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ドコモ冬モデルはラインアップとサービスの充実度で勝負

2012年10月13日 11時00分更新

 ドコモは、10月11日、冬モデルの新製品発表会を開催した。iPhone 5でKDDIやソフトバンクのLTE対応が話題を集める中、「設置からチューニングまで2年間しっかりとやってきた」(ドコモ、代表取締役社長、加藤薫氏)というドコモも、この動きに対抗する。他社を意識したことは、サービス名にも表れている。発表会場には「docomo LTE Xi」というロゴが展示されていたが、これは、ドコモがLTEで先行していることを改めてアピールするためだ。加藤氏も「2社も(サービス名にLTEが)入ったので。Xiという名前も浸透しているが、合わせてお話することでより分かりやすくなる」と述べ、KDDIやソフトバンクの影響があったことを認めている。

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↑CMに出演する広末涼子さん(写真右)や、清水くるみさん(写真左)も駆けつけ、会見に華を添えた。背後のパネルを見ると分かるが、Xiの上に「docomo LTE」というロゴが入っている。


■各社LTEサービスを意識したドコモの戦略
 冬モデルはスマートフォン全機種が1.5GHz帯、一部機種が800MHz帯のLTEに対応。1.5GHz帯は15MHz幅を使い、下り最大100Mbpsを実現する。ソフトバンクのAXGPに比べると速度は劣るが、FDD方式のLTEでは最速を実現した。また、加藤氏は「面的に広げていくとき、3Gとの境目があるが、そこに動いた時のチューニング方法などのノウハウをため込んできた。広い面で、使いやすい、スループットの高いネットワークが構築できた」と胸を張る。エリアや速度など、目に見える部分だけではない、LTEの運用でも一歩リードしていると考えているようだ。

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↑冬モデルの主な特徴。全機種が下り最大100MbpsのLTEに対応。そのほかにクアッドコアCPUや大容量バッテリー、NOTTV、NFC搭載のモデルがラインアップする。
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↑LTEは、1.5GHz帯と800MHz帯でもサービスを開始。一部の地方都市では、速度も下り最大100Mbpsに向上した。基地局のスペック上は112.5Mbpsまで出るが、「カテゴリー4の端末が必要で、春ごろになる」(加藤氏)見込みだ
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↑新幹線全駅や主要空港にもエリアを拡大。下り最大75Mbpsのエリアも増やしていく。


■iPhone 5がないぶんバラエティー豊かに
 発表された端末は全16機種。内訳は、スマートフォンが9機種、タブレットが1機種、iモードケータイが4機種で、フォトパネルとWi-Fiルーターもここに含まれる。ラインアップは全方位的で、iPhone 5がない“穴”をAndroidできっちり埋めてきた印象だ。逆に言えば、iPhone 5がなかったからこそ、ここまでのバリエーションをそろえられたのかもしれない。年内発売のAndroid端末が3機種で、Android 4.1への対応も年明けになるが、iPhone 5は絶好調のソフトバンクとは対照的な品ぞろえと言えるだろう。

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↑ドコモの冬モデル全機種。スマートフォンだけではなく、タブレット、iモードケータイ、フォトパネル、Wi-Fiルーターと幅広いラインナップを取りそろえた。


 スマホの中で加藤氏が真っ先に紹介したのが、シャープのIGZO液晶を搭載した『AQUOS PHONE ZETA SH-02E』だ。「明るくて高精細、高い省エネ性能を誇り、バッテリーも夏モデルより20%以上増量している。4.9インチながら電池のもちも安心。クアッドコアCPUやNFCなど多彩な機能を備えた、まさに極上の1台」(加藤氏)という強力な売りを備えた端末だけに、人気が出そうだ。同じ名前を持つ夏モデルの『AQUOS PHONE ZETA SH-09D』は、クアルコムのチップセット『MSM8960』の供給不足が原因でユーザーの手に行きわたりづらい状況が続いていたが、前評判は非常に高い端末だった。潤沢に在庫が出回れば、ヒットにつなげられそうだ。国内メーカーが苦戦を強いられている中、反転攻勢に出る1台として注目しておきたい1台とも言えるだろう。

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↑シャープの開発した低消費電力のIGZO液晶を搭載した「AQUOS PHONE ZETA」。音声でコントロールできる機能を搭載するなど、ユーザーインターフェイスにも磨きをかけた。
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↑IGZO液晶の消費電力を、他の方式と比較したところ。ディスプレイはスマートフォンでもっともバッテリーを使うだけに、長時間駆動が期待できる。


 プレゼンテーションでは触れられなかったが、ドイツ・ベルリンで発表された『GALAXY Note II』の日本版にあたる『GALAXY Note II SC-02E』も、コンセプトが際立ったスマートフォンだ。5.5インチとディスプレーはさらに大きくなったが、比率が16:9になったことで持ちやすさは向上している。片手持ちがしづらいという理由で初代『GALAXY Note』を敬遠していたユーザーも、購入を検討してみる価値はあるだろう。日本ではまだNoteというジャンルが完全に根付いているとは言えない。ただ、グローバルでは、「初代GALAXY Noteを大きく上回る売れ行き」(サムスン関係者)というだけに、アピールの仕方次第では大化けする可能性もありそうだ。

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↑5.5インチで16:9の大画面を搭載し、Sペンの操作にも新たな要素が加わった「GALAXY Note II」。
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↑カラーはホワイトとブラウンの2色で、それぞれにフリップカバーがセットになった背面パネルが付属する。


 夏モデルで断トツの売れ行きを誇っていた『GALAXY S III SC-06D』には、スペックアップ版の『GALAXY S III α SC-03E』が加わる。チップセットの開発スケジュールもあって、夏モデルはデュアルコアになっていたが、αはサムスン製のクアッドコアCPU『Exynos 4412』を搭載する。RAMも2GBとそのままで、OSには最新のAndroid 4.1を採用。冬モデルの共通仕様である、下り最大100MbpsのLTEにも対応した。

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↑「GALAXY S III α」はサムスン電子製のクアッドコアCPUを搭載し、中身は夏モデルと別物になった。


 半年も経たずにバージョンアップ版が登場したのは、『海外と日本の商戦期サイクルの違い』(ドコモ関係者)が主な理由だという。海外では年間を通して販売され続けるGALAXYシリーズだが、年3回ないしは4回の商戦期がはっきりしている日本ではどうしても前のシーズンのモデルに“型落ち感”が出てしまう。こうした状況を避けつつGALAXY S IIIを長期間販売するために、あえてスペックを底上げしたモデルを投入するというのが、ドコモの理屈だ。ただ、GALAXY S IIIを購入した既存ユーザーからは、不満の声が上がるかもしれない。筆者もそのひとりで、発表会を取材しながら、何とも言えない気分になった。せめてOSのバージョンアップは、αの発売から大きく遅れることがないようにしてほしいところだ。

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↑OSがAndroid 4.1になっているのも、「GALAXY S III」との差分だ。既存モデルにもバージョンアップがあることを期待したい。


 『Xperia V』の日本版にあたる『Xperia AX SO-01E』や、ワンピースとのコラボモデルで限定5万台の『N-02E ONE PIECE』なども話題を集めるスマホと言えそうだ。このほか、64GBのストレージを搭載した『ARROWS V F-04E』や、ワンピースコラボのベースとなった『MEDIAS U N-02E』、デザイナーの佐藤卓氏が手がけた『Optimus LIFE L-02E』、女性向けの『ARROWS Kiss F-03E』に加え、ディスニーとのコラボモデルになる『Disney Mobile on docomo N-03E』も発売される。

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↑“モバイルブラビアエンジン2”や“クリアオーディオ+”に対応する「Xperia AX」。
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↑ワンピースとのコラボモデルは、卓上ホルダーもこだわりのできばえ。


 一方で、夏モデルでは見送られたiモード端末を4機種そろえたのは、市場動向を見据えたためだ。加藤氏は「6000万(加入者)の中ではフィーチャーフォン(iモード機)が2に対して、スマートフォンが1」と述べていたが、潜在的なニーズはまだ決して小さくない。投入サイクルは年1回程度と長くなるが、すぐに市場がゼロになるわけではなさそうだ。

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↑iモードケータイが4機種追加されたのも、冬商戦のトピックと言えるだろう。


■サービスの充実にも力を注いでいるドコモ
 「ドコモクラウド」のサービスにも、磨きをかけてきた。レスポンスや使い勝手の悪さをたびたび指摘されていたspモードメールを、ドコモメールに刷新。IMAPに近い方式でサーバー上にメールを残しておくことができ、マルチデバイスにも対応する予定だ。ただし、発表会ではデモが行なわれていた程度で、使い勝手については現時点で判断できない。サービス開始は2013年1月を予定しているが、「Android 4.1の端末は投入が遅れる」(ドコモ関係者)とのこと。せっかくAndroid 4.1のGALAXY Note IIやGALAXY S III αを導入するのであれば、このタイミングは合わせてほしかったというのが正直なところだ。

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↑spモードメールがクラウドに対応し、“ドコモメール”として生まれ変わる。


 また、『AQUOS PHONE ZETA』や『Xperia AX』、『ARROWS V』、『ARROWS Kiss』の4機種に関しては、おサイフケータイで使われるFeliCaに加え、NFCにも対応した。対応端末同士でデータの送受信が可能な”Androidビーム”を使えるほか、”かざしてリンク”として様々なサービスに対応する。AQUOS PHONE ZETAとXperia AXについては決済機能も利用でき、海外でのiDによる支払いが可能になる見込みだ。ほかにも、「しゃべってコンシェル」のバージョンアップや、dマーケットやソーシャルゲーム、ショッピングなどを開始する。

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↑NFCに対応したことで、一部機種でiDが海外でも利用できるようになる見込み。
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↑“しゃべってコンシェル”は音声がより自然になり、キャラクターの変更が可能。


■これまであったLTEの優位性が、ドコモにまだあるのか?
 ここまで見てきたように、冬商戦のドコモは、LTEの高速化を共通要素に据えつつ、充実したラインアップの端末と、新たに追加するコンテンツ、サービスで勝負する方針だ。ただ、同社が得意とするネットワークが、意外なアキレス腱になる可能性もある。実際、LTEのエリアでは、KDDIが年度末までに実人口カバー率で96%を達成する見込みで、基準は違うものの、ドコモの人口カバー率75%が見劣りしてしまう。加藤氏は「実人口カバー率で計算してみたら、他社とそん色ない数値になった」と言うが、裏を返せば、2年間の積み上げをわずかな期間で追い上げられていることも事実だ。

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↑ドコモの加藤社長は囲み取材でも、LTEに対する2年間のノウハウを持つアドバンテージを強調した。


 また、100MbpsのLTEは、利用できる周波数が限られているため、当面の間、盛岡市や仙台市、高松市、高知市など、一部の地方都市だけとなる。ユーザーが増え、LTEでも速度が出づらくなっている都心部などでは、2.1GHz帯の3GをLTEに移行できず、下り最大37.5Mbpsでのサービスが続いてしまう。特に混雑地域では、LTEといえどもスループットは徐々に落ちてきている。まだユーザーの少ない他社と比べてしまうと、実測値でアピールすることも難しいというわけだ。特に800MHzと1.5GHzで下り最大75MbpsのLTEを開始予定のKDDIは、ドコモの手ごわいライバルになりそうだ。都市部に強いAXGPを持つソフトバンクに対しても、苦しい戦いをしいられることになるかもしれない。

(10月16日18時)LTEに関して、全機種が1.5GHz帯と800MHz帯に対応しているかのような記述がありましたが、正しくは「全機種が1.5GHz帯に対応、一部機種が800MHz帯のLTEに対応」となります。訂正のうえ、お詫び申し上げます。

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