意外なほど静かだが
高負荷連続運転には向いていない
ここまでのベンチマークの結果から、NUC8i7HVKは小型ながらしっかりゲーミングPCを主張できるパワーを備えたマシンであることがわかった。
だが小型とパワーは両立させることが非常に難しい。発熱地獄になるか、ファンノイズの化物になるかのどちらかとなるが、NUC8i7HVKはどう切り抜けるのだろうか?
そこで今回はゲーム「Assassin's Creed: Origins」をプレイ状態のままおよそ15分放置、その後ゲームを終了させアイドル状態で約10分放置、その際の温度の推移を「HWiNFO64」で追跡した。CPUのパッケージ温度とGPUの温度、ならびにHBM2メモリーの温度と2基のSSDの温度を追跡する。
Assassin's Creed: OriginsはCPUコアに平均的に負荷をかけるが、今回のテストではおおむね50%前後の負荷が全コアにかかっていた。室温は25度である。
このテストでわかったのは、GPUよりもCPUの温度が一気に上がる傾向が見えた。CPUパッケージ温度の最高値は97℃と高い時もあったが、サーマルスロットリングに突入したコアは4基中1基のみ、しかも2秒程度で温度を下げて通常状態に復帰している。
ボディーが小さいがために爆熱になったPCは過去にいくつも見てきたが、このNUC8i7HVKに関しては、あまり強烈な作業(OCCTとか)をさせなければ、熱的には問題ないと言っていいだろう。
また、ファンの回転数を追跡したのが上のグラフだ。負荷をかけると一気に2200回転強まで上がるが、ファンノイズはエアコンなどのノイズに隠れてしまうほど小さい。夜中に一人でこのNUC8i7HVKを使えばそれなりにファンノイズは気になるが、この程度なら最近の17インチゲーミングノートの方がよほど騒騒しい。静音性の完成度はかなり高いと言える。
ちなみに暗騒音35.7dBAの室内において、NUC8i7HVKの正面から20cmの位置に騒音計(AR814)のマイクを置いたときのファンノイズだが、アイドル時はほぼ暗騒音と同レベルの36dBA、前述のゲーム放置時でも47.7dBAだった。
最後に消費電力をラトックシステム「REX-BTWATTCH1」で調べてみた。システム起動10分後の値を“アイドル時”、「OCCT Perestroika v4.5.1」の“Power Supply”テストを10分間実行したときの最大値を“高負荷時”としている。
注目したいのはOCCTでCPUとGPUをフルロード状態にした時だ。NUC8i7HVKのACアダプターの出力は230Wだが、消費電力の最大値は実測で240Wにもなった。
もちろんこの値は数秒しか続かず、あとは220W台でウロウロする感じだが、CPUが高クロック動作であること、さらに元々ワットパフォーマンスの高くないVegaコアを加えたことで、高負荷時は一気に消費電力が増えるのだと推測できる。
拡張性を犠牲にしてでも
小さなゲーミングPCが欲しい人にはアリ
以上で簡単だがNUC8i7HVKのレビューは終了だ。筆者はKaby Lake-G搭載NUCの話を聞いて、爆熱爆音の大失敗作になることを恐れていたが、実際に触れてみると案外静かで実用性も高い。描画の軽いゲームならば下手なゲーミングノートより快適に遊べると感じた。
特に dGPUを搭載したゲーミングノートではゲームを始めるとノイジーなものが多いが、このNUCであればさほど不快感は感じない。
だがアメリカ本国でさえ約10万円という価格の高さを問題とする人もいるだろう(実際にはメモリーとSSD、OSの費用も必要)。メーカー製ホワイトボックスPCを探せば、Core i5またはi7で、GTX 1050 Tiを組み合わせた拡張性の高いデスクトップPCが見つかるはず。冷静に考えるとコスパはあまり高くないのだ。
しかし、本製品はインテルとAMDがフュージョンして生まれたKaby Lake-Gを愛でるためのマシンであると考えるべきだ。
AMD Radeon Technologies Groupの元トップであるRaja氏がインテルに入ったのはこのCPUのためだという観測もあるが、インテルとしては自社製GPUでAMDに立ち向かっていくつもりであることは想像に難しくない。
つまりAMDとのフュージョンは長く続かず、下手をすればKaby Lake-Gの後継はRaja氏主導の下で設計された新GPUである可能性もあるのだ。そう考えると自作PCのファンなら、コレクターズアイテムとしてもぜひ手に入れておきたい一台と言えるだろう。
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