7月27、28日の2日間にわたり、神奈川県相模原市の宇宙科学研究所(ISAS、JAXA相模原キャンパス)では、毎年恒例となる一般公開を開催。東大・駒場の宇宙科学研究所から相模原へ移転して24年、”宇宙研まつり”とも呼ばれ、最前線の研究者が来場者に熱弁をふるってくれる貴重なイベントとして毎年大人気! 今年は合計1万3845名の来場者が訪れたとのこと。
しかも、展示用の会場ではなく、ふだん使用中の研究室に入ることができ、開発した人工衛星の試作機や試験設備を直接眺められるというもの。本物だらけの会場を巡ってきたレポートをお届けしますよ。
第1会場の研究・管理棟では『はやぶさ2』の実物大模型がどーんとお出迎え。こちらは以前、『はやぶさ』の実物大模型(として展示されていた熱構造モデル)があった場所。アンテナが新しく搭載予定のフェイズドアレイ型になり、“衝突機”も追加されていました。
2階では小型ソーラー電力セイル実証機『イカロス』のプロトタイプモデルを展示。
手すりにかけらているのはただの垂れ幕ではなく、セイル部分の試作品なのです。
現在は当初の目標をすべてクリアーし、太陽の周りを回り続けている『イカロス』。太陽との角度と距離の関係で発生電力の低下から冬眠モード(電力低下による搭載機器のシャットダウン)状態。今年春には太陽角と太陽距離が改善され、電力復活が予想されることから通信を試みているところなのですが、7月26日のブログ記事(関連サイト)によればまだ応答がないようです。早く見つかってほしい!
中庭では、JAXAと大学で研究中の“宇宙探査ロボット”をデモンストレーション!
砂地を走行するロボットや、障害物に対して乗り越えたり避けたりするローバーが走行。しかし通信の不具合でミッション(?)が実行できない場面も。
第3会場(特殊実験棟)は電気推進の展示が行なわれていました。小型衛星に搭載できる低電力タイプのイオンエンジン“μ1”をはじめ、実機と実験の模様をじっくりと確認できる貴重な時間です。
過酷な熱や振動など、人工衛星をいじめ抜く試験装置の数々も展示。こちらはマイナス60度からプラス80度までの温度環境で試験をする温度環境試験装置。
2020年代のミッションを目指した“火星飛行機”の展示をしていたのは、第5会場(構造機能試験棟)。
地球のほとんど100分の1という薄い大気の中でも飛べる火星飛行機を開発中です。ロケットのペイロードに積み込むため、主翼や尾部が折りたためるようになっているのがわかります(写真は模型)。
こちらはRVT(再使用ロケット実験機)の展示。
実際に実験に使用した実機のロケット内部が見えるように機体外装が取り外されており、外装に開けられた小窓から顔を出して記念写真を撮る風景がたくさん見られました。
来年は宇宙科学研究所当初からの固体燃料ロケットの後継機、『イプシロン』が打ち上げ予定。模型展示の隣でのミニ講演は、開発チームが入れかわり立ちかわり熱く語ってくれていました。
すぐ横には、イプシロン初号機で打ち上げられる予定の小型科学衛星『SPRINT-A』の模型展示が。
8月6日に内之浦から実験ロケットS-310-41号機で打ち上げ実験が行なわれる、新型大気圏再突入システム“小型インフレータブルカプセル実験機”。
耐熱装置の考え方がこれまでのものと違うので、Zガンダムのバリュートシステムみたいだと一部で評判のもの。シイタケのかさのような部分は、大気圏再突入時に二酸化炭素で膨らんで、空力加熱から中のカプセルを守り、将来、軌道上からものを持ち帰る低コストで画期的なシステムになる、かも。
中庭ではJAXAクラブ宇宙実験室の『パラシュートワークショップ』や『エッグドロップコンテスト』など、来場者参加型のイベントも開催。
エッグドロップコンテストでは、審査員を務めたJAXA相模原キャンパスの“偉い人”なども自ら製作した機体で参戦。しかしJAXA関係者の機体はすべて卵が割れてしまったのでした。
ところが一般参加者のパラシュートを用いた機体ではは卵が割れずに無事に着地!!
会場の随所で行なわれるミニ講演、展示ブースの説明、隣接する相模原市立博物館や国立近代美術館フィルムセンター相模原分館会場で行なわれていた講演会では、現役の研究者が宇宙探査の最前線について話してくれました。研究者と来場者の距離はとても近いもので、講演の後に講演者をつかまえて会場の外で話し込む姿も。大人はこうした部分も大いに楽しめる、熱い休日だったのでした。
【13時40分追記】クレジットが抜けておりましたので追記しました。関係者のみなさまにお詫び申し上げます。
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります