週刊アスキー5月3日号(4月19日発売)の特集記事『素材で極める最高級マウスパッド』(92~95ページ)に掲載したものを再構成したものです。詳しくは本誌をご覧ください。
日本製に徹底的にこだわり、日本のプロゲーマーに支持を受けるグロウアップジャパンに、最新マウスパッド『KAI.g3 紫電』を制作したきっかけや作成時の苦労、マウスパッドにかける情熱を聞いた。【前編はコチラ】
「素材メーカーがびっくりしてました。
マウスパッドに使うのは初めてですって。
そんなもんに使って合うんですか?って(笑)」
うちのマウスパッドの裏側に貼ってある防滑材。これは半導体をつくるプロセスで使われてる材料です。ウエハーを研磨するとき、軽いから動いてしまうのを止めるための素材。だから、粘着でも何でもないのに、上にものを乗せて斜めにしても絶対落ちないですよ。……でも、ものすごく高いんです、これ。今は、専用に開発した防滑ラバーに変えましたが。
真ん中の発泡体、これも一般のマウスパッドに使われている中間層に比べると原価のケタが違うんです。極めて微細な泡がキレイに並んでる。だから表面が平滑で、どこを押しても反発弾性が同じになります。これは液晶テレビや、携帯電話、iPadで振動を抑えるために使われている素材ですから、寸法精度も高い。メーカーがびっくりしてました。マウスパッドに使うのは初めてですって。そんなもんに使って合うんですか?って(笑)
また、織物っていうのは端がほつれるので、毛焼きと呼ばれる、エッジを炎で均等にあぶる処置をほどこすんですね。そうすると軽く溶融してほつれ止めになる。ところが溶けたところが固くなるから、そうなると今度は手、腕がこすれて痛い。だからものすごく目の細かい特殊なベルトサンダーみたいなもので軽くエッジをこう……丸めるんです。マウスパッド1枚1枚エッジを丸めてる。ほかにもっと良い方法があるんですが、そのための機械が高すぎて、今は無理。
それから、『紫電』は布の上にガラス素材がコーティングされてるから、型を抜くときに直線にキレイに抜けなくて、エッジがちょっとざらつくんですよ。そうすると使う人が痛いじゃないですか、やっぱり。だからそれも削ります。(滑走面も)研磨してあげないとダメ。1枚1枚時間をかけて細かく作業すればするほど、お金がかかるし、難しいんだけれども、こういう手間は絶対に私は惜しみたくない。でも、誰もそんなところ気付かないんだけどね。
「いいものつくるときはコストなんて考えてません。
これはもう、"マウスパッド道"です、ほとんど(笑)」
でも現実としては量産された海外製が売れる。私たちの製品が性能的に劣るんだったらわかります。でも、実際に勝っているプロゲーマーもいるし、素材や工程など、あらゆる面で優れている日本製なんです。
メイドインジャパンと、有名メーカーのメイドインチャイナのマウスパッドとはなにが違うのか。1枚1枚大事につくって売るか、マーケティングによる販売を原則とした大量生産か、根本的にモノをつくる哲学が違うんですよ。
こないだ日系アメリカ人の若い人に「どうして日本でつくるんですか?」と訊かれて、「私が日本人だから。ほかに理由がありますか?」と答えました。ものづくりにプライドがある、それだけです。ほかに理由なんてないんです。いいものつくるときはコストなんて考えてません。つくったあとにコストダウンしていけばいい。こういう、勝つためのギアは安きゃいいってもんじゃないから。もちろん、リーズナブルな価格にする努力は続けていきますが、製品はかけたコストに合ったものしかできません。
これはもう、"マウスパッド道"ですよ、ほとんど。必死。寝ても覚めても考えていて、目に付いたものを触ってみて、どうかなこれ、何かに使えないかな? とかね。
哲学とかコンセプトとか定義は、それぞれあってもいいと思う。そのなかで普遍的なものは共通言語になるだろうし、そうじゃないものはそれぞれのメーカーの特性として評価されるだろうし。そもそもゲーミングマウスパッドはなんなのかってとこから行かないと、どんなものつくっていいのか、最終的な目標はどこにあるのかもわからない。そういうものの設定なしに製品つくって、いったいその製品って何なのかという話ですから。
「パッケージの時計のマークは、
"止まった時計を進めよう"って意味なんです。
私は、マウスパッドは完全に停滞しちゃってると思ってますから」
ゲームユーザーの競技レベルが上がって、ギアが進歩するし、ギアが進歩して、競技レベルも上がっていく。道具の性能が上がれば、それにあわせて自分のやり方も変えていく。あらゆる競技がそうなってきたわけです。陸上競技のランナーも、フォームが昔と違うし、シューズも違う。今までと使い心地が違うから使うのやめるんじゃなく、それを乗り越えて技術が上がるんじゃないですか。で、技術が上がってくると、その道具じゃもの足りなくなってくるから「勝つために、もっとこういうマウスパッドが欲しい」となる。そこでまた新しい道具をつくるわけです。その相乗効果でどんどん進化していく。ところがゲーミングマウスパッドの時計は止まっちゃってるんですね。
パッケージの時計のマークは「止まった時計を進めよう」って意味なんです。マウスパッドは完全に停滞しちゃってるから。だから我々が時計進めてやろうじゃないって。そういう意気込みなんです。
(代表の熱いトークはさらにつづきます。後編もお楽しみに)
●KAI.g3 紫電
グロウアップ・ジャパン
価格 2880円(S)、3380円(M)、4380円(L)
サイズ:250x210mm(S)、320x250mm(M)、420x330mm(L)
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