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古風な見た目に反した、現代的なサウンドが魅力

40年の魂が注入された「KX-3 Spirit」、これはぜひ聞いてほしい逸品スピーカーだ

2019年08月14日 14時00分更新

筆者は昨年の暮れに、このKX-3 Spiritの音を聴いて感銘を受けた。そしてこの製品がどのように生まれ、そしてスピーカー開発のどんな経験が生かされているのかに関心を持った。少し長くなるが、クリプトン オーディオ事業部長の渡邉勝氏のお話を聞いていこう。

魂を込めたという意味の「Spirit」

── KX-3 Spiritを開発した経緯について教えてください。

渡邉 もともとクリプトンのオーディオ事業を大成功させようという気持ちはなく、まずはスピーカーからやってみようと思って始めたのが「KX-3」(2005年発売)です。

オーディオ事業部長の渡邉氏。写真中央のスピーカーが、KX-3 Spirit。左端のフロア型スピーカーがハイエンドの「KX-1000P」だ。

 日本ビクターを定年退職することになり、改めて日本のスピーカー市場を見てみたら、めちゃくちゃな状況なっていました。最悪な状況で、ダイヤトーンの三菱は撤退、パイオニアもそこそこで、ビクターも腰が引けている。「これはまずいな」と思いました。

 「なら、クリプトンでちょっとやってみようよ」と、会長の濱田さん(クリプトンの濱田正久会長)に申し出たのが、KX-3を出したきっかけです。ただ、濱田さんは、私が長年スピーカーの開発をやっていたなんて全然知らなかったので、「本当にできるの?」という反応でした。「ビクターで『SX-3』というスピーカーを開発したのは、私なのですよ」といった感じのやり取りから始まったのですね。

── 精神という意味の「Spirit」を製品名に入れた理由は?

渡邉 KX-3は密閉型で白い筐体のブックシェルフにしました。SX-3を知っている人から見たらミエミエだけれども、私のキャリアの礎でもありますし、久しぶりに戻ってきた現場だから、初心に返ってイチからスピーカー開発をしたいという想いもありました。

 1970年代前半の「SX-3」からスタートした「SXシリーズ」ですが、10年・10機種という節目の時期に、60万本のキャビネットが生産ラインに流れたという情報がビクターの社内報に載りました。これは「ひとつのセレモニーだなぁ」と感じ、「精神を注入して終わらせよう」という意図で開発したのが「SX-10 Spirit」です。

 KXシリーズも縦軸/横軸のラインアップ展開を進めて、初代から数えて13年目になりました。SX-10 Spiritと同様に、ここでひとつ精神を入れて、集大成的な製品を作ろうと考えたのが「KX-3 Sprit」になりますね。

※渡邉氏は1992年まで日本ビクターのオーディオ事業部に所属。その後、退職までプロジェクション事業部に所属。新天地のクリプトンで取り組んだ第1弾スピーカーが「KX-3」だ。KX-3 Spiritを発売した2018年は、渡邉氏がスピーカー開発の現場から離れ13年後に復帰、それからまた13年という節目の年だ。

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