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「IPナレッジカンファレンス for Startup」レポート

各界のプロがホンネで語る世界展開を成功させる知財戦略とは

2019年03月27日 07時00分更新

 ASCII STARTUPは3月22日、オールジャンルのXTech展示カンファレンスイベント「JAPAN INNOVATION DAY 2019 by ASCII STARTUP」を東京・赤坂インターシティコンファレンスにて開催。60社以上の企業ブース展示のほか、キャッシュレスやオープンイノベーション、知財戦略など幅広いジャンルのセッションを実施した。

 同時開催となったイベント「IPナレッジカンファレンス for Startup」では、特許庁やスタートアップ業界のプロフェッショナルが登壇し、「第1部:特許庁、スタートアップ支援施策はじめました」「第2部:知財プロフェッショナルが語るスタートアップの課題と新たな働き方」「第3部:日本のイノベーションに必要な攻めの知財戦略を考える」の3部構成で、スタートアップがユニコーンになるための知財戦略について議論した。ここでは、その内容の一部をレポートする。

【第1部】特許庁、スタートアップ支援施策はじめました

 第1部は、特許庁 企画調査課 企画班長 菊地陽一氏が登壇し、「特許庁、スタートアップ支援施策はじめました」と題して、日本のスタートアップが抱える知財戦略の課題と、解決するための特許庁による支援施策を紹介した。

特許庁 企画調査課 企画班長 菊地陽一氏

 スタートアップの強みは、斬新な技術と尖ったアイデアといった知的財産だ。スタートアップが成長するには、自社のアイデアや技術、ブランドがオリジナルであることを証明し、武器として活用するための戦略が欠かせない。

 知財のもつ機能は、「独占」「連携」「信用」の3つ。独占は、事業の差別化、模倣の防止。連携は、オープンイノベーションのツールとして使える。信用は、資金調達やM&Aの評価、ブランドや技術力を持っていることの裏付けになる。

 事業計画の中で、この3つの機能をうまく使うことが知財戦略だ。しかし、日本のスタートアップは、米国に比べて知財意識が低く、特許の取得数も少ない。

 菊地氏は、その原因として、1)知財戦略の重要性に気付いていない、2)スタートアップに通じた知財専門家に出会えない、3)そもそも何をやっていいのかわからない――の3つを挙げる。

 特に難しいのが3番目の課題だ。知財の重要性はわかっているが、開発や資金調達など目の前のやるべきことが多くて、知財まで手が回らない、というのが多くのスタートアップの本音だろう。知財戦略は、経営戦略と密接に関係しており、事業戦略、マーケティング、研究、人材といったあらゆる観点で考えていかなくてはならず、企業によってもケースバイケース。すべてを独力でやるのはほとんど困難だ。

新しい発明の権利化だけでなく、オープンクローズ戦略、海外展開、共同研究先との契約、人材戦略としてのインセンティブ設計なども知的戦略として考える必要がある

 そこで特許庁では、スタートアップの知財戦略を支援するため、2018年7月にスタートアップ支援チームを立ち上げ、以下5つのスタートアップ支援施策を実施している。

1.コンテンツの提供:一歩先行く国内外ベンチャー企業の知的財産戦略 事例集」、「オープンイノベーションのための知財ベストプラクティス集」、「知的財産デュー・デリジェンス標準手順書」の配布。

2.知財アクセラレーションプログラム(IPAS)事業:ビジネスと知財の専門家をスタートアップに3ヵ月程度派遣して、出口を見据えた知財戦略構築を支援。今年度は10社、2019年度は15社を採択予定。

3.ベンチャー企業対応スーパー早期審査:1ヵ月以内に特許審査の結果がわかるスーパー早期審査を実施。通常は1次審査に約9.3ヵ月かかるところ、スーパー早期審査なら約0.7ヵ月。約2.5ヵ月で権利化が可能。

4.特許料の減免制度:審査請求料・特許料を3分の1に減額。手続きも簡素化し、証明書類が不要に。

5.JETRO Innovation Program (JIP) :知財を活用した海外展開を支援。2018年度は、シリコンバレー、ベルリン、深セン、インドネシア・タイ・マレーシアの大型展示会イベントに派遣。

 直近では、スタートアップのためのポータルサイト「IP BASE」を開設。スタートアップが知っておくべき基本知識や特許庁の支援施策、イベントの案内などの最新情報が掲載されている。会員登録すると、毎月のメルマガで新着情報をいち早くキャッチできる。今後は、専門家に知財の相談を受けられるなどの機能も追加される予定だという。

商標といった基礎の部分から、知財戦略までに関心があるなら、IP BASEにまずは登録をすべきだろう

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