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ライブ配信でわざわざ「カラオケ機能」を正式に実装した理由

2019年01月24日 15時00分更新

 ライブ配信をしてみたいけど「どのようなもの(コンテンツ)を配信したらいいかわからない」という若い人たちの声をよく聞きます。いま一番人気の配信ジャンルはゲーム実況配信ですが、ゲームが得意ではない人もいるはずです。

 ゲーム実況のほかに「雑談」という配信ジャンルもあり、ライブ配信ならではのチャット機能を通じ、ふらりと立ち寄ってくれた視聴者とコミュニケーションをしながら何気ない会話や決められたテーマで盛り上がっていくかたちで楽しむ人もいます。

 でも、何気ない会話や決められたテーマで視聴してくれた人と会話しながら時間を過ごしていくのは「雑談」ジャンルの楽しいところですが、だんだん「話すことも無くなってしまう」というネタ切れに陥ってしまう人も少なくありません。

 そうした悩みをもつ人たちに試してみてもらいたいのが、最近、いくつかのライブ配信プラットフォームで機能を提供しはじめている「カラオケ機能」です。

大手通信会社と提携して実現される「カラオケ機能」が登場

 先日、SHOWROOM株式会社が通信カラオケDAMを展開する株式会社第一興商と提携し、運営するライブ配信プラットフォーム「SHOWROOM」において12月18日から「カラオケ」機能が利用できるようになったことを発表しました。

 これまでに「MixChannel Live」(2016年10月)や「ドキドキLIVE」(2017年7月)のほか、「LINE LIVE」でも2018年11月からJOYSOUNDを提供する株式会社エクシングと連携し、ライブ配信をしながらカラオケを楽しむことができる”カラオケ機能”を提供開始しています。

 YouTubeなどの動画共有サービスでも「歌ってみた」などのジャンルへの動画投稿はもちろん、ライブ配信においてもいわゆる「カラオケ配信」が以前から人気でした。

 今回の機能が備わったことは少し”いまさら”感を感じる人もいるのかもしれません。でも、これがいまさらのことでも、この「カラオケ機能をプラットフォームの機能として備えるようになったことに理由があり、その意義もある」ことなのです。

配信しながら歌うために「安心してカラオケ音源を流せる」ように

 以前もこの連載で触れたように、「カラオケボックス(お店)の部屋のなかで、通信カラオケ機器から流れる音源を使って、楽曲を歌うところをライブ配信する」いわゆる「カラオケ配信」は許諾がないまま放送するのはダメである、ことにも起因しています。

 つまり、許諾がないカラオケ配信は「通信カラオケ機器から流れる音源(カラオケの曲)がライブ配信を通じて流れてしまう」ことで、その音源を作ったレコード製作者(通信カラオケ機器メーカー)が持っている権利(著作隣接権)を侵害してしまうからです。

 ライブ配信で「音楽を流す」ということは、実は、権利を侵害しないようさまざまなことをクリアしないといけなく、それは複雑で難しいことです。そうした権利を侵害しないようにしなければならない、ということを知らず、たびたび(意識をせず)権利を侵害してしまっているライブ配信は見かけます。

 こうした権利侵害は原盤権という権利を持つ会社(通信カラオケ機器メーカーなど)が訴えを起こさなければならないので、事実上、カラオケ配信は黙認という形になっており、ニュースで取り上げられてしまうような大きな問題になることはまだ少ないままです。

 でも、こうした黙認された状況をライブ配信のプラットフォームもそのままにしておくことはできません。

 その黙認されていた状況を健全にし、そして、カラオケ音源を使う利用者(つまり配信をする人)たちが複雑な権利(仕組み)を意識せずとも歌うために「安心してカラオケ音源を流せる」ようになります。

 カラオケ機能をライブ配信のプラットフォームが機能のひとつとして備えるようになったのは、こうしたことを踏まえている流れなのです。

歌わずとも「BGM代わり」にも使えそう

 事実上の「黙認」とされてきたカラオケ配信は、配信者が権利を侵害してしまわないよう守るために、17 Liveなどではガイドラインで通信カラオケ機器から流れる音源(カラオケの曲)を利用したカラオケ配信を禁止と明記することで対応をしてきました。

 ただ、今回のようにプラットフォームが「カラオケ機能」という公式な機能として配信者に利用してもらえる仕組みを設けたことによって、カラオケを自分自身のコンテンツのひとつとしてライブ配信をしながら披露できるようになっていく流れも生まれています。

 このカラオケ機能は、街中にあるカラオケボックス(お店)と同じようにどんな楽曲でも登録されているか?というとまだそうではないかもしれません。カラオケ機能で流すことができる楽曲はまだまだ限られるかもしれません。

 でも、プラットフォームが機能としてカラオケ機能を提供することによって、これまで黙認されてきた権利侵害の状況を健全にし、そして、配信者も難しい権利関係のことを意識せず、安心してライブ配信をしながらカラオケをすることができるようになります。そして、わざわざカラオケボックスへ行く必要もなく、おうちで手軽にカラオケ配信ができることも魅力です。

 ちなみに、カラオケ機能は必ずしも歌う必要はありません。

 例えば、ライブ配信をするときに自分のスマートフォンに入れているお気に入りの曲をBGM代わりに流す人も見受けられますが(こちらも許諾がなく楽曲をライブ配信で流してしまうと同じように権利侵害となってしまいます)、このカラオケ機能を使って「カラオケ音源をBGM代わりに使う」なんてことにも使えそうです。

 引き続き「カラオケボックス(お店)の部屋のなかで、通信カラオケ機器から流れる音源を使って、楽曲を歌うところをライブ配信する」ことはどのライブ配信プラットフォームでもできないことは変わりません。同じ「カラオケ配信」でもカラオケに使う音源によってできる場合と、できない場合が別れてきます。

 ライブ配信で音楽を流すということは、さまざまなことをクリアされたものだけができる特別なことであること、そして、どのようにすれば、権利を侵害せずに楽しくライブ配信をすることができるのかを、改めて知っておいてほしいと思うのです。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com

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