campのおかげでウィンドウズユーザーがマックに乗り換えたというのは、ちょっと語弊があるかもです。
倉西 どういうこと?
吉田 これも当時、あるマック専門店の方に聞いたのですが、店頭でマックのBoot Camp環境でウィンドウズを走らせているデモを見せて「ほら、いまのマックはウィンドウズも使えますよ」とお勧めしたら、「ウィンドウズを使いたいならウィンドウズマシンを買う」と、Boot Campのテクノロジーについては関心が薄いお客さんが多かったみたいです。マックを欲しいと思ったのは、マシンやOS Xのデザインで、そこじゃないんだって。
『Boot Camp』の特集では、マック専門誌に「Windows インストール完全ガイド」が掲載されることに。 |
■iPhoneの爆発的なヒットでパソコンメーカーから脱却!!
倉西 それはそうとiPhoneだ。
吉田 確か当時は、ケータイ先進国の香港に行けばマルチタッチの携帯電話はあったように思いますが、マルチタッチのスマートフォンを広めたのは間違いなく、'07年1月に発表された初代iPhoneですよね(発売は同年6月)。
倉西 当時はサードパーティーアプリはインストールできなかったけど、その先進性に感動したね。あと、このタイミングでアップルは正式社名をApple Computer, Inc.からApple Inc.に変えたよね。すでにiPodで大ヒットを飛ばしていたから、これで名実ともにパソコンメーカーからの脱却を図ったわけだ。
吉田 iPhoneは「未来が手の中に!!」という感じでした。マニアの皆さんが日本では電話として使えない初代iPhoneを購入して、パーティーを開かれてましたね。
iPhoneを発表するジョブズ氏を表紙に掲載。「OS Xがケータイで動く」というコピーが当時の衝撃を物語る。 |
ジョブズ氏がiPhoneを発表したMacworld Expo/SF 2007の基調講演。 |
倉西 日本で一般ユーザーがこの感動を味わえたのは、同年9月にリリースされた初代iPod touchからだよね。iPhoneがほしくても買えない人はみんなこっちを買ったんじゃないかな。でも、通話機能がもちろんないので、当時できることは初代iPhoneよりも限られていた。音楽プレーヤーとして使うぶんにはいいけど、あとは株価を見て、天気予報を見て、四則演算してみてという感じ。たまにYouTubeも見たけど。なんといっても、最初はコピペできないことに驚愕したね。アップル製品なのに。
吉田 iPhoneが日本に入ってくるのは'08年7月のiPhone 3Gからでしたね。私は、東京デジタルホンからのソフトバンク回線のユーザーで、うれしさは半端なかったです。初めての携帯からずっと同じキャリアだったので、iPhoneが登場したときに「ソフトバンクはつながらない」とか外野に言われても意味わかりませんでした(笑)。
背面が強化プラスチック製のiPhone 3Gに対し、iPod touchはアルミニウムを採用していた。 |
iPhone 3G発売日のレポート記事。このとき生まれたのが「乗るしかない このビックウェーブに!」という名文句。 |
倉西 iPhoneとiPod touchの話はここまでとして、当時のマックといえばやはりAirだよな。
吉田 でも'08年1月に出た初代モデルは販売台数が伸び悩んでいて、G4 Cubeのようになくなっちゃうかもと言われてました。初代モデルは魅力的なボディーデザインとは裏腹に、低性能・高価格とバランスが悪かったですから。内蔵ストレージをSSDにすれば確かに快適でしたけど、40万円近い価格に跳ね上がりました。
倉西 でも、あのころのSSD採用というアップルの英断があったからこそ、いまのSSD全盛時代があると思うよ。
Macworld Expo/SF 2008の基調講演でMacBook Airを初公開したジョブズ氏を表紙に起用。 |
吉田 そういう意味では、初代MacBook Airは選ばれた人しか使えないオーラをまとってましたね。カバンからおもむろに出すと、周囲の人がその薄さに驚嘆して自然に集まってきたという。
倉西 そうそう、俺も当時何回も見せびらかされたよ。「倉西くん、俺のMacBook Air見る?」って。毎日のように。
吉田 当時、プログラマーの方と打ち合わせすると、なぜか皆さんAirでしたね。しかもSSDモデル。プログラマーってやっぱ儲かるんだと思いました。でも、Airだとソースコードのビルドは如実に遅いと笑ってた方もいました。
倉西 MacBook Airが開花するのは2世代目からだよね。当時としては信じられないぐらい安い価格でAirが出てきたから。
吉田 あれは飛びつきますよね。
倉西 当時の俺はAppBankの全国ツアーに帯同しててさ、彼らは当時よくツイキャスやってたんだよ。俺もやろうと思ってふらっと寄ったアップルストア銀座に、「どうせ在庫ないだろうな」と思っていたAirの11インチがあったから、思わず買っちゃったんだよね。メモリー2GB、SSD 64GBのやつ。
ほんとは128GBが希望だったけど、目の前にあるAirをどうしても欲しくて買っちゃった。さすがに64GBだと容量がすぐに埋まっちゃったし、OSをアップデートしたらもっさりした記憶がある。ちなみに、いまでも64GBモデルあるけどさ、iPadやiPhoneの最上位モデルと同じストレージ容量って考えてみたら凄いよね。
初代MacBook Air。ジョブズ氏のデモを真似て、茶封筒から出してみせる人も少なくなかった。 |
吉田 話は変わって、通巻201~250号の'05年9月~'09年10月の期間に登場したOS Xはというと、'07年10月リリースのOS X 10.5 Leopardと、'09年8月リリースのOS X 10.6 Snow Leopardですね。Snow Leopardからはインテルマック専用OSになりました。
倉西 このころのOS Xで凄いと思った機能は、Tigerから搭載されたSpotlightと、Leopardの新機能だったクイックルックだな。
吉田 クイックルックは一度使うと手放せないですよね。ときどき、ウィンドウズマシンを使うときでも無意識にスペースキーを押してしまいますもん。あんなに手軽にファイルの内容をチェックできるのはOS Xだけですから。
'07年12月号に掲載された「Leopardに乗り換える10の理由」特集。クイックルックもここで初登場した。 |
倉西 その一方で、Dashboardはなんであるのかわからない。誰が使うの? 昔のMac OSのDA(デスクトップアクセサリ)みたいなもん? 当時のDAは、複数のアプリを同時起動できなかった欠点を解消するために考え出されたものだけど。
吉田 Dashboardは基本的には専用画面で実行する必要がありますから、あまり使用頻度高くないですよね。Dashboard上で動くウィジェット(ミニアプリ)は、「HTMLとCSSでプログラミングできるので簡単」という触れ込みで「Dashcode」っていう開発環境も登場しましたけど、人気出ませんでした。少し前までは純正キーボードの「F4」キーに割り当てられていたDashboardを呼び出すショートカットも、いまでもLaunchpadの呼び出しに変わってしまいましたし。
OS X 10.6 Snow Leopardを取り上げた'09年11月号の表紙は、ずばりユキヒョウだ |
倉西 OS Xはもうこのころは、文句のつけようのない安定感があったよね。もちろん、メジャーバージョンアップ直後は毎度いろいろ不具合あるけど、コンマ2ぐらい進むと安心して使えた。成熟期だな。
吉田 それでは、5回目の座談会はこれで終了したいと思います。次は座談会のラストになる6回目。通巻251号~300号、期間でいうと'09年11月~'13年1月について熱く語ります。
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●関連サイト
マックピープル公式サイト(MacPeople Web)
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