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Origin Wireless Japanの「Time Reversal Machine技術」とは?

スマートホームを一変させる異次元の室内センシング

2018年03月02日 07時00分更新

 スマートオフィスやスマートホームという言葉が広がりを見せている。昨年末より、日本国内でもAmazon EchoやGoogle Homeが発売されており、ユーザーがデバイスを触って操作する時代から、音声による操作、そして各種センサーが得た情報をもとにAIが自動制御する時代へと変革の足音が聞こえはじめている。

 そういった時代で注目を集めているのが、さまざまなセンサーや位置情報の検知技術だ。2017年のCEATECに独自の無線通信技術を出展したOrigin Wireless Japan株式会社もそんな会社のひとつ。同社は無線通信技術を利用して、屋内位置情報の測定や追跡、モニタリングなどができる世界初の「Time Reversal Machine技術」を持つベンチャー企業だ。

 同社独自の電波反射を利用した位置検出技術には多くの可能性が期待されている。今回は技術の詳細と会社の成り立ち、そしてビジネスの可能性について話を伺った。

Origin Wireless Japan株式会社の丸茂正人代表取締役(左)、角谷友行執行役員COO(中央)、藤井聡執行役員(右)

始まりは米国・メリーランド大学の学内ベンチャー

 そもそもの始まりは2012年にさかのぼる。メリーランド大学はもともと、デジタル化された信号を処理するシグナルプロセッシングの研究で実績を持っていた。IEEE(米国電気電子学会)でのSignal processing society座長も歴任したレイ・リュー(Ray Liu)教授も在籍しており、このレイ教授が発明した無線通信技術を商用化するための基礎研究が、大学のインキュベーションプログラムを利用して行なわれていた。そして2012年、Origin Wirelessとして会社が立ち上がった。


 「そもそもTime Reversal (時間反転)自体は物理の現象なので何十年前から知られていたこと。レイ教授はこれを商用利用するためにさまざまな研究と発明を行なってきた。弊社の『電波を通して空間や物体を感知する』というコア技術はメリーランド大学発の研究から生み出された」(角谷COO)

 「時間反転」とは物理関連の用語で、物理現象は時間軸を反転させても同じ現象が起きるというロジックを指す。たとえばボールを投げるという動作は時間を逆に回してもボールは受け取った人から投げた人に戻る。いわば、時間反転の不変性が成り立つということだ。(ただし、分子や原子など多くの粒子の運動である熱力学においては、時間反転は成り立たない)

 Origin Wireless Japan株式会社が持つTime Reversal Machine(TRM)技術について簡単に説明するとこうだ。Wi-Fiアクセスポイントなどのデバイスから物理的な電波が放出されると、室内では電波の反射が発生する。この反射に変化が発生した場合、それは空間中で物理的なイベントが発生したということだ。

 電波を受け取ったあと、今度は受け取った側から順番を逆さまにして再び電波を出していくと、さまざまな経路を伝わって電波が元の場所に届く。この時の順番の違いや位相のズレなどを詳細に解析することによって、室内にあったものの動きが認知できる。これを高度なアルゴリズムで計算できるのがオリジンワイヤレスのコア技術となる。

 「空間中の状況が変わると、当然反射の経路が変わるので、電波のパターンも変わる。その変わったところを、どう捉えるのか、どう検出するのかというのが、われわれの技術。位置がちょっとずれたように見えるところが出れば、どのくらい位置がずれたのかというのもわかるし、位置は固定のままで電波の経路がずれている、たとえば、周期的な変化なら呼吸、加速度的に変化していれば人が倒れたんじゃないかということがわかる」(藤井氏)

 デバイスからは毎秒数十回ほど電波が放出され、その変化を見ているため、毎秒数十コマのパラパラマンガを見ているかのような形で、室内の状況変化を監視できるというわけだ。

 電波を利用して、モノの位置(位相)や強さは測れるという認識はあったが、通常は室内で発生するマルチパス(多重波伝播)については、どれだけ削ぎ落としてシンプルにできるかという発想でこのようなセンシングの開発は行なわれるものだ。しかし、Time Reversal Machine技術においてはマルチパスが多いほど情報は増える。マルチパスを利用して空間を描写するというのは、コペルニクス的発想の変換だったそうだ。同様の発想で開発された技術がそれまでなかっただけに、基本特許も押さえられたという。

 このようなインドアでのロケーション解析のセンシングは多くの企業が研究しているが、Origin WirelessでのTime Reversal Machine技術の精度は非常に高いようだ。マイクロソフトが開催している、「インドア・ローカライゼーションコンペティション」という技術展示会で優勝した似た技術が、名刺にセットした発信器の移動した場所を約16cmの範囲で認識したのに対して、Origin Wireless社の技術なら2cmの間隔で検出できている。

 では、この技術はいったいどのようにビジネスに生かされるのか。

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