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船井総研のkintoneビジネスはガールズトーク発

経営コンサル発のkintone業務パッケージはこうして生まれた

「戻ってきたら、kintoneビジネスやります!」

大谷:なるほど。では、船井総研としては経営コンサルティングに加えて、kintoneの提案もするようになっているんですね。

神徳:いいえ。別府さんたちとkintoneに取り組み始めたのは、2016年からですが、その当時は船井総研もサイボウズのパートナーではなかったので、kintone自体が会社としてビジネスになっているわけではなかったんです。「サイボウズさんに弁護士向けのパッケージを作ってもらったんで、どうぞ!」みたいな感じで、単純にサイボウズさんに案件を振るという役割。勉強会の後にはお問い合わせも来たのですが、そのまま別府さんにパスしていました(笑)。

別府:はい。神徳さんから「弁護士さんのkintone案件来たので、別府さんお願いします!」とお願いされ、私が全国行脚するという感じでした(笑)。最初は船井総研さんのクライアント企業をお客様として紹介していただき、別のお客様にも派生していった感じです。

「別府さんお願いします!」とお願いされ、私が全国行脚するという感じでした(笑)」(別府)

神徳:とはいえ、別府さんと取り組んでいく中で、kintoneは弁護士だけではなく、士業にいけるというのがわかりました。でも、当時の私はあくまで弁護士向けの経営コンサルタントだったので、リーチできるのは弁護士だけでした。でも、別府さんは「えっ、もうそんなに?」とびっくりするスピードで士業の方にkintone展開していました。

別府:確かに税理士や社労士に向けて営業活動しましたが、ベースを作ってくれたのはやっぱり神徳さんです。訪問して、ヒアリングした課題を神徳さんにもフィードバックし、いただいた意見を提案に盛り込んでということを2年間積み重ねました。

大谷:なるほど。kintoneでも士業向けのパッケージが「勝ちパターン」になってきたんですね。

神徳:とはいえ、船井総研はグループ全体で業種・テーマ別に170を超える経営者向けの勉強会の場を持っており、現在7000名以上の中小企業の経営者様に参加していただいております。もちろん、この170すべてをカバーするのは難しいかもしれませんが、士業だけではなく他の業界にもkintoneパッケージを作っていくことが可能だと思っています。顧客管理、案件管理、進捗管理、経営指標管理に課題を持つ会社って非常に多いですしね。

弊社の業種別コンサルティングに合わせ、そこに業務効率化にもなるkintoneパッケージを追加できれば、多くの企業にkintoneのメリットを最大限に届けることができます。これは船井総研でコンサル経験を積み、産休から復帰してコンサルタントとしての働き方を変えざるを得ない私だからこそできる!と思い、これをビジネスとしてやりたいという新規事業計画を経営陣に出したのですが、当時は却下でした。理由は単純で、私が2人目の産休に入る2か月前に提案したからです。「プランと意気込みは分かったけど、神徳さんがいない間、誰がやるの?」という話です(笑)。

大谷:そういう意味では、「却下」というより「保留」だったのかもしれませんね。

別府:こうして「戻ってきたら、kintoneビジネスやります!」と言い残して、神徳さんは産休に入りました(笑)。その後、2018年4月に復帰して、船井総研でのkintoneビジネスを宣言どおり立ち上げたんです。

神徳:はい。だから現在の立ち位置としては、船井総研の中で新規事業を立ちあげた責任者という立場です。2018年はそれこそ1人でやっていたのですが、6月に司法書士様向けと9月に土地家屋調査士様向けのkintoneを作り、20社に導入いただきました。2019年1月からは開発とサポートをしてくれるメンバーにジョインしてもらい、4月にはカスタマーサクセスをするメンバーも入って来てくれ、現在4名でやっています。

業界用語を入れるとみんないじり始める

大谷:改めて船井総研としてのkintoneビジネスの概要について教えてください。

神徳:はい。手始めに司法書士の相続をメインにやっているお客様からkintoneをやりたいという声をいただきました。サイボウズのkintoneパッケージを使ったのですが、自分たちではカスタマイズが難しかったという話だったので、5月15日に相続向けのkintoneパッケージを作り始め、なんと6月9日にリリースできました。

大谷:はやっ!

神徳:その後、土地家屋調査士のお客様もkintoneをやりたいという声をいただき、開発協力をいただきながら作って、これも2週間くらいでリリースできました。

大谷:こっちもはやっ!

神徳:「永遠のβ版」という感じなので、リリース後もどんどん改善を加え、先に導入したお客様が損しないように、無償でバージョンアップできるようにしました。こんな感じで、船井総研が作ったkintoneパッケージを「船井ファストシステム」というブランドを作り、不動産売却、葬儀会社、オフィス商社、OA商社、会計事務所、社労士向けなどを作っています。今一番売れているのは葬儀社向けですね。お客様に開発協力を依頼し、実際に使ってもらいながら、つねにいいものを作っていける体制をとっています。

別府:作り方もユニークで、モデルとなるお客様を選定し、密にヒアリングしてプロトタイプを作っています。プロトタイプはお客様のところでもんでもらい、足りない部分をChatworkでもらってどんどん反映していっています。要件定義や料金なしで進めていているので、レスポンスの速さも素晴らしいんです。

神徳:完全にお客様との共同開発です。モデルとなる開発協力会社のプロトタイプは無料で作るし、要望も飲みます。使えるものになるかどうかも保証はできないので、開発協力会社さんからお金をいただくというのはおかしいですよね。お客様には実際に使ってみてフィードバックをしていただくという「時間」「アイデア」「業界ノウハウ」を頂いておりますので。これって本来お金を払ってでももらいたいものです。

とはいえ、開発協力会社様には、無料とさせていただく代わりに、ほかの会社にも売らせてください。お客様とのやりとりもChatworkとZoomで移動コストをかけないように、またやり取りした人だけではなく、他の人にも共有できるようにして忙しくなったら手のあいた人間がサポートに入れるようにしています。

大谷:それにしても業界用語や業務知識が不可欠ですね。

神徳:業界によっては、「日付」という項目だと通じなくて、「業務完了日」のようにすると何を入力するのか明確になります。日付1つとっても、さまざまですね。おもしろいのは、業界用語だらけにすると、自分の業界の専用システムだと思って、使ってくれるんですよね。それを自社用にもカスタマイズできるとなると、みなさんいじり始めます。kintoneの世界へようこそ、って言ってます。(笑)

大谷:なるほど。エンジニアにとってみたら、単に統一してよという用語も、業務コンサルだったら、きちんと意味を理解して実装できますよね。そこが大きいなと感じました。

別府:サイボウズ内でも船井総研様でkintoneというと、今までは士業というイメージがあったのですが、2019年に入って葬儀社やオフィス家具商社からも依頼が来て、より幅広く中小企業にもアプローチができるようになってきています。

「より幅広く中小企業にもアプローチができるようになってきています」(別府)

kintoneって複数回要件定義のために訪問していただいたけど、契約まで至らなかったということもあります。基本、営業コストもそれなりにかかるプロダクトです。でも、船井総研様が作られている業種パッケージは、デモをリモートで行なって1回で受注までされてしいます。びっくりですよね。今後もさまざまな業界・業種のkintoneパッケージを作ってくださると聞いておりますので、多くの会社にリーチできそうです。

神徳:われわれもkintoneのおかげで、既存の業務改善コンサルティングに加え、「デジタルトランスフォーメーション支援」という別のテーマでコンサルティグのご依頼をいただけるようになっています。従来の業績向上、人材採用・育成、財務、事業承継に加え、さらにICTコンサルティングで中小企業の経営を総合的にご支援できる体制が作れるようになっています。

大谷:サイボウズとしても、船井総研としても、新しいビジネス領域が拓けたんですね。

神徳:はい。業務コンサルだけだと、中小企業の社長さんには「で?結局どうするの?」と言われてしまいます。ただの業務コンサルティングではなく、ビジネスモデルを変えていくようなデジタルトランスフォーメーションのコンサルティングを意識しています。

大谷:今ではサイボウズのパートナーなんですよね。

神徳:はい。私たちもパッケージ作りと同時に2018年8月くらいからサイボウズとのパートナーシップの契約も進め、2019年2月にオフィシャルパートナー契約を締結しました。

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