あんかけご飯としてはなかなかイケるが
バジルの香りが失われているのは気になる
気になる味はどうだろうか。いわゆるガパオライスの味わいに近いところは、それなりにある。やや塩辛い鶏肉、ピリッとしたスパイシーな辛さが際立ち、ご飯がすすむ味付けだ。半熟の温泉玉子を混ぜるとまろやかさも生まれて、なかなかよい塩梅といえる。650円のメニューとしては十分だろう。
気にかかるのは、バジルの香りがほとんど感じられないこと。「バジルチキンライス」とうたっている以上、問題がないとはいえない。そもそも、大量に入っている緑色の葉っぱは一体なんなのか。バジルに決まっているだろう、と言われるかもしれないが、それを疑ってしまうほど存在感がない。残念ながら、ここは減点対象だ。
いわゆるガパオライスとは似て非なる……というか、似ていないし、非なるものだ。そうはいっても、ピントがボケた味になっていないのは、しっかりとした辛さがあるからだろう。単調といえなくもないが、唐辛子の辛味が効いており、そのうえで、中華料理っぽい香りになっている。
あえて無理やりたとえるならば、麻婆豆腐の豆腐がないバージョンを、ご飯にかけた感じだ。あるいは、餃子の餡をアレンジして、あんかけご飯にした感じともいえそうか。ざっくり言ってしまえば、「鶏肉のあんかけご飯」。650円にしては凝った味、しかし大盛りにできないのがちょっと残念。以上。それでも、なんだか、「思っていたのと違う!」という気持ちは拭えないままだった。
悩んでいる自分を見かねてか(いや、こういうときにそのような配慮をするタイプではないから、たぶん本人の純粋な疑問だったのだろう)、盛田さんは、「あの、我々がよく食べる、ガパオライスじゃないんですよね、これは」と言った。ガパオライス、ではない――。
「ガパオ」とはなにかをおさらい
そもそも、タイ料理店でおなじみのガパオライスとは何なのだろう? タイ語で「ガパオ」として知られているのは、ホーリーバジル(和名:カミメボウキ)の葉で、シソ科の植物。タイホーリーバジル、クラッパオなどとも呼ばれる。ちなみに「タイバジル」はいわゆる「バジル」(和名:メボウキ)の品種であり、カミメボウキとは異なる。
タイには肉(牛、豚、鶏、いずれもあるようだ)とタイホーリーバジルを炒めた「パットガパオ(パッガパオとも)」という料理があるが、日本では、パットガパオを白飯とあわせた「ガパオライス」として有名になった。そのため、タイで「ガパオライス」と言うと、相手が「ホーリーバジルとライスだけでいいのか……(困惑)」と誤解する可能性がある。「カウ パットガパオ ガイ」などと言えばよいらしい(カウはご飯、ガイは鶏肉を意味する)。
日本では、ガパオライスと称しているのにバイマックルー(こぶミカンの葉)やスイートバジルを使っているお店もあるそうだ。むしろ、こちらのほうがなじみ深い人もいるかもしれない。
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