日本のスマートフォン市場が活気を帯びてきた。
これまで他社から大きく出遅れていたauが満を持して投入してきたのが、シャープが開発した『IS03』。一方、すでにXperiaが約50万台に届こうとしているドコモが、ようやく発売にこぎ着けたのがサムスンの『GALAXY S』だ。両社が秋冬商戦の目玉として投入するスマートフォンがCEATEC2010開幕に合わせるかたちで発表となった。
↑CEATEC会場で両社ブースは向かい合い、スマホ合戦を展開。
auが投入するIS03は、徹底して“日本”にこだわったスマートフォンだ。既存のケータイユーザーが必要とする赤外線、ワンセグ、おサイフケータイ、さらには緊急地震速報にも対応。これまでスマートフォンは欲しかったが2台も持ちたくないというユーザー層を狙う。アップルのiPhoneが逆立ちをしても搭載するとは思えない日本独自の技術を盛り込むことで、スマートフォン後発キャリアであるauは、イメージキャラクターのウサイン・ボルトのように一気に他社を追い上げたい構えだ。
Android OSは2.1で、最新版2.2の搭載までには至らなかったことに関して、KDDIの田中孝司執行役員専務は「多くのユーザーはOSのバージョンはさほど気にしていない。それよりも使える機能を盛り込むことを優先した」と語る。
ITリテラシーが高く、デジタル機器が大好きで、すでに何台もスマートフォンを購入しているユーザーからすると少々物足りないかも知れない。しかし、一般的な普通のユーザーからすれば、2.1と2.2の差はあまり感じないとも考えられる。
一方、スマホマニアも思わず機種変更を考えたくなる端末がドコモのGALAXY Sだ。搭載するAndroid OSはバージョン2.2の最新版。さらにサムスン独自のユーザーインターフェースを導入。操作性はかなりiPhoneを意識したつくりになっており、iPhoneユーザーでも違和感無く使えるのが特長だ。
GALAXY Sを触って、迷わず「いいな。欲しいかも」と思うのはソニー・エリクソンのXperiaユーザーかも知れない。サクサクと反応する操作性は、Xperiaと比較にならないほど快適だ。
サムスン自慢の“スーパーAMOLED”ディスプレーは本当に色鮮やかで美しい。このビビッドな発色は液晶には出せない。特に美しさを実感できるのが動画を視聴しているとき。クオリティーの高い動画を持ち歩いて見たいと思わせるほどの鮮やかさだ。
一方でスマートフォンファンをがっかりさせたのが、テザリング※に非対応という点。Android OS 2.2では標準的にテザリングが使えるようになっており、海外版のGALAXY Sでは当然のように対応していた。しかし、ドコモから発売されるGALAXY Sでデザイングは使えない。仮に上限である1万395円になっても、ポケットWiFiルーター代わりにGALAXY Sを使えるようにしてほしかったものだ。
※モバイル端末をダイヤルアップルーターとして用い、PCやゲーム機などをネット接続する機能。
GALAXY Tabは利用料金面でiPad対抗としては不利
もうひとつ、気になる存在が、GALAXY Sの兄弟とも言えるタブレット端末『GALAXY Tab』だ。7インチの大型タッチパネル液晶を搭載し、重量は382グラム。Android OS 2.2により、Flash Player 10.1が使え、カメラ搭載、音声通話もできる。
実際に触ってみたが、大きさは何とも絶妙だ。背広に胸ポケットにもなんとか入り、持ち運びもしやすい(ちょっと分厚い気もするが)。iPadは持ち歩きと言うよりも自宅のリビングやベッドの上で使う“おうちタブレット”になりつつあるが、GALAXY Tabは持っていってもいいギリギリのサイズ感を狙っているように思う。両手で持つと文字も打ちやすいという幅になっているのも見逃せないポイントだ。
ただ、ドコモに頑張ってほしかったのは通信料金の面。音声通話機能がついているため、料金プランはほかのスマートフォンと同じ設定になってしまう。実際、電話として実用的かというと、かなり微妙。スピーカーで相手の声を聞くか、イヤホンもしくはブルートゥースヘッドセットを併用しなくてはならない。多くのユーザーがデータ専用端末として使うはずだ。
ドコモが提供するPC向けのデータ定額制料金を流用して、データ専用としても使えるようにはなっている。しかし、ソフトバンクが提供するiPad向けの料金と比べるとかなり割高となる。ドコモがサムスンの両端末でiPhone、iPadに勝負を挑むのなら、料金面での施策も何かしら打ったほうがいいだろう。
いま買ったらもれなく負け組に!?
さて、auのIS03、ドコモのGALAXYシリーズは果たして“買い”と言い切れるか? 現段階では「もうちょっと待ってみようよ」というのが正直なところ。auから10月18日開催予定の新製品発表会の案内も届いている。一方、ドコモも11月には新製品発表会を行なう予定だ。auの海外スマートフォン導入もあり得るし、ドコモも赤外線やおサイフケータイに対応したスマートフォン投入を示唆している。
とりあえず、この秋から来年の春にかけて登場するスマートフォンのラインナップをすべてチェックしてから行動しても遅くはないだろう。
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