7月2日に行なわれた初音ミクの海外初のライブコンサート“MIKUNOPOLIS in Los Angeles”。熱狂のまま幕を閉じた。このライブに参加した人たちが、どんな思いでステージを見つめて、何を受け取ったのか。立場の違う12人がライブ終了後の思いを語ってくれた。
ノキアシアター前での一枚。クリプトンの伊藤博之社長(右から2番目)と、元2ちゃんねる管理人ひろゆき氏(右から4番目)がボーカロイドのコスプレイヤーたちに囲まれて並ぶという奇跡のシチュエーション。 |
●クリプトン・伊藤社長
ライブの直後、ノキアシアター前の広場でボカロファンに囲まれているところで話を聞くと、「世界はつながってます。空気みたいに、つながってますね。まだいろいろやることがあると思います。ミクだけじゃなくて、いろいろな意味で」と、感慨深げに語った。
●クリプトン・佐々木渉さん
初音ミクの開発者として4年間、国内、海外を駆け回ってきたクリプトン・フューチャーメディアの佐々木さん。
「中毒症状というか、初音ミクを通して『これって何だろう』といい意味でわからなくなっていく人々を見てきて、そのスパイラルの先に、今のフェーズがあるんだなって。ライブ自体は、瞬間瞬間でいろいろ感じましたが、リン・レンやルカが出たときの反応が、ミクの大筋の流れと違うアクセントになっていて、すごく考えさせられました。お客さんも結構フレンドリーな感じで、日本と身体感覚がそんなに変わらないのかなって。オタクかどうかって話じゃなくて、反応も、雰囲気も柔らかい感じがありました」と振り返っていた。
●ヤマハ・剣持秀紀さん
ヤマハの剣持さんは、ボーカロイドの父として知られる人物。同時期に開かれていたパリの“ジャパンエキスポ”に参加し、いったん日本に帰ってから、米国に飛ぶというハードスケジュールでライブに参加していた。
「私は何もやってないので」と謙遜しつつ、ライブへの感動を語っていた。「すごく感動したというか、ありがとうとしか言いようがないです。本当にいろいろな意味で、『ありがとう』なんですよ。みなさんがここまで育ててきたわけじゃないですか。だから、ありがとうとしか言いようがないです」
●週刊アスキー福岡総編集チョ
今回のライブを企画した福岡総編集チョは、目を潤ませながら手短に話す。
「ひと言しかないんですけど、『感無量』です。ほかに言いようがない。日本人でよかったなぁって。何だろうねこれ」
●小林オニキスさん
週アスでボーカロイドの連載を担当している、“サイハテ”の代表曲でしられるボーカロイドP。“サイハテ”がライブに使われただけでなく、実は裏方としても参加していたという。
「僕は現場スタッフ(映像マニピュレーター)でしたからね。だからまったく見てないんです(笑)。初音ミクの動きが止まらないように、映像と音をきちんと同期するようにひたすら監視するというお仕事をしていました。米国に来るまでは、どういう受け取られ方をするのか不安だったんですが、かなりウェルカムな感じで安心しました。『ミクー』という歓声から推測するに、ライブは日本で見るのと一緒で、アウェー感がなかったと思います」
●ハチさん、wowakaさん、タスクさん
“マトリョシカ”のハチさん、“裏表ラバーズ”のwowakaさん、“clock lock works”のビジュアルを手掛けた南方研究所のタスクさんというボーカロイドクリエイターもアニメエキスポに参加していた。現地時間の3日には、ミクノポリスの物販ブースでサイン会も実施。その現場にお邪魔して、米国のファンについて話を聞いた。
「海外に広まってるってことは嬉しいです」(ハチさん)
「いやぁ、アメリカにも並んでくれる人が居るってのはびっくりです。しかも、『曲聴いてます』という人もいて。ライブは、すごい技術でしたね。お客さんの反応が下手すると日本よりいいんじゃないかってぐらいで、熱狂にびっくりしました」(wowakaさん)
「こんなに聴いてる方が居るんだなあって、サインの列に並んでもらえてびっくりしました。誰が誰か分かってない人も多いんですが、それでも来てくれて、サインを書くと喜んでもらえるのはとても嬉しい」(タスクさん)
ボカロファンのサインに応じるタスクさん(左)とハチさん(右)。 |
●うたたPさん
ロサンゼルスに住むボーカロイドクリエイターも、ライブを見に来ていた。“ストラトスフィア”など、2007年からボカロトランス曲を投稿してきた“うたたP”もその一人。今回のライブでは、オープニングで彼のつくった“Project Diva desu.”のアレンジバージョンが流れていた。
「(Project Diva desu.は)各パーツの素材を渡しただけで、今日初めてアレンジを聴いたんです。感激でした。しかもアメリカで、まさか自分の近所であるロスでライブが行なわれるとは。すべてが驚きの体験でした。アメリカ人のウケもものすごくよかった。もちろん普通の人は知らないんですが、それでもこの前、ボーカロイドを一切知らない友人に日本でのライブのBlu-rayを見せたら、技術に感動して『小さい頃に見た夢が現実になっている』と驚いていました」
●DANCEROID
ニコニコ動画出身のダンスユニット、DANCEROIDのいとくとらさんと愛川こずえさんは、初音ミクの前座としてステージを盛り上げていた。その率直な感想を話してもらった。
「私は緊張していたんですが、踊り始めると楽しかったです」(愛川こずえさん)
「ぶっちゃけると時差ボケであまり緊張しなくて、ミクの前座ということで会場を盛り上げていかなきゃいけないということで頑張りました。ミクちゃんのライブを見るのが3回目なんですが、やっぱりかなわないですね。だって化粧崩れしないし、踊り完璧だし、ピッチはズレない。息も切れないし、着替も速い。本当にリスペクトです」(いとくとらさん)
5人組のDANCEROIDより、今回はいとくとらさん(左)と愛川こずえさんの2人が参加。 |
●ひろゆきさん
最後は、元2ちゃんねる管理人で、ニコニコ動画にも深く関わっているひろゆきさん。打ち上げ会場で見つけたので、酔っぱらってしゃっくりしている中、無理矢理インタビューに応じてもらった。何とノキアシアターの目の前まで来ていながら、ライブはニコニコ生放送で観るという、“ちょっと何言ってるかわからないです”な行動をしていたそうですが……。
「会場で見るより、オンラインの方が好きなんですよ。僕、目が悪いんで遠くて見えないですし、音だって会場ならスピーカーの真ん前になって聴き取りにくくなることもある。オンラインならアップにしてくれるから見やすいし、音だってオンラインのほうがいいでしょ。会場の盛り上がる雰囲気だけ知りつつ、ホテルでニコ生見てました。思った以上にアメリカ人のノリがよかったですね。動画のコメントももう少し引くかと思っていたけど、盛り上がってました」
みなさんそれぞれの感動を語ってくれましたが、筆者もいまだにライブの興奮がさめません。自腹切って来たかいがありました!
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