さすがにアラサーになると考えもまとまります
岩本:ペパボの家入さんにせよ、はてなの近藤さんにせよ、創業者ってめちゃめちゃ個性的じゃないですか(笑)。2代目として引き継ぐことの恐れや社内の大変なことをどうやって乗り越えたか教えてもらえますか?
佐藤:家入さんのいいところは自分で作ったものを社内に示すというところ。社長としてぐいぐい引っ張ると言うより、クリエイター気質。だから、彼は社長っぽいことをしなくても、自分がやるより違和感なく社長業が成立していたと思う。そんな家入さんが好きで入った人もいたので、そういう人は気分落ちていたかもしれない。でも、これはしようがない。とはいえ、自分の場合はけっこう前から社内でコミュニケーションをとっていたので、あまり違和感なかったかなと。
栗栖:うちの場合、近藤は会社を辞めたわけではなく、会長としてきちんと残っているので、GMOペパボさんとはちょっと違くて、単純に役割が変わっただけ。もちろん、社長の近藤が好きというスタッフはいたと思いますが、そういう人たちの期待に応えるためにがんばるしかないなと。
岩本:田中社長は社長から現場に戻り、また社長に復帰した口ですよね。
田中:はい。最初に社長になったのは22歳で、復帰したのは29歳です。最初、社長辞めたときは10人規模でしたが、復帰したときは200人規模にまで膨らんでいました。
栗栖:22歳で社長はすごい。
田中:とはいえ、会社起こせば誰でも社長になれますからね(笑)。
岩本:2回目の社長はどうだったんですか?
田中:全然違います。まあ、歳とりましたからね(笑)。さすがにアラサーになると考えもまとまります。
でも、社長が大変なことも改めて痛感しました。当時、生意気な部下がいたんですが、辞めて本人が100人規模の社長になってから、『田中さん、あのときは生意気なこと言ってすいませんでした』と言われました(笑)。
『上場しても面白い会社でいよう』と社内で話していた
岩本:こう見えても、みなさん上場企業の社長じゃないですか(笑)。上場前と後で違うところとかありますか? 社会的に認められるようになったとか、制度的にしっかりしなきゃいけなくなったとか。
栗栖:上場当時は、ちょうど企業向けのブログCMSやサーバー監視サービスのMackerelなど法人向けサービスを伸ばしている時期でした。現場の人ははてなを知ってくれていて、サービスいいから導入しようという話になるのですが、経営層が決済する段になると、『非上場のはてなという京都の会社って大丈夫か』というパターンになることもあるんです。その点、上場して会社の情報がオープンにできたのはよかったです。もともと『はてなってなにで食べてるかわからない』と言われることも多かったけど、財務的に健全なことも示せたし、開示している情報を元にビジネスや採用が回るようになりました。
佐藤:社内では「上場しても面白い会社でいよう」と話していたし、そもそも上場すること自体が面白いと思った。そういうところがモチベーションだったし、仲間たちには伝わっていった。だから、あんまり実態は変わらない感じです。
田中:社員の結婚式に参加したら、親族の喜び方がすごかった。弊社が東証一部に指定替えしたときに主賓として挨拶したのですが、『あとで東証一部と言ってくれないか』と親戚の方に言われました(笑)。上場しているのを認知させたいという声が大きいですね。
栗栖:社員だけじゃなく、周りの人がわりと喜んでくれますね。
田中さんはうちがマザーズに上場したときの記念パーティでも挨拶してくれていて、そのときの「上場したばかりだけど、なるべく短いステップで次に進んだほうがいいし、早く上場した方が好きなことができる」の内容は今でも胸に刻んで、がんばっています。
田中:追加すると、「株主も大事だけど、社員もお客様も大事。いつまでも愛されるはてなでいてほしい」というコメントもしました。上場しても変わらない価値ってやっぱりありますよね。
栗栖:ありますねー。その田中さんの挨拶がよすぎて、僕らの挨拶がかすんでしまったんです(笑)。社員も『田中さんのあいさつ、すごくよかった』と言ってたし、とにかく大好評でした。
田中:そんなこと言われたら、有頂天になりますよ。
岩本:今回、上場しているライバル同士が同じパネルに参加していることで、「お互いを意識しているのか?」をききたいです。取材すると、けっこう「意識してません」とか答え返ってくるんですけど、さくらとGMOペパボはホスティングやレンタルサーバーなど事業全般、GMOペパボとはてなはブログサービスとか、いろいろ競合していますよね。
田中:そりゃ、意識しますよ(笑)。しないはずないですよ。
栗栖:うちのサービスで実現できなかったところ先にやられたら、『先を越された』と思うし、minneみたいな新しいサービスの場合は、応援したくなります。B2C向けサービスを当てるって、本当に難しいので。
岩本:ある社長が競合サービスにユーザー登録したら、悪いことやってないのにいきなりBANされたという話を聞いたことがあるので(笑)。それくらいちゃんと見てるということですよね。
田中:意識するのと相手を打ち負かすのはちょっと意味が違う。先日のワールドカップじゃないですけど、勝つことよりベストを尽くすことの方が重要だと思われることも多い。
佐藤:目的は、あくまでお客様にとって一番いいサービスを出すこと。その結果でのシェアやユーザー数になってくるので、一番を目指す過程で、他社を見ているという感じかもしれません。
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