NoMaps 2019 セッション「イラスト地図とGPSがリンクする~StrolyをRSRで使ってみた!!」レポート
ライジングサンロックフェスで3000人以上が利用した地図アプリ
イラスト地図とGPSを連動するStrolyのアプリ
Strolyという新しい地図アプリをご存知だろうか。
運営を行なうStroly社は、ATR(株式会社 国際電気通信基礎技術研究所)の社内ベンチャーから立ち上がったスタートアップ企業である。観光地などで制作されている紙ベースの手書きのイラスト地図などをオンライン化し、GPSと連動してスマホなどで利用可能にする技術を持っている。
2019年に米国テキサス州で開催されたサウスバイ・サウスウエスト(SXSW)でも、カンファレンスのスタートアップ向けのピッチイベントで応募800社から最終候補50社に残った(日本企業としては唯一)。また、SXSWが作成していた一般参加者向け紙ベースの会場マップのOfficial Sponsorになると同時にオンライン化。これにより、カンファレンス期間中に開催される2000以上のイベント情報をスマホからインタラクティブに見ることができるようになったという。
GoogleMapやAppleのMapなども地図データの上にレストランや観光地の所在地を表示してくれるが、観光地で配られているようなイラストで描かれたイラスト地図とは、個々のスポットの持っている引力が異なる。イラスト地図にはその地図が見せたい情報のテーマやキャラクター性があり、キュレーションとしての観点がそこに入っていることが少なくない。そのために部分的に地図の縮尺を変えていたり、あえて省略している部分があるなど、そのままではGPSと連動することができない。
しかしStrolyのシステムを用いれば、スマホでイラスト地図を見れるだけでなく、GPSを使って自分の現在位置をイラスト地図上に表示し、目的地まで迷わず行けるようになる。また、イラスト地図を単純にオンライン化しただけではユーザーの情報(何時にどのくらいの人がどこにいるか、など)を得ることができなかったが、Strolyのシステムではユーザーの導線情報を得ることができ、後で地域の観光インフラ整備などに役立てることができる。
北海道最大のオールナイト野外ロックフェスティバル RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO でStrolyが活躍
RISING SUN ROCK FESTIVAL(以下、RSR)とは、北海道石狩で毎年夏に開催される本格的オールナイト野外ロックフェスティバルである。初開催は1999年、今年はその21回目に当たる「RISING SUN ROCK FESTIVAL 2019 in EZO」となる。当初は8月16日、17日の2日間の予定だったが、台風の影響で17日のみの開催となり、野外ステージ3つを含む全10ステージで約80のアーティストによるライブが行われた。
イベント期間中、普段は何もない石狩湾の草原に、2日間だけの街ができる。まっ平で何もないところにテントサイトや駐車場ができるため、自分のテントがわからないとか、車を止めたところがわからないなどのトラブルが頻発していた。これをスマホを使って解決できないか、と探していた時にStrolyのサービスを知り、今年のRSRで使ってみたという。
RSRでは来場者にイラストマップを配っている。その地図には主要なステージやレストラン、ショップ、テントサイトなどが記載されていると同時に、周囲には森林や動物のイラストなどが描いてある。
今回はこの公式マップ上に、Strolyのシステムで利用するための68カテゴリ、177か所のランドマーク情報を登録した。各スポットのイラスト地図上の位置は実際の位置と異なっているが、GPS連動させ、来場者が迷わずステージやレストランなどにたどり着けるようにしている。
2019年の来場者は約37000人で、その中の3000人以上がStrolyを利用していたという。コンバージョン率は10%近く、非常に有用なデータを得ることができたそうだ。
Strolyのシステムを使うと、利用者のヒートマップを得ることができ、特定の時間にどのエリアが混み合っているか把握することができる。RSRでも花火打ち上げの際にどこにユーザーが集中していたかなどがよくわかったという。このようなデータは今後の開催に生かされる予定だ。
Strolyのシステムは、日本各地で作成されている紙ベースのイラスト地図を、より使いやすく、頼りになるツールに昇華することができる。特別なアプリを導入する必要もなく、ブラウザベースで利用できるため、地図データの更新にアプリを再ダウンロードする必要などもなく、リアルタイム性が高い。
通常の地図アプリは確かに便利である。しかしイラスト地図には便利さだけではないその地域・イベントに関わる人たちの気持ちが込められていることが少なくない。その気持ちをそのまま来訪者に伝えることのできるStrolyのシステムが、各地域の活性化に果たす役割は小さくない、そういう印象を受けたセッションであった。
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