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インバウンドマーケットEXPO2018レポート

「災害は必ずやってくる」避けてはならないおもてなしの形

2018年03月03日 09時00分更新

 インバウンドマーケットEXPO2018、海外からの渡航客を楽しませるためのサービスが並ぶなか、「災害は必ずやってくる」とインパクトのあるパネルを見つけた。エジソンハードウェア株式会社のブースだ。展示されていたのは外国人向けの避難誘導製品。地震に津波、台風など災害の多い日本において、目を背けてはならないおもてなしの形が、そこにはあった。

東日本大震災から得た教訓を活かして開発された製品

 春を迎えるたびに思い出す、2011年に東日本を襲った悲劇。当時、暴動も起こさず整然と帰宅する日本人の姿が世界中に驚きを与えたが、その影には情報を得られず不安な時間を過ごした外国人が多くいたという。SNSなどを通じてわずかな情報を得られるものの、駅や街頭での避難誘導はほとんどが日本語のみ。逃げた方がいいのか、残った方が安全なのか。それすら判断できなかった人もいたようだ。

 もし旅先でそんな経験をしたら、どうだろう。旅は楽しい思い出になるだろうか。また行きたい国として記憶に残るだろうか。おそらく、否だ。

 災害を避けるすべはないけれど、災害が起きることを前提に対策を施すことはできる。そして、それが災害大国日本におけるおもてなしのひとつの形に違いない。そんな思いから生まれたのがエジソンハードウェアの非常用多言語再生装置MegaSpeakと多言語拡声装置MegaSpeak Handyだ。前者は構内放送設備などに接続して使うことを想定しており、後者はハンドキャリーで必要な場所に持って行って使うことを想定している。

非常用 多言語拡声装置 MegaSpeak Handy

自動翻訳ではなく4ヵ国語の誘導案内を内部に収録した理由

 インバウンドマーケットEXPOには、海外からの渡航客をもてなすための翻訳ソリューションが数多く並んでいた。そのほとんどがクラウドに接続し、自動翻訳機能を使っている。MegaSpeakシリーズが同じような翻訳機能に頼らなかったのは、聞けばなるほどと納得する理由がいくつもあった。

タッチパネルでシチュエーションを選択するだけで4ヵ国語の案内が可能(画像は同社ウェブサイトより)

 第1に、災害時に通信環境が正常とは限らないこと。インターネット接続を前提にした仕組みではなく、単体で完結できることが最重要と考えられた。第2に、自動翻訳の精度の問題もある。災害時には少しの言い間違いが生存を左右する恐れがある。そのため翻訳に頼るのではなく「このようなシチュエーションの場合、英語ではどのように表現し、案内するのか」という、ネイティブスピーカーならではの言い回しを録音して再生する方が、より正確に案内できる。第3に、録音された音声を再生するだけなら、操作する人の外国語能力に左右されない的確な誘導が可能になる。

 これらの理由から、MegaSpeakシリーズでは日本語、英語、中国語、韓国語の4ヵ国語の誘導メッセージをあらかじめ録音。ボタン操作だけで再生できるようになっている。いずれもネイティブスピーカーに想定シチュエーションを説明したうえで、わかりやすい案内文を作成、読み上げてもらった。

京成電鉄に採用されており、漫画「終電ちゃん」とのコラボレーションでも描かれている

 録音音声に日本語が含まれているのは、肉声での案内には限界があるためだそうだ。被災現場で拡声器を片手に大声を出し続けるのは、容易ではない。すぐに声が枯れ、体力の限界が来る。誘導している人自身の安全が脅かされることも考えられる。そのため、日本語も外国語と同様に録音音声を再生する仕組みを採用している。とどまることができないほど危険になった場合には、連続再生ボタンを押してその場を離れれば選択した案内が繰り返し再生される。構内放送設備に接続することを前提としたMegaSpeakは100Vの商用電源が必要だが、拡声器型のMegaSpeak Handyは、単2型乾電池6本で8時間の連続再生が可能。

 「日本は災害が多い国。ここ数年は大型地震も続いています。そのようなタイミングでいらした方にも不安なく過ごしてもらい、安全に帰国してもらう。これも、大切なおもてなしだと思うのです」と語った担当者の言葉に、見落としていた何かを気付かされた気がした。

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