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2010下半期ネット事件簿ロングインタビュー その1:『エルシャダイ』ディレクター竹安氏

2010年12月28日 21時56分更新

  週刊アスキー 813号特集『2010下半期ネット事件簿』でインタビューに応えてくれたPS3/Xbox 360用ゲーム『El Shaddai - エルシャダイ -』ディレクター竹安氏のロングインタビューを掲載!

20101228エルシャダイ

 「大丈夫だ、問題ない」はトラップなんです

 「大丈夫だ、問題ない」というフレーズは、4年くらい前に考えました。ヒットマンガには名言があってエルシャダイにも、そういうのが欲しかったんです。ゲームはまだまだエンターテインメントとしてレベルが低いなと思っていて、まだ技術力ですごいと言われているだけで、演出の見せ方であったりとか、キャラクターの配置などエンターテインメントとしてみたときにボクは個人的にはまだまだと思っているんです。ハリウッド映画だとか、大河ドラマとか、最近のお笑いブームとか、あのクオリティーを観ているとすごいなと思って、他のエンターテインメントの高いクオリティーまでゲームを持って行きたいと思っています。そのひとつにあったのが「決めゼリフ」だったんです。うちのゲームは主人公がしゃべらないんですよ。「大丈夫だ、問題ない」しか言わない。RPGではキャラクターに自分の名前を付けたりしますが、自分が冒険できる、これがゲームの強みだと思っています。それを生かしたいと思ったので、主人公はしゃべらせない。

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  逆に、そこでひと言だけしゃべったら、すごく印象が強くなる。パンチのある言葉であることが大事。そして、ボクが絶対に入れたかった要素が“ポジティブな言葉”なんです。たとえば、その時代に言えないようなセリフを主人公に言わせなければいけない。今の時代はすごく不安定じゃないですか、不安定を楽しんでいるくらいまで行ってしまっていて、もうまさに「大丈夫か?」という時代。それをポジティブに終わらせたくて、「問題ない」と付けた。また、2つのフレーズをつなげるのが大事だと思っていて1フレーズだと、決めゼリフとして良い言葉でも日常では使われにくいんですよ。つい使ってしまう、「大丈夫だ、問題ない」にはそんなトラップが仕掛けられています。

 たくさんの動画はうれしかった

 盛り上がってくれれば良いなと思ってましたが、動画がここまで流行るとは思っていませんでした。エンターテイメントの基本として、主人公が自信満々に戦いに行って、挫折することによって本当の力を手に入れる。それを1分半で見せようとあの動画をつくりました。あと、ちょっと人がバカにできるものがいいなと、“そうじゃないけど、でもわかるよ”って気持ちになる。そういうのを大事にしたかった。そこがウケてくれたのかな。たくさんの動画が出て、こういう経験はなかなか無いので社内でもどうしようかと物議を醸しましたが、ボクは好きにやればいいと思ったんですよね。彼らは遊んでいるのだから、それがエンターテインメントの基本です。遊んでナンボだと思っていますので。正直、うれしかった。

 もちろん色々動画は観ましたよ。色々なコンテンツを観てボクも勉強させてもらってますよ。あと実写のエルシャダイあるじゃないですか。アレはすごかった。ボクはああいうのを観るとときめいてしまいます。イーノックがゴリ顔になったら、途中ゴリラみたいな奴にキャラ変えて、芸が細かいなーと。あとは女性が盛り上がってくれたのがうれしいです。エンターテインメントは女性がきてくれたほうがいいです。

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エルシャダイから逃げられなくなります

 ゲームは自信をもってお届けできます。人に寄ってはもうかわりがきかなくなるくらいに。もうずるいよってくらいな、触り心地なんで。簡単操作をすごく売りにしています。ボタンをたくさん使うゲームのような華麗なアクションを繰り出せます。インターフェースが画面にないので、覚えることがないんです。ダメージを受けると鎧がどんどん無くなっていくので、プレーヤーキャラを見ればダメージの度合いがわかります。これは僕らの世代なら、すぐピンと来ますよね。そんなロマンを盛り込んでいます。でも、パンツ一丁はちょっと格好悪いので、ジーンズにしました。ジーンズをはかせた理由もちゃんと設定をつくっています。ゲームは旧約聖書を舞台にしているので、古い服もよく調べました。聖書をテーマにした映画など、服装がすごく良いとは思いますが、主人公に大事なのはユーザーとの共感性だと。親近感がないと入っていけない。設定は聖書に乗っ取ってやっているのに、ジーンズをはいていることによって、「あれ、オレと同じ格好してるじゃん」という気持ちになります。日常生活を絶対に入れたかった。だからケータイを持っている。だけど、それに裏付けがないと、設定が浅いものだとバカにされてしまう。そんなのは嘘だとなってしまうんです。

 天使の設定の中に、すごく良いものがあって、天使はどんな次元にでも、どんな時でも自由に現われる。天使は高次元の存在なので、ボクたちの時間軸であったりとか存在感とかそういうものに束縛されていない。その設定を引用して、時間を自由に移動している天使がひとりいる。それがルシフェル。彼は神が“光あれ”としたときから、アダムとイブの時代、現代、これから先の時代まで全部見ているんです。その中で、人間はどうだったのかとしたときに「2010年くらいが一番良かったよ」という、ボクたちに対するリスペクトでボクらの時代の物を使っている。神と交信するときも、何か良い方法がないかと考え、ケータイを薦めるんです。いやテレパシーでいけるだろって、でもコレがいいんです。ジーンズも時代を考えたらイーノックが戦いに出るときにヒモと布を巻いているだけだとおモンですが、ルシフェルが一番良い服はこれだよとプレゼントしたんです。こういう設定は思いつきだけではダメで、ちゃんと理詰めでしっかり裏付けないといけないんです。そうすると、エルシャダイから逃げられなくなるんですよ。ボク、コンビニで傘買うのをためらうようになりましたモノ。春にしっかり発売したいです。絶対におもしろいので、待っていてください。

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 PS3/X box360
El Shaddai - エルシャダイ -
●イグニッション・エンターテイメント
●http://elshaddai.jp/
●価格未定
●'11年春発売予定

(C)2011 Ignition Entertainment Ltd. All Rights Reserved.

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