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Origin Wireless Japanの「Time Reversal Machine技術」とは?

スマートホームを一変させる異次元の室内センシング

2018年03月02日 07時00分更新

既存のWi-Fiアクセスポイントに自社技術が載せられる強み

 2012年に米国で会社を立ち上げたあと、2017年に日本でOrigin Wireless Japan株式会社は創業した。きっかけは米国企業に投資していた投資家からの紹介だ。元々は日本の企業に紹介してほしいという話を受けた代表取締役の丸茂正人氏は「そんなに面白いなら自分でやる」と日本でのビジネスを展開するべく会社を立ち上げた。

 「日本でやらせてくれって強引に引っ張ってきた。それは日本の方がWi-Fiの環境が整っているから。アメリカは国土が広すぎて、携帯電話ですら、まだ通じない地域がある。LTE化もまだ完成していないが、日本ではもう99.9%になっている。そこの違いは大きい。ビジネス化に向けて、無線の展開をテストするには、日本か韓国が世界で一番いいと思っている」(丸茂代表)

 この早い動きのきっかけとなったのが、無線通信技術のビジネス展開が急速に動き出したこと。スマホ普及にともなうデジタルデバイスの急速な性能向上にある。たとえばiPhoneのプロセッサーは一昔前のスーパーコンピューター並みの性能を搭載している。また一般的なWi-Fiアクセスポイントにも3本のマルチプルアンテナを使うMIMO技術がベースとして採用されるようになってきた。

 これらを利用することでテストや複雑な位置計算がより手軽にできるようになった。また、AWSの登場によりサーバー利用料も低下。創業当初に考えていた、高額な自社開発のハードウェアなどは不要となっていった。

 「デバイスやサーバーなど、さまざまな周辺技術のコストが下がってきたことで、 Time Reversal Machine技術の商用化がこの1、2年で見えるようになってきた」(角谷氏)

 さらにOrigin Wireless Japan株式会社が持つ無線技術を一般的なWi-Fiルーターなど、枯れたハードウェアの上にも乗せられる目処が見えたことも大きい。どれだけ優れた技術でも専用の高価なハードウェアが必要だと普及させるのは難しい。しかし、既存のハードウェアが使えるとなれば話は変わる。

 Time Reversal Machine技術が検知して使っているのは、Wi-Fi電波の中のMACレイヤーより下にある「CSI」という情報だ。これは基地局とデバイスが接続するときに最初に交換される部分のため、データを持っていない。このCSIを一筆書きのインクのように空間に飛ばすことで、空間をみる。このとき、通信のマルチパスの本数が増えれば増えるほど、ピクセル数が上がった写真のように細かく見えるようになると言うわけだ。

 現在はWi-Fiでテストしているが、今後LTE回線や5G回線にも乗せられるようになるとさらに情報製度は向上するようになる。これから急速に進化していくプラットホームになる可能性も秘めているのだ。

Origin & Botシステムの試作機

 「使い方としては、IoT領域で語られているセンシング系と、屋内で利用できないGPS代わりの位置情報の捕捉を行なうロケーショニング系。さまざまなセンサーやiBeaconなどの技術があるが、どれも普及しているとは言えない状態にある。Time Reversal Machine技術はこの両方が狙える技術」(角谷氏)

位置情報の追跡から防犯そして高齢者の転倒防止まで


 センシングとポジショニング両方に対応できるTime Reversal Machine技術。具体的な使い方もさまざまなアイデアが考えられている。

 昨年、「Society 5.0」をテーマに 開催された CEATEC JAPAN 2017 では「コミュニティ・イノベーション部門」のグランプリが「Time Reversal Machine技術に基づく空間認知エンジンとOrigin & Botシステム」に与えられた。これは今主力として展開しているスマートホームにおいて、さまざまな可能性が考えられるからだ。

 「スマートホームでの見守りやセキュリティーもできるし、スマートオフィスでは会議室やトイレの使用状況がわかったり、エレベーターの稼働状況がわかる。また、ビルの電源が落ちたときにエレベーターが何階にいるのか、その中に人がいるのか。そういうのもわずかな非常用電源とこれがエレベーターに付いていれば十分」(角谷氏)

 Time Reversal Machine技術は、Wi-Fiルーターだけでこれらのサービスが利用可能となる。商業施設の営業時間外に人が入ってきているといった動きや、空き家に人が住み込んでいる、オフィスに動きなどもすぐに検出できる。

 見守りサービスとして使う場合は、トイレに入ったあと動きがないといったことも検出できる。日中はちょっとでも動きがあれば、つつがなく生活が継続されていると判断。30分、1時間、動きがない時間が発生した場合に、その時間に応じてアラートレベルを上げていくことができる。その情報によって、電話をかける、人を送るなどの対応ができるようになる。

 「たとえば孤独死のニュースなどがあるが、あれは市の職員が独居老人の施設を、時間をかけて、ローラー作戦で見回っていると聞く。けれども、人手不足で次に家に行ったときはもう1週間たっていたという状況。亡くなる前はもちろんのこと、亡くなった後も、なるべく早く見つけるというのが、ご家族にしても物件管理側にしても、すごく大事なこととなる」(丸茂氏)

 すでに実証実験も含めた多くの声がかかっている同社だが、さらなる将来像はルーターだけにとどまらない。

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