国際宇宙ステーション補給機 HTV“こうのとり”3号機のミッション説明会が4月13日、JAXAで行なわれた。
↑説明会に臨むHTVプロジェクトチーム プロジェクトマネージャー小鑓幸雄さん(左)と、技術領域総括の上垣内茂樹さん(右)。 |
HTV“こうのとり”は、ISS(国際宇宙ステーション)に宇宙飛行士の生活物資や各種設備、実験装置などを運ぶ日本の輸送機だ。2009年から始まった打ち上げは今年で3機目を迎え、開発機としては最終。国産ロケット『H-IIB』で、7月21日、種子島宇宙センターから打ち上げを予定している。いったいどのような装置を宇宙に運ぶのだろうか。
↑7月21日に打ち上げられる予定の3号機。6日後の7月27日に国際宇宙ステーション日本実験棟”きぼう”にドッキングし、約30日間ISSに滞在して離脱、地球へ再突入する。 |
■実験装置その1 ポート共有実験装置(MCE)
↑高高度放電発光現象スプライトを観測する"GLIMS"、宇宙ロボット"REX-J"など5つの実験装置を搭載したポート共有実験装置(MCE)。 |
複数の実験装置を取り付けて研究を行なう設備。以下5つの実験装置が搭載されている。
・地球高層大気の撮像観測を行なう“IMAP”。
・落雷に伴って高度40キロメートル以上の上空で発光するスプライトの全体像をつかむための観測装置“GLIMS”。
・宇宙で構造物を組み立てるため、宇宙インフレータブル伸展構造物が重力が小さいところでも構造を支えらえるかどうか技術実証を行なう“SIMPLE”。
・テザー(ひも)を伸ばしてひっかけ、船外を自由に動き回る宇宙ロボット”REX-J”。
・民生用ハイビジョンカメラの宇宙環境での利用実証を行なう”HDTV-EF”。
■実験装置その2 小型衛星放出機構(J-SSOD)
日本の実験棟“きぼう”から超小型衛星を放出する小型衛星放出機構(J-SSOD)も、今回の実験装置のひとつ。きぼうは船外で実験装置を扱えるロボットアームをもっており、ロボットアームの先端から合わせて5つの超小型人工衛星を放出する。この実験を、宇宙飛行士 星出彰彦さんが行なうかどうかは、星出さんのISS滞在スケジュールが完全に決定していないため、まだ未定なのだとか。
■実験装置その3 水棲生物実験装置(AQH)
↑魚を輸送する容器。宇宙に行く魚界のエリート? |
メダカといえば日本人宇宙飛行士の向井千秋さんを思い出すかもしれないが、水槽でメダカを飼育して、生物に与える微小重力の影響を研究するための実験装置も搭載する。
■実験装置その4 再突入データ収集装置『i-BALL』
↑IHIエアロスペースとJAXAが共同研究した再突入データ取得器”i-BALL”。ライバルともいえる海外製の"REBR”と共に、HTV再突入時の機体のデータを集める。 |
HTVはISSに物資を届けた後、国際宇宙ステーションから離脱し、大気圏に再突入して燃え尽きる。その再突入のデータを取得する装置で、”はやぶさ”のカプセルを作ったIHIエアロスペース製だ。HTVプロジェクトマネージャーである小鑓さんによれば「高度78キロメートル付近からデータを取りはじめ、バラバラになるHTVから放り出されながら、機体の破壊状況、燃えている状況を撮影」するという。温度、加速度/角速度、GPS航法データも取得し、最後はパラシュートを開き、イリジウム衛星経由でデータをJAXAへ送信。南太平洋の洋上に着水する。
このデータが、ゆくゆく、落下域の正確な予測に役立ち、有人宇宙船開発の研究の基礎になるとのこと。ミッション終了後、i-BALLの撮影画像は公開される予定だ。はやぶさのカプセルと同じアブレーション技術で落下時の高熱に耐え、燃えてバラバラになるHTVをひたすら撮影するi-BALL。装置自体はデータ送信後に南太平洋に消え、回収は難しい。ただし、この実験データから回収型装置の開発も進められる。
以上が宇宙に運ばれる主な実験装置だ。
HTVは3号機になって搭載能力も利便性も向上した。開発費はHTV本体で140億円程度。小鑓プロジェクトマネージャによれば「直前の搭載能力が改善されたため、打ち上げ1週間前まで物資を積み込むことができる」ようになっているとのこと。
今回、輸送物としてISSの水再利用装置で利用される触媒反応器を運ぶ予定だが、それは、ステーション上の機器が故障、予備品を使い果たしたということで、急きょNASAから依頼があり、積みこむことになったとのこと。通信装置やエンジンの国産化も進み、予定では、7月21日の打ち上げ後、同月27日にきぼうのロボットアーム捕獲地点へ到着する。
↑国産メインエンジンを搭載。通信装置やメインエンジンの国産化により、部品の安定供給やコストの安定化が図られた。 |
小鑓さんによれば、「ロンドンオリンピック開幕式の直前に、キャプチャ(ロボットアームでの捕獲)とドッキングをお伝えできるかも」ということなので報告を楽しみにしたい!!
(C)JAXA
■関連サイト
JAXA宇宙航空研究開発機構
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