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世界一スパコン『京』の2.2倍の演算性能!! 富士通の次世代スパコン『PRIMEHPC FX10』

2011年11月07日 23時21分更新

 11月7日、富士通はスーパーコンピューター(スパコン)に関する説明会を開催。6月に世界一になった理化学研究所のスパコン『京』の互換モデルで、最大23.2ペタフロップス(1ペタフロップス=1000テラフロップス、毎秒2京3200兆回)の演算が実現できるスパコン『PRIMEHPC FX10』を発表した。出荷は2012年1月を予定している。

 また、富士通はエクサフロップス級の演算性能(1エクサフロップス=1000ペタフロップス)をもつスーパーコンピューターの開発を行なっていることも表明した。

『PRIMEHPC FX10』
世界一スパコン『京』の2.2倍の演算性能!! 富士通の次世代スパコン『PRIMEHPC FX10』

 写真は『マルチラックモデル』で、高さは約2.6メートル。筐体内にフルでボードを搭載すると重さは1トンにもおよぶ。この筐体を1024本連結し、23.2ペタフロップスの演算が可能な巨大なスパコンとなる。

 スパコン『京』と言えば、政府の行政刷新会議、いわゆる“事業仕分け”で一時は“予算計上見送りに近い縮減”とされて実現が危ぶまれた。その後、今年の6月20日は設置中の672本の筐体で8.162ペタフロップスを記録し、見事“世界一の演算性能”という栄誉を獲得した。さらに、8月末には全864本の筐体すべてが完成し、10.51ペタフロップスの演算性能を実現している。

『PRIMEHPC FX10』のスペック
世界一スパコン『京』の2.2倍の演算性能!! 富士通の次世代スパコン『PRIMEHPC FX10』

 『PRIMEHPC FX10』では、『京』に採用された富士通製CPU『SPARC64 VIIIfx』(128ギガフロップス)をさらに改良した『SPARC64 IXfx』(236.5ギガフロップス)を採用。『シングルラックモデル』では1.65GHz、『マルチラックモデル』では1.848GHz版が搭載される。従来の『SPARC64 VIIIfx』と比べ、『SPARC64 IXfx』では製造プロセス45nmの8コアから、40nmの16コア仕様となり、コア数が倍となった。消費電力は110W。

『PRIMEHPC FX10』に搭載されるボード
世界一スパコン『京』の2.2倍の演算性能!! 富士通の次世代スパコン『PRIMEHPC FX10』

 ひとつのボードには4ノード(1ノードは1CPUとメモリーのセット)搭載され、ノード間を結ぶインターコネクトは『京』と同じ『Tofu』を採用。CPUの冷却は水冷方式。110WクラスのCPUの場合、空冷でも動作はするが水冷式にすることで、CPUの温度を50~60度前後に保つことができ、空冷に比べて故障率を半分に減らすことができるという。実際に『京』では8万8128個のCPUが約30時間無故障で動き続けた実績がある。

OSはLinuxベース
世界一スパコン『京』の2.2倍の演算性能!! 富士通の次世代スパコン『PRIMEHPC FX10』

 搭載されるOSはLinuxをベースにカスタムしたもの。これに富士通独自のクラスタファイルシステム『FEFS』や運用管理ソフトウェア、開発環境を搭載する。

スパコンのこれから

 富士通は、国内はもちろん海外での販売を強化するとしており、2015年度には世界シェア10パーセント(現2パーセント)、売り上げ1000億円規模を見込む。

 事業仕分けでは「何に役立つのかわからない」と言われたスパコンだが、その用途は実は広い。例えば、気象分野では、大気の状態をシミュレーションして局地豪雨などの発生をより高い精度で予測できる。さらに津波の発生をシミュレーションすれば、波の高さや強さからどれだけの地域に被害がでるか予測することができ、防災にも役立てられる。

 ほかにもナノスケール材料の開発や新薬の開発といった分野でもまだまだスパコンによる計算を必要としており、スパコンは現在の科学技術を進歩させるための基礎とも言える存在である。

 すでに米国をはじめ、各国で次世代のエクサフロップス級演算性能を実現するスパコンの開発が進められている。今回の富士通による開発表明は、次世代のスパコンでも日本がトップに立てる可能性を示したことになる。

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