「カップヌードル 肉食リッチ 贅沢肉盛り担々麺」
日清食品
5月28日発売
購入価格248円
https://www.nissin.com/jp/news/6982
「カップヌードル リッチ」第6弾は担々麺
「本格的!」や「とてもおいしい!」などの肯定的な評価をすると、かならず一部からは「そうでもなかった」「わかっていない」と言われてしまうものだ。はたして自分の評価が間違えているのか、それとも言ってくる人は単に逆張りしたいだけなのか、判断するのはなかなか困難。
カップ麺の記事を書くときもそんなことがあったりする。本格的な味です……などと書いて、「そうでもないぞ本場の〇〇に比べれば……」「これをありがたがるのはどうかしている」と言われる(書かれる)ことは、なきにしもあらず。でも、そこには「カップ麺にしては」という視点もある。きちんとしたお店に行って、1000円近く払って食べるラーメンと比較しても仕方ないではないか、カップ麺ならではの美学があるのではないか、という視点も持っておきたい。
というわけで、今回は“カップ麺にしてはとても本格的”な担々麺の紹介。日清食品「カップヌードル 肉食リッチ 贅沢肉盛り担々麺」。5月28日から発売されており、価格は250円前後。
ぜいたくなスープが特長というプレミアムタイプのカップヌードル「カップヌードル リッチ」シリーズの第6弾。ごまをふんだんに使用した担々スープに、花椒(かしょう、ホワジャオ)と唐辛子をきかせた特製ラー油を加えることで、本格的な味わいが楽しめるとしている。
具材には、謎肉(豚肉や野菜などの素材をミンチ状にして、フリーズドライ加工した具材)に赤味噌、豆板醤、花椒を加えた「特製肉味噌担々謎肉」と、チンゲン菜、赤ピーマンを使用。
日清には自分から「謎肉」と言わないでほしかった
それにしても、特製肉味噌担々謎肉である。公式もさらっと「謎肉」と書くようになったかとあらためて驚く。カップヌードルの具材である、謎肉こと、サイコロ状のミンチ肉。正式名称は「ダイスミンチ」。豚肉のミンチと大豆、野菜などを混合したあとに、フリーズドライ加工して作っているそうだ。
この独特の食感と味は、ネット上などで「謎の肉」「謎肉」と呼ばれていた。たしかに、説明がなければ、何を使っているのか、どう作ったのかわからない、まったく謎の肉だ。ディストピア感も、ポストアポカリプス感もある、稀有な食材である。しかし、これが入っていないと、カップヌードルを食べている実感が薄れてしまう気持ちになるのも確かだろう。
「あれ? 一時期チャーシューになっていなかったっけ」と思ったアナタは正解。具材強化の一環として、小さな角切りのチャーシュー「コロ・チャー」になったことがある。ところが、2015年4月の再リニューアルで、結局ダイスミンチが入るようになり、さらにコロ・チャーも入る、なんだか不思議な事態になった。イエス(ロックバンド)でいえば、1991年に本家イエスとアンダーソン・ブルーフォード・ウェイクマン・ハウが合流して8人体制になったようなものである(余計わかりにくいかもしれない)。
さて、日清食品は2016年から、謎肉というワードを積極的に使い出すようになる。7月27日には公式Twitterアカウントが「CUP NOODLE なぞにく」と書かれた缶を開缶する写真のツイートを投稿したほか、9月12日には「カップヌードルビッグ "謎肉祭" 肉盛りペッパーしょうゆ」を発売した。
これは本当に個人的な話で恐縮なのだが……公式が「謎肉! 謎肉祭!」と言い出したことで、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、盛り下がった感がなくもない気がする。あくまで、俗称として、ファンの間で言われている俗称扱いのままでいてほしかった。極端な例だけど、「みんなで『バルス!』と言おう」と言われると、ちょっと醒めちゃって、ぜったいツイートしないぞ、と頑なになる感じに似ているというか。
そうはいっても、日清食品からすれば、消費者の間で流行っている呼び名をキャッチアップして、トレンドを生み出すことの重要さがわかっていたのだろう。「こう呼ばれていることは知っていますよ」とプロモーションする意味合いとしては、ツイートの写真は絶妙だった。コンビーフ缶のような容器が、いかにも、あの「謎の肉の固まり」が入っていそうなデザイン。このあたりは、日清食品らしい作り込みといえる。
なぞにく、なぞにく♪ pic.twitter.com/Yw3mtcqYiq
カップヌードル (@cupnoodle_jp) 2016年7月27日
「"謎肉祭"」と銘打った商品を展開したことや、新商品の具材に「特製肉味噌担々謎肉」を名付けることなどは、もうすっかり、オリジナル具材としてアピールするやり方を身に付けていることがうかがえる。そんな日清食品の柔軟さを褒めたたえるべきだろう。
めっちゃくちゃ話が脇にそれてしまった。実食レビューに戻ります。
250円とは思えぬ本格的な香り
それはさておき、贅沢肉盛り担々麺。うーん、よくできています。
やはり、花椒の香りが効いているのがポイント。それっぽい香りがしっかりとある。ただ辛いだけ、ゴマの味がするだけ、ではない。日清はこの手の香り付けがとくにうまいが、その例に漏れない。スープも、カップヌードルっぽいとはいえ、ちゃんと舌に残るピリ辛さがあり、ゴマによる味の深さもきっちりしている。特製肉味噌担々謎肉は、それほど香りが強いわけではないけれど、食感でアクセントになっており、これもよし。
実は、カップヌードルリッチには弱点があると思っていた。麺だ。これまでのシリーズでは、具材とスープにはこだわりを感じるものの、カップヌードル特有のやわらかくて切れやすい油揚げ麺に物足りなさを感じることが多かった。カップヌードルから派生した商品なので、麺まで特別にしろというのはぜいたくすぎるか、と諦めていた部分でもある。
しかし、今回は具材もスープもピリッと辛く味が濃いため、油揚げ麺の独特の食感と味が浮いていない。歴代のカップヌードルリッチの中でも、屈指の完成度といえるのではないか。
250円前後できっちりこだわったカップヌードルにしました……という作り混み具合はさすが。破綻のないおいしさ、本格的な香りは、日清食品のプライドを感じる。本当の担々麺を知る人、中華料理にうるさい人にとっては、まだまだダメ出しできるポイントはあるかもしれない。それでも、カップ麺の範囲の中で、香りと味をこれだけのクオリティーにまとめてきたところを高く評価したい。
ふつうのカップヌードルが200円前後であるのに対して少し高価だけれども、その味に間違いはない。コンビニやスーパーで手軽に変える、そこそこ本格的な担々麺として、かなりオススメ。ぜひチェックされたし。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。ショートコラム「MCコジマのカルチャー編集後記」ASCII倶楽部で好評連載中!
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