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『火星のプリンセス』を完全実写化 『ジョン・カーター』アンドリュー・スタントン監督インタビュー

2012年04月10日 17時38分更新

 SF小説の古典的名作『火星のプリンセス』がついに映画化。ピクサーで数々のCGアニメを生み出し、初の実写作品に挑んだアンドリュー・スタントン監督に話を伺った。

ジョン・カーター

アンドリュー・スタントン
『ジョン・カーター』監督・共同脚本

PROFILE
1965年12月3日、マサチューセッツ州生まれ。’90年にピクサー・アニメーション・スタジオに参加。『ファインディング・ニモ』(’03)、『ウォーリー』(’08)の監督を務め、本作が初の実写作品となる。

週アス:『ウォーリー』は、監督が大好きな『2001年宇宙の旅』、『スター・ウォーズ』、『未知との遭遇』、『エイリアン』、『ブレードランナー』など、'70年代のSF映画に対するラブレターだとおっしゃっていたんですが、『ジョン・カーター』はSF映画の原点に戻った作品のような気がします。

スタントン監督:僕にとってバルスーム(火星)への旅は、場所というよりもロマンあふれる世界への旅で、『ジョン・カーター』は、『アラビアのロレンス』のような、壮大なスケールの歴史物の映画に対するオマージュに近いですね。

ジョン・カーター


週アス:今回の作品がCGアニメではなく、実写なのは歴史物として描きたかったからですか?

スタントン監督:僕が10歳でこの原作を読んだときも、イメージはアニメではなく、実写でした。日記を読んでいるような感じで、本当にバルスームへ行ったらどういう気持ちなのだろうと想像しました。

週アス:ピクサーではアニメーターが動きをつけますが、今回の“サーク族”ではモーション・キャプチャーを使って、俳優の演技を取り込んでいますね。

スタントン監督:今回もアニメーターを使っていますし、それプラス、モーション・キャプチャーがあるというだけです。人間が何もない空間で対話や演技をするのは非常に大変なことで、やっぱり自然に見えなかったりリアル感がでないんですね。そういったときに名優を雇って、それに優秀なアニメーターをプラスすることによって、このコンビで人物をつくりあげていくのです。モーション・キャプチャーというのは単なるツール、道具だと思うんです。ピクサーでもすばらしい声優さんの演技と、アニメーターが組んではじめて作品ができあがるんですね。

ジョン・カーター


週アス:サーク族を演じるのは、ウィレム・デフォー、サマンサ・モートン、トーマス・ヘイデン・チャーチと演技派をそろえていますが。モーション・キャプチャーだからこそ、名優が必要なのですか?

スタントン監督:これはもう当然、下手な俳優と下手な俳優を組み合わせたら完全にシーンがおかしくなります。テイラーやリンはすばらしい俳優なのに、テニスボールと演じたら、テニスボール級の演技になってしまう。やはり名優と演じると、演技の質が上がるんですね。

週アス:ウィレム・デフォーさんたちは撮影現場でいっしょに演技をしているのですか?

スタントン監督:彼らは常に現場にいて実際にサーク族を演じています。私が“グレーのパジャマ”と呼んでいるモーション・キャプチャーの点がついたスーツを着て、顔にも点がついていて『アバター』と同じように頭に載せた2台のカメラで表情のデータを取ります。竹馬のようなものに乗っているので身長も実際に高く、テイラーは彼らに囲まれると、子どものような気分になります。頭がサーク族と同じところにあるので、テイラーは彼らを見上げて、目を見て演技をするわけです。

ジョン・カーター


週アス:バルスームは砂漠の星ですが、有機的というか自然な感じがします。監督はCGではなく、ロケ撮影にこだわったと聞いていますが。

スタントン監督:これは映画を見た人が実際にバルスームに行った気分になれるようにと思ったので。CGを多用してしまうと、冷たくて人工的な感じがしてしまうんですね。できるだけ暖かさを感じるような、汚くて完璧ではない、リアルな砂漠らしさを出したかったのです。

ジョン・カーター


週アス:サーク族やウーラは一見、グロテスクですが、見ているうちに愛らしさも感じるデザインですね。

スタントン監督:ファンタジーなつくりものというイメージは避けたかったんです。自然界の中で進化によってこういう生物ができあがったと信じられるようなものをめざしました。たとえば、オーストラリアが初めて発見されたとき、カンガルーやコアラやカモノハシを見てびっくりしたと思うんですね。見たこともない生物だから。それと同じようにああいう環境に生き延びた生物として信じられるように、サーク族もウーラもつくりあげました。

週アス:飛行船には羽が生えていますね。

スタントン監督:あれはトビウオをイメージしています。原作にも火星に昔は水があったと書かれているので、帆船があったと仮定して、海洋から機能性重視の空飛ぶ帆船のようなイメージで描きました。

ジョン・カーター


週アス:最後に、この映画はスティーブ・ジョブズに捧げられていますが、監督にとってはジョブズとはどのような人でしたか。

スタントン監督:彼は友人であり私の上司であり、15年間、恩師のような存在でした。彼の仕事ぶりを直に見ましたし、彼の哲学をいろいろと学びました。あれほど先を見通すことができる人には一生に一度しか会えない、そういう感覚をもった人でした。僕が今、家庭をもって、仕事があるのは、本当にスティーブ・ジョブズがピクサーを支えてくれたおかげだと思っています。

※『火星のプリンセス』とは
1912年に発表されたエドガー・ライス・バローズのSF小説。『ジョン・カーター』の予告編を見て、「『スター・ウォーズ』みたい」と感じた人もいると思うが、『スター・ウォーズ』や『アバター』にも影響を与えた古典的名作なのだ。「ジョン・カーターって『ER緊急救命室』じゃないの?」と思った人、カーター君は原作者のマイケル・クライトンがこのジョン・カーターから名前を取ってつけたのだそうですよ。

ジョン・カーター


ジョン・カーター
公式サイト
●4月13日より丸の内ピカデリーほかにて全国公開
©2011 Disney. JOHN CARTER™ ERB, Inc. All Rights Reserved.

惑星バルスームに迷い込んだジョン・カーターは、4本の腕をもち、身長2.8メートルのサーク族に捕らえられ、美しい王女デジャー・ソリスと出会う。

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