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時間を大事にして人生を豊かにするバカンの空席情報プラットフォーム

いま注目の空席情報サービス そのハードルが高い理由

2019年06月14日 07時00分更新

実証実験と本格導入によって証明されたサービスの有効性

 空席情報サービス「VACAN」の導入について、横浜の高島屋と相鉄ジョイナスでは2ヵ月、3ヵ月ほど実証実験を試みた。それによると、実に88%のユーザーが便利になったというアンケート結果が出た。その後、ほかの商業施設や百貨店での本格導入も多数進み、圧倒的な顧客満足度の高さに加えて、空席情報を提供することで普段足を伸ばさないフロアにまでユーザーが回遊し、対前年度比で売上や客数が伸びた報告も多数あるという。

 「VACAN」では、ひと目で空席情報が分かるという点をとことん追求している。

 「空いている」という状況をフックに、そこを基点にお店を選ぶ、フロアを選ぶというユーザー体験を重視しているからこそ、素早く入りたい、空いているフロアを選んでアクセスしたいというニーズに対して、それが実現できるようなユーザーインターフェースになっている。

 ECの台頭にともない、リアルな店舗にとっては来店者にいかに楽しんでもらうか、買うだけでなく体験できる場所になり得るかという点に関心が集まっている。ゆえに、「混雑」によってユーザーの時間を無駄にしてしまうことを大きな課題と意識する向きも多い。それが空席情報サービスの本格導入につながっていると河野氏はいう。

 現状、飲食店の空席状況やトイレの空き状況だけでなく、また別のシーンで使えるのではないかと相談を持ちこまれるケースが多く、自社のサービスが広がっていく実感があるという河野氏。「このサービスが広がって、どこでも空いている場所が分かるという優しい世界がきたらいいなという思いで、ひたすら腕を磨いている」と語る。

じつは参入障壁が高い「空席情報サービス」

 このような空席情報サービスは一見、エンジニアであれば誰にでもできるのではないかと錯覚してしまうのではないか。プロトタイプをつくって安定的に1回動作させることまでは比較的容易にできるが、問題はその先だ。

 IoTの環境がクライアントによって少しずつ異なるため、たとえば電波が弱くてハードウェア的なトラブルが起こってしまった場合にどのような保守体制を敷くのか、どのようなオペレーションをつくっておくべきか、自社だけでやるよりもパートナーとの提携、アライアンスの内容、業界構造など、つくり込まなければならない要素は山ほどあるという。

 技術的な側面からも、一社のためだけにつくるのは容易だが、それを誰もが使えるように汎用的に、そしてシンプルに構築するのはとても骨の折れる仕事だ。部分的にはAIも活用することになるし、逆にAIを活用してもサービスとしてつくり込む部分は困難をともなう。

 カメラを使った解析には難色を示すも、センサーを使うならばサービスを利用したいという事業者からの要望にも応じられるよう、いくつかのオプションを用意しておく必要がある。この点についてバカンでは、センサーを自社開発することで、最適な技術や方法を選択・調整できる体制を整えている。

 こうしたさまざまな条件を重ねていくと、空席情報サービスをここまで汎用的に提供している企業はバカンをおいてほかにはない。起業から現在まで、スケジュールを前倒しして順調に推移しているという河野氏だが、空席情報サービスをつくり込むことについてここまでハードルが高いという認識はなかったそうだ。

 「それをクリアする座組みや、突破する方法、どういうプレイヤーがいるかというのがようやく見えてきた。今後、一気にスケールする絵が見え始めた」(河野氏)

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