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【WWDC2011詳報 その2】アップル、9つの機能が統合された無料クラウドサービス『iCloud』を秋に提供開始!

2011年06月08日 18時28分更新

 6月6日(現地時間)に開催されたWWDC2011基調講演の前半は次期Mac OS X Lion(ライオン)とiOS 5の話で盛り上がったが、後半も盛り沢山の内容だった。以下、アップルが公開している基調講演の動画を元にお届けする。

 残り時間40分の頃、壇上にスティーブ・ジョブズCEOが再び登場し、新しいウェブサービス『iCloud』について説明を始めた。

「私たちは、10年前にMacを中心にiPodやビデオカメラといった家電を接続する“デジタルハブ”構想を打ち出しました。現在は、以前とは状況が大きく異なります。音楽だけでなく、写真、動画などさまざまなデータを扱ううえに、一人で複数のデバイスを使うのも当たり前。そんななか、デバイスをいちいちパソコンに接続して同期するのは大変です! そこで、PCやMacもデバイスのひとつと考え、中心にクラウドを置くことにしました。すべてのデバイスが通信機能を持っているので、好きなときにクラウドとデータを直接やり取りできるのです」

 iCloudは、Mac OS X LionやiOS 5と密接に連携して動作するウェブサービスで、iPhoneやiPadのデータをサーバーにワイヤレスでバックアップし、新しいデータをデバイスにプッシュ配信する。すべて自動で行われるので、ユーザーは特に操作を覚える必要はない。

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↑iCloudを構成する9つの機能。上段左から、(1)連絡先、(2)カレンダー、(3)メール。中段左から(4)App Store、(5)iBooks、(6)Backup。下段左から(7)Documents in the Cloud、(8)Photo Stream、(9)iTunes in the cloud。
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↑iCloudによるデータの同期は自動。ユーザーは何も操作する必要がなく、「ただ動作する(It just works)」ことを強調するジョブズCEO。

 

 あれ、アップルは以前から『MobileMe』という似たようなサービスをやっていたのでは? と多くの聴衆が抱いた疑問に答えるかのように、
「MobileMeは我々の作った最善のものではなかったが、たくさんのことを学んだ」とジョブズCEOがぶっちゃけたときには、10年来MobileMe(とその前身であるmac.com)の会費を払い続けてきた熱心なユーザーたちは凍り付いただろう(自分もその一人だ!)
 MobileMeの中心機能は(1)連絡先(2)カレンダー(3)メールだが、これらはiCloudアプリとして作り替えられる。そしてMobileMeのときは年間99ドルの有料サービスだったが、iCloudでは無料になるのが大きな違いだ。この知らせに、会場からは大きな拍手が沸き上がった。

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↑プッシュ対応なので、iPhoneで連絡先や予定を追加すると、iPadにもMac/PCの住所録やカレンダーにも自動で現れる。iCloudでは、カレンダー共有機能も追加される予定。
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↑iCloudのメールアカウントは、@me.comになる。mobileMeと同様、新着メールはプッシュ配信される。「無料で使えるが、広告は表示しません」とジョブズCEO。



購入したアプリや書籍、データをワイヤレスでクラウドに保存

 iCloudの機能をさらに見ていこう。(4)App Storeは、App Storeでダウンロードしたアプリを一覧表示し、一度購入したアプリはパソコンを経由しなくても、クラウドからインストールできる新機能だ。将来別のデバイスを追加したときも、過去に購入したアプリをクラウドからインストールできる。この機能は本日からユーザーに提供開始で、iOS 4.3以上のデバイスで利用できる。

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↑iOS 4.3以上のiPhoneやiPadで“App Store”を開くと、iPhoneの場合は“Updates”欄、iPadの場合は“Purchased”欄に購入したアプリ一覧を表示。

 

 (5)iBooksは、本やブックマークをクラウドを介して複数デバイスで同期するようになる。iPadで読みかけた本の続きをiPhoneで読む、といったことが簡単にできる。
 (6)Backupは、ワイヤレスでデータのバックアップを自動的に行なう機能で、これはWi-Fi接続が必要。通常は1日1回コンテンツをクラウドにアップロードする。

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↑iCloudにバックアップされる内容は“iTunes Storeで購入した音楽、アプリ、本”、“カメラロール(デバイスで撮影した写真とビデオ)”、“各種設定”、“アプリ内のデータ”。

 

iOSデバイス間で、書類や写真もワイヤレスで自動同期!

 次に紹介していく3つの新機能が、「iCloudのもっとも革新的な部分」(ジョブズCEO)。(7)Documents in the Cloudは、iPhoneやiPadで作成した書類をクラウドサーバーに送り、そこからすべてのデバイスにプッシュする機能。すべて自動的に行われるので、ユーザーは何も操作する必要がない。アップルの開発した文書作成アプリ『Pages』、プレゼン作成アプリ『Keynote』、表計算アプリ『Numbers』は、先週アップデートしたバージョンにすでにその機能が備わっている。ジョブズCEOは、「Macは簡単に使えるとはいえ、初心者にとってファイル管理は難しい。iOSデバイスではファイル管理の煩わしさから解放されます」と語っている。
 開発者向けに、iCloud Storage APIも提供するので、サードパーティー製のアプリがiCloudを利用してデータを複数デバイスで自動同期することも可能だ。このAPIは、iOSデバイスに加え、MacとPCでも利用できる。

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↑iPhoneとiPad間で、『Pages』や『Keynote』で作成した書類が自動同期するデモ。


 続いて、ジョブズCEOが「たぶん私がもっとも好きな機能です」と紹介したのが、(8)Photo Stream。iPhoneで撮影した写真をiPadで見たいとき、今まではパソコンに接続して同期したりと、いろいろ面倒だったのが、クラウドを経由することで自動&簡単に。iPhoneで撮影した写真が、即座にiPadに現れる様子をデモした。写真の同期は、MacやPC、Apple TVでも利用可能だ。

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↑iPhoneやiPadの“写真”アプリに、Photo Streamという項目が加わり、同じアップルIDで登録した複数デバイス間で写真や動画の共有が可能に。
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↑iPadやiPhoneでは、無制限に写真を読み込むとあふれてしまうので、最新1000枚の写真を同期(Mac/PCではすべての写真をダウンロード)。ずっとデバイスに保存しておきたい写真は、アルバムに入れておけばいい。サーバーには30日間ファイルを保存する。

 

 iTunesで購入した楽曲を、ワイヤレスで複数デバイスに同期できるのが、(9)iTunes in the cloudだ。追加料金なしで、最大10台の機器に購入した曲をダウンロードできる。新しく買った曲がプッシュで各デバイスに送られる“Automatic download”というオプションもある。

 iCloudを利用するには、Mac OS X LionまたはiOS 5を搭載する機器が必要で、写真や音楽を除いて5GBの領域が無料で使える。開発者には、基調講演当日からiCloudのβ版を公開した。ユーザーには、iCloudの機能のひとつである“iTunes in the cloud”が公開された(iOS4.3ユーザー向け)。iCloudサービスは、iOS5の登場と同時にこの秋開始予定だ。

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↑iPhoneやiPadを購入したら、今まではパソコンに接続してアクティベーションをする必要があった。iOS 5とiCloudの組み合わせでは、パソコンにまったく接続しなくても、iPhoneやiPadを使うことができる。

 

「ワン・モア・シング」は、曲のクラウド同期『iTunes Match service』

 ジョブズCEOの基調講演は、最後に「ワン・モア・シング」と目玉機能を披露することが多い。今回の隠し玉は、『iTunes Match service』だ。iTunes Storeで購入した曲は、iCloudでクラウドを介して複数デバイス間で自動同期できるが、CDから自分で取り込んだ曲はそうはいかない。Wi-FiまたはUSBケーブルでパソコンから転送できるとはいえ、クラウド経由に比べると面倒だ。
 そこで年間24.99ドルの有料サービス『iTunes Match service』の出番になる。これはユーザーのiTunesライブラリー内の楽曲データを、iTunes Storeで売っている曲のライブラリーとつきあわせて、同じ曲の場合はiTunes Storeで購入したと見なす。そして新しいデバイスにはクラウドからダウンロードしてインストールできる機能だ。iTunes Storeにない曲だけ、クラウドに新規アップロードするので、アップロードにかかる時間を短縮できる。iTunes Storeにある曲は、ビットレート256KbpsでDRMフリーの曲ファイルと置き換わる。昔リッピングした曲は音質が悪くて不満、という人にはこれだけでもお金を払う価値があるだろう。なお、このサービスが利用できるのは、現時点では米国のみだ。

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↑iTunes Storeで売られている1800万曲のデータベースとマッチングすることでムダなアップロードを省き、短時間で楽曲ライブラリーをクラウドに保存できる『iTunes Match service』。
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↑米Amazonや米Googleも、楽曲ファイルをクラウド経由で同期するサービスを打ち出しているが、アップルのiTunes Matchは価格がアマゾンより安く(グーグルは価格未定)、iTunesというアプリがあり、ライブラリーをクラウドにアップロードする時間が短く済む(iTunes Storeにある曲はアップロードしないため)のが特徴。
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↑米ノースカロライナ州に建設された巨大なデータセンター。屋根の上に小さく見える、ゴマ粒のようなのが人。このデータセンターに、アップルは5億ドル(約400億円)以上投資したという。

 

既存のMobileMe会員はどうなるの?

 現在MobileMeの有料会員である場合、2012年6月30日までは追加料金なしで自動的に延長され、利用できる。それ以降はサービスが終了する。MobileMeのメールアドレス(@mac.comおよび@me.com)は、iCloudにそのまま引き継ぎ可能だ。ただし今秋に提供開始予定のiCloudは、“iOS 5およびOS X Lionのユーザーに無料で提供される”という記述があるため、古いOSのユーザーの場合はどうなるのか不明。また、オンラインストレージの『iDisk』(メールと合わせて20GB)がどうなるかについての言及もいまのところない。
 なお、アドレス帳、カレンダー、ブックマークといったMobileMeの機能はiCloudでも利用できる。
 詳しくは、アップルの「MobileMe の移行に関する情報」を参照のこと。

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