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CES会場を席巻したタブレット用CPU『Tegra3』を、もう一度おさらいしてみる:CES2012

2012年01月12日 07時00分更新

 NVIDIAの最新モバイル用プロセッサーである『Tegra3』は、クアッドコアに強化したGPUを搭載している。今回のCESでは、クアッドコア搭載のTegra3だと思われる端末もいくつか見受けられた。
 今回は、Tegraシリーズの製品マーケッティング・ディレクターのマット・ウェブリング氏に、Tegra3について話を聞いた。

NVIDIA TEGRA3

 Tegra3自体は、昨年概要が公表済みだが、整理する意味も含めて、基本的なところから話していくことにする。

 Tegra3は、CPUのほかにGPUやビデオ、オーディオなどの専用プロセッサーを搭載したSoC(System on a Chip)と呼ばれるデバイスである。Tegra3が採用するコアは、ARM社が設計した『Cortex-A9』と呼ばれるプロセッサーだ。製造プロセスは40nmである。
 Tegra3では、デュアルコアからクアッドコアになった以外の特徴は、次の点だ。

NVIDIA TEGRA3

●PC用GPUメーカーのノウハウを生かしたGPU

 まずGPUは、GeForceアーキテクチャーベースのもので“Ultra Low Power GeForce(ULP-GeForce)”と呼ばれているもの。Tegra2とTegra3では、GPU内部のコア(シェーダーユニット)のアーキテクチャーは同じだが、「その動作速度と数が違っている」(ウェブリング氏)ため、性能が向上している。具体的には、ピクセルシェーダーを4つ(Tegra2)から8つにふやした。
 スマートフォンやタブレットにつかわれるARMのSoCが採用するGPUには、『PowerVR』や『Adreno(QualComm社Snapdragon用)』、『mali(ARM)』などがある。これらに対するアドバンテージとして、ウェブリング氏は「NVIDIAがPC用GPUメーカーである」ことを挙げた。各社のGPUにそれぞれの特徴はあるが、すでにPC用GPUを開発してきた実績があり、これをベースに超低消費電力化したものがULP-GeForceであり、「モバイルとしては高い性能」をもつという。

●動画やオーディオ専用のプロセッサーを搭載

 モバイル用のSoCの特徴として、処理が決まっているビデオやオーディオのエンコード、デコードは、専用プロセッサーで行なうというものがある。同じ処理を行なう場合、専用ハードウェアによる処理と汎用プロセッサーとソフトウェアによる処理では消費電力に大きな違いが出る。消費電力が常に問題となるモバイル用SoCでは、スマートフォンやタブレットのメディア再生時間を延ばし、消費電力を削減するために専用プロセッサーを搭載する。Tegra3には、ビデオ、オーディオ、静止画用(ISP:イメージ・シグナル・プロセッサーという)の専用プロセッサーが搭載されているが、このうち、Tegra2と比較して強化されたのは、ビデオプロセッサーと静止画用プロセッサーの2つ。ビデオプロセッサーは、ビデオデータのエンコーディング、デコーディングを行なうものだが、「対応ビデオ形式を増やした」(ウェブリング氏)としており、ISPは処理速度を向上させている。


●消費電力を激減する“5番目のコア”

NVIDIA TEGRA3

 最近のスマートフォンなどでは1GHz以上のクロックが当たり前になってきたこともあり、消費電力が増えている。Tegra3は1.5GHzで動作し、Tera2の1GHzと比較すると1.5倍となっている。また、コア数も2から4へ増えており、このままでは消費電力が3倍になってしまう。
 Tegra3はこれに対応するために、“コンパニオンプロセッサー”と呼ばれる5つめのCortex-A9コアを内蔵している。この仕組みを「バリアブルSMP」という。このコンパニオンプロセッサーは、メインの4つのプロセッサーとは「基本設計は同じCortex-A9」だが「つかわれているトランジスタが違う」(ウェブリング氏)。コンパニオンプロセッサーは、高いクロック周波数では動けないものの、同じクロックならば、通常版のA9プロセッサーよりも消費電力を小さくできる。

NVIDIA TEGRA3

 Tegra3は、スマートフォンがアイドル状態であったり、メールの受信や表示などあまり負荷が高くない処理をしているときには、メインの4つのコアを休ませ、コンパニオンプロセッサーで実行を行なう。これにより、大きく消費電力を下げることが可能になる。つまりTegra3は、クアッドコアで最大性能も向上しているが、アイドル時などの消費電力も下がっており、結果的にバッテリ寿命が長くなる。これについてあるメーカーの技術者は、「現在のスマートフォンで一日もたないような使い方でも一日中使えるようになる」といい、ユーザーのレベルでバッテリー駆動時間の違いを体験できる程度の効果があるようだ。
 このコンパニオンプロセッサーへの切り替えは、自動的に行なわれ、OSのサポートは必要としない。切り替えは「CPUの負荷を見ていて、それが低くなったとき」(ウェブリング氏)に行なわれる。

NVIDIA TEGRA3

●激安、高性能Windows8タブレットが登場!?

 一部のセットメーカーからは、「Tegraシリーズはコストが高い」という話も聞こえる。この点についてウェブリング氏は、「性能、価格という点でも、価格という点でもTegraのコストが高いということはない。ASUS社の8インチタブレットは249ドルという低価格で発売されるのがその証拠である」としていた。少なくとも、アイスクリームサンドイッチ(アンドロイド4.0)の動作するタブレットをつくるという点では、Tegra3のコストは問題になるほどではないようだ。

NVIDIA TEGRA3

 今年登場するWindows8だが、同じTegraを使ってもアンドロイドとは、違ったハードウェアになるのだろうか? この点については、「最終的にはマイクロソフトが出す、動作条件に従うことになるが、Windows8でもアンドロイドでも同じTegra3が利用できる。実際、当社のリファレンスデザインで作成した開発用タブレットでは、アンドロイド4.0もWindows8も動作する」とのこと。つまり、Tegra3世代では、同じハードウェアでWindowsとアンドロイドのどちらかを選べる製品もつくることは可能なようだ。

ces2012まとめ

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