VAIOは、昨年から新たな取り組みを開始した。キッティングによって通常のWindowsとは異なる組み込み機器向けのWindowsのプレインストールをサポートしたことだ。「シンクライアントとして、VAIOを利用したいと考えるお客さまが急増しているため」だという。
Windows Embedded OS搭載の取り組みと導入企業のメリットについて、宮本琢也PC営業部長と西澤良太郎技術営業課 課長にお話を伺った。
シンクライアントが可能なWindows Embedded OS
Windows Embedded OSは、もともとレジなどに使うPOS端末や、金融機関のATM、店頭で情報を引き出すためのキオスク端末など、専用機器向けのOSとして採用されてきた。パソコン向けのWindowsは様々な用途に活用するため多機能だが、こういった機器では必要のないものも多い。そこでネットワーク接続機能やアプリケーション開発環境などWindowsの利点は残しつつ、機能を必要なものだけに制限したOSが求められたのだ。
またローカルストレージにデータを残さない「ロックダウン」機能などはセキュリティを高めるために有効だ。Windows Embedded OSならではの機能と言える。
VAIOのキッティングに採用されているのは、「Windows 10 IoT Enterprise」というOSだ。このOSの特徴は、カスタマイズにより、本来持っている機能の一部を利用不可にできる点だ。Windows Embedded OSの系譜となるが、Windows 10の世代になってから、OSのベースとなる部分がパソコン用のWindows 10とほぼ共通化された。そのため、PCメーカーがもともと持っていたWindowsのカスタマイズや作り込みに関するノウハウを活用しやすくなった。実際、何もカスタマイズしない状態で、Windows 10 IoT Enterpriseを起動すると、見た目はふつうのWindows 10 Proと変わらず、機能面でもほぼ同等である。
セキュリティーに対する要求が高い企業では、シンクライアントシステムの導入が進んでいる。これはユーザーが直接使う機器(クライアント端末)には最小限の機能しか載せず、ほとんどの処理を仮想化したサーバー環境(VDI)でこなす方法だ。クライアント側はあくまでも、サーバーにつなぐための入り口であり、ローカルにはデータが一切残らない。結果として業務でパソコンを持ち出す必要がある場合でも、高いセキュリティーレベルを維持できるわけだ。
かつては専用のクライアント端末が用いられてきたが、このシンクライアントシステムをWindowsを使って実現する事例がここ数年増えている。VAIOがキッティングサービスのOSとして、Windows 10 IoT Enterpriseを採用したのもこういった流れを受けてのものだ。ノートパソコンをシンクライアント端末として提供するメーカーはVAIO以外にもあるが、サポートするのは特定の機種のみといったケースも多い。VAIOは軽量でモバイル性に優れているため、導入する側のウケもいいそうだ。
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