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横浜ガジェットまつりで開催したパネルディスカッション

eスポーツ市場で成功させるための秘訣とは

2019年12月06日 06時00分更新

 10月17日、横浜ガジェットまつり2019のイベントの1つとして開催された「第27回横浜ITクラスター交流会」が、京セラみなとみらいリサーチセンターにて行なわれた。

 横浜ITクラスター交流会とは、横浜経済の発展を目的に新横浜地区で活動を行なってきた「横浜ITクラスター交流会」を発展的に解消し、2013年に民間有志が横浜市経済局や横浜企業経営支援財団と連携し設立した任意団体。年4回の交流会の企画運営を起こっており、新横浜時代から数えると16年間で67回にも上る。

「横浜ITクラスター交流会」の吉川淳一郎委員長

 今回のテーマは「先端技術・デバイスが変えるeスポーツの未来」と題したパネルディスカッションで、モデレーターは当編集部のガチ鈴木が務めている。ラグビーワールドカップの興奮がまだ冷めやらないが、来年はオリンピックも控えており、スポーツ熱が盛り上がっていくだろう。

 そんななか、新たなスポーツとして注目されているのが「eスポーツ」だ。海外ではすでに大規模なeスポーツ市場が確立されており、国際大会では数億円規模の賞金が用意されている。その波がようやく日本にも波及しはじめており、今年の第74回国民体育大会“いきいき茨城ゆめ国体”の文化プログラムとして「全国都道府県対抗eスポーツ選手権 2019 IBARAKI」が開催。これから徐々に普及することが予想され、どんどん大きなビジネスになってプレイヤーが増えていけば、パラダイムシフトが起きると考えられている。

eスポーツの市場感と世界の動向

デロイト トーマツ グループにおいてeスポーツに関する市場分析やコンサルティングを手掛ける金田明憲氏

 まずは、デロイト トーマツ グループにおいてeスポーツに関する市場分析やコンサルティングを手掛ける金田明憲氏が登壇し、eスポーツの市場感と世界の動向について語られた。

 eスポーツとはテレビゲーム等を用いたスポーツである。たとえば、サッカーやバスケットボールというスポーツは、それぞれの競技が持つルールのなかでお互い競い合うもの。eスポーツも同様で、ゲームのなかのルールに従ってお互いが競い合う。主にデジタル空間で戦うという点は従来のスポーツと異なるが、ルールに則って競い、楽しむという点で、スポーツの一つと捉えることができる。

 日本と世界とでは、市場における人気のタイトルが異なっている。日本ではアーケードゲームやコンソールゲームでの格闘ゲームやスポーツを題材にしたゲームが中心である。昨今では、モバイルゲームでのパズルゲーム等が人気である。一方世界では、MOBA(Multiplayer Online Battle Arena)と呼ばれるチーム制の陣取りゲームのようなものや、FPS(First Person Shooter)やTPS(Third Person Shooter)といったシューティングゲーム、また、RTS(Real Time Strategy)などの戦略ゲームが人気であり、PCを使ってプレイするのが一般的だ。

 なぜ、このような違いが生まれたかというと、日本はコンソールゲーム市場が大きく、ゲームを始めるきっかけが、コンソールゲームであることが多いためである。また昨今のモバイルゲーム市場の拡大も影響している。これに対して海外では、インターネットのブロードバンド化と並行してコンピューターゲームの市場が拡大し、2000年代前半にはすでにeスポーツという言葉が使われ始めたなど、ゲームのプレイ環境が異なっていたことが背景にあるためだ。

 2019年における世界のeスポーツ市場規模は、10億9600万ドル(約1200億円)規模と言われている。ただし、これはeスポーツを興行として捉えた場合であり、一つの側面に過ぎない。加えて、eスポーツの周辺には巨大なゲーム産業やウェルネス産業などが近接しており、今後のさまざまな広がりが期待できるため、多くの人が興味を抱いていると言える。

 一方、日本のeスポーツ市場規模は2018年において約48.3億円とされる。2017年の約13倍に急成長している点は注目に値する。また、スポンサー収入が75.9%も占めていることについても触れたい。eスポーツのプレイヤーやファン層には若年層が多いと言われており、多くの企業がそれらの層にアプローチすることを狙ってスポンサーとなっていると考えられる。今後、市場の成長に伴い拡大した収益が、選手の育成やプレイ環境の整備等に再配分される循環が生まれてくることで、市場全体がこれまで以上に盛り上がっていくものと考えられる。

世界のeスポーツ市場の規模と日本の市場規模。スポンサー収入の占める割合が大きい

 eスポーツが注目されている背景として考えられることは何か。ひとつは、eスポーツの持つボーダーレスという特性が挙げられる。老若男女や障がいの有無、国籍を問わず対戦できる。特に、先ほど述べたように若年層において支持されている点は大きいと言える。また、オンラインで遠く離れた選手同士が一緒にプレイできることに加え、会場設定の自由度が高くコストも抑えられるといった特徴もある。加えてeスポーツでは、VR・ARといった映像技術や、センサーテクノロジー、高度な情報処理など、最先端の技術が利用されることが多いため、それらをアピールする場にもなること。そして、娯楽だけにとどまらず教育や健康、福祉といった社会的な活動にも結びつくと考えられている点だ。

 もちろん、これから取り組んでいくべき論点もある。今年開催されたいきいき茨城ゆめ国体の文化プログラムとして採用され認知度が向上しているが、一方で、ゲームへの依存を心配する声があることや普及において個人がeスポーツを始める際に機器を購入するなど、従来のスポーツと比較して、一定の投資が必要である点などである。

eスポーツを興行中心に捉えた場合、取り巻くステークホルダーは基本的に従来のスポーツと同様であるもの、パブリッシャー(ゲームタイトル販売会社など)の存在が異なる点と言える

 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)は昨年より「eJ.LEAGUE」を開催し、eスポーツの発展だけでなく、リアルなJリーグのファン拡大や接点強化を図っている。これまでスタジアムに足を運ぶことのなった層がeスポーツを通じてJリーグへの興味関心を抱き、スタジアムに来場するきっかけとなることを期待しており、ファンの裾野を広めるための施策とも言われている。

 また、日本野球機構(NPB)もeスポーツ大会を開催しているが、その一つとして「スプラトゥーン2」というタイトルを用いている点は興味深い。野球にとどまらないスポーツ文化全体の発展を目指し、より幅広い層との接点を持ち、野球に興味を持ってもらうきっかけとすることを目的に、野球ゲームだけではないタイトルを活用している。

 最後に金田氏は「ここまで述べた話は、あくまで市場の概観です。eスポーツをより詳しく捉えようとすると、まだまだ整備が必要な部分も多く、言い換えれば、様々な可能性を秘めていると言えます。従来のスポーツでは当たり前かもしれませんが、たとえば、選手やチームの過去戦績の正当性を担保する仕組みや、プレイする環境や仲間を探す方法など、デジタル特有の課題が少なくありません。その為、今後の事業機会や市場規模の拡大を期待し、多くの企業が注目している市場だとご理解いただきたい」と語った。

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