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『WALL・E/ウォーリー』の監督インタビュー

2008年11月25日 16時00分更新

PIXAR(ピクサー)最新作『WALL・E/ウォーリー』がついに日本公開。
本日発売の週刊アスキー本誌(12/9号)掲載のアンドリュー・スタントン監督インタビューをロングバージョンでお届けします。

アンドリュー・スタントン Stanton アンドリュー・スタントン
『WALL・E/ウォーリー』監督

PROFILE
'90年、ピクサー・アニメーション・スタジオに9番目のメンバーとして参加。『トイ・ストーリー』('95)、『モンスターズ・インク』('01)などの共同脚本を担当。監督作品『ファインディング・ニモ』('03)は世界中で大ヒットを記録した。

週アス:ウォーリーの充電完了音はMacの起動音ですね。

スタントン監督:スティーブ・ジョブズは僕たちのオーナーだし(笑)、700年後もまだあの音は生きているんです。

週アス:ウォーリーがお気に入りの映画を見る場面では、iPodも出てきますが、ウォーリーが取り出すのはビデオテープですね。

スタントン監督:僕はビデオテープの時代に育ちましたから。もっとオタクっぽいことをいうと、あれはVHSじゃなくてベータマックスなんです。技術はどんどん新しくなっていきますが、ウォーリーはどんな時代のものでも対応できるってことをしめしたかったんです。

週アス:ウォーリーの動きはとてもコミカルでかわいいのですが、参考にしたものはありますか?

スタントン監督:ピストンや水圧計、ギアなど、あらゆる機械の動きを研究して、動物に例えたらどういう筋肉になるんだろうと考えました。
また、1年ぐらいかけてバスター・キートン、チャーリー・チャップリンの映画も研究しました。彼らは台詞なしでいろんなことを表現する巨匠ですから。

週アス:『スター・ウォーズ』のR2-D2の音などを手がけたベン・バート氏がサウンド・デザインを担当されていますが。

スタントン監督:この映画をほかの人に説明するときに、「まさにR2-D2を映画にしたもんだよ」って言ってたんです。そうしたらプロデューサーが「じゃあ、いっそのことR2-D2をやったベン・バート氏を雇っちゃおうよ」って。音だけで表現をするということをベンは30年間かけてマスターしてますので、この仕事は彼以外の人ではできなかったと思います。

週アス:今後どのような作品に取り組みたいと考えていますか?

スタントン監督:『WALL・E/ウォーリー』って作品は僕が'70年代に大好きで、いっぱい見ていたSF映画に対するラブレターなんですね。1968年の『2001年宇宙の旅』から、『スター・ウォーズ』('77)、『未知との遭遇』('77)、『エイリアン』('80)、『ブレードランナー』('82)まで、黄金期だったと思います。僕としてはこれから先、大好きだったそういう作品、僕が受けた感動をみんなにも与えられるような作品に取り組んでいきたいと思います。

アンドリュー・スタントン Stanton

『ファインディング・ニモ』は大きな作品の中に僕がアートハウス映画で感じていたような気持ちを込めたつもりなんですね。『ファインディング・ニモ』が非常に成功したおかげで、今回の『WALL・E/ウォーリー』ではもっともっと自分のテイストを盛り込んでいます。次はどういうものになるかまったくわかりませんが、今回はとてもロマンチックなものを作ることができました。
今まで観た中で大好きな映画が2本あって、ひとつは『ニュー・シネマ・パラダイス』('89)で、もうひとつが日本の『Shall we ダンス?』('96)。この2本は何度も繰り返し見ています。それと同じような感動を与える映画を作っていきたいと思います。

週アス:『エイリアン』の名前があがりましたが、コンピューターの声がシガニー・ウィーバーってところがすごいですね。

スタントン監督:SF映画ってつねにコンピューターの声は女性ですよね。『エイリアン』にもコンピューター・マザーが出てきますが、今回はリプリーがコンピューター・マザーになってしまうわけです。ある意味、シガニー・ウィーバーってSF界では女王様ですし。初めからプロデューサーに「シガニー・ウィーバーを雇えるぐらいのお金を取っておいてね」って頼んでいたんです。1日あれば声のレコーディングはできますから、4年くらい待って、最後の録音の段階で彼女に頼もうって言ってたんです。幸運にも彼女が引き受けてくれて、レコーディング前日に彼女と食事をしたときにその話をしたら、「ピクサーは大好きだから、初めに頼んだってやったわよ」って言ってくれました。

週アス:宇宙空間や広大な廃墟になった地球を3DCGで描く上で苦労した点などありますか?

スタントン監督:あれだけの広大さを出すにはいろんなトリックがあるんですが、ILMに『スター・ウォーズ』などの特殊効を手がけているデニス・ミューレンという専門家がいまして、地球が地平線までずっと見えるような風景をどうやって描けばいいのか、彼からいろんなアドバイスを受けました。

週アス:言葉のほとんどないロボットたちの感情表現を描くために気にかけた点はありますか?

スタントン監督:ロボットたちには口もなければ鼻もない。目だけある。それをいかに使うかでちょっとした表情が生まれてきます。
ロボットは口もないからキスもできない。だから手をつなぐことが重要な意味をもってきます。どこかで読んだんですが、どの国でも手をつなぐっていう動作はお互いが好意をもっていることをしめすいちばん明らかな普遍的な行為だって書いてあったんです。『ハロー・ドーリー!』であのシーンを見たときに「I LOVE YOU」って言葉で発せないときに、それを明確に表わすのは手と手を握る行為だと思いました。

WALL・E/ウォーリー
『WALL・E/ウォーリー』
700年もの間、地球にたったひとりで残されたゴミ処理ロボット、ウォーリー。ある日、宇宙船でやってきた最新鋭のロボット、イヴに恋をする。
●12月5日より日比谷スカラ座ほか全国公開
『WALL・E/ウォーリー』公式サイト
ディズニーの公式サイト
 ヘッドフォンで遊ぶウォーリーなど特別映像を公開中

(C)2008 WALT DISNEY PICTURES/PIXAR ANIMATION STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.

(担当:平野&相川)

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