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PC-98ファンに贈る近未来バーテンダーADV「VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action」:Steam

2018年02月09日 18時00分更新

 約30年以上前、日本ではNECから販売されていた「PCシリーズ」と言う独自のアーキテクチャで動くパーソナルコンピューターが席巻していた。数多くの名作が産まれ、数多くの美少女ゲームの宝庫であった。PC-9800シリーズはそのような経緯もあり、本体の開発段階で美少女ゲームのために“肌色”のカラーパレットが追加されたともウワサされており(限られた色しか使えなかったため)どれほどの数の美少女ゲームが発売されていたかが伺えるだろう。

筆者実家の物置でホコリを被り続けて久しいが、当時はこれでもWindows3.1搭載の最新機種であった。

 さて、今週は日本の裏側、まるで縁がないような南米のベネズエラにて、日本のレガシーが融合してしまったことで生まれた作品を紹介しよう。

 第69回はそんなベネズエラの現状と近未来をモチーフにした「VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action」を紹介する。

 

ジルとドロシー イラスト:石王マサト

 本作品は発売前から非常に期待されていたADV作品でもあり、当初はSteam外でローンチされた。だが、その後日本国内でジワジワと人気が沸騰していく様は以前紹介した「Life is Strange」と似た経緯を持つ。そのためか、本作品をテーマにした同人作品やファンアートも豊富に存在しており今でも注目度は高い。今回はそのキャッチアップとして石王マサト氏に再びイラストをお願いした。

グリッチシティへようこそ

 207X年、車は空を飛び、人間によく似たアンドロイドロボット“リリム”が生活に溶け込み、財閥が都市を牛耳り、体内に埋め込んだナノロボットで市民の生活を管理している。遠いようで近いディストピアな未来都市“グリッチシティ”が本作の舞台だ。

本作品は日本語字幕を内包しており、操作もマウス以外は使用しないのでPC初心者でも大丈夫だ。

 そんな見た目は綺麗ながら、日常生活には荒廃した都市にある管理番号“VA-11 ホールA”のVALHALLAというバーがお話の舞台だ。主人公“ジル”はそこで働いている。バーテンダーとして日々訪れるお客達の接客をするのが本作品のメインパートとなっており、その客はハスキー犬や柴犬、少女のような見た目の売春婦ロボまで幅広い客層が揃っている。

 舞台がバーということ、自身がバーテンダーであるためカクテル作りは必須。ゲームの最初に同僚であるギリアンが作り方は教えてくれる。基本はレシピブック通りの分量で、画面右端のシェイカーにドラッグし、右下のミックスのボタンを押すだけの簡単な作業である。制作必要時にはレシピブックも表示され、作るのに制限時間もないので慌てる必要もないので心配は無用だ。

注文通りのカクテルを提供できれば売り上げとなり、提供するカクテルを間違えた場合は売り上げとならず日給からミスした分が差し引きされる。

給料は一日ごとに支払われる。ボーナスは非常に大きいので頑張って提供しよう。

 給料はジルの自宅マンションの改装に使用することができるが、月内で必要な出費もあり無駄遣いはあまりできない。必要出費を捻出できなかった場合はバッドエンドとなるため買い物は慎重に行いたい。

 しかし、ジルはときたま物を欲しがるときがあり、欲しいものが買えなかった場合は次の日の出勤に大きく影響する。具体的には、客の注文を受けた際に何を作らなければいけないかプレイヤーに対して銘柄やヒントなどを復唱してくれるのだが、集中力が切れている場合は非常にくだらないことをカクテル制作時に思い出してしまうため、ヒントが出なくなってしまう。プレイヤー自身が会話を覚えていればいいが、覚えていなかった場合は感だけでその日はカクテルを提供しなければならない。

 自宅ではスマートフォンを使ってBlogの記事を読んだり、セーブしたりできる。Android端末のような操作方法になっており、画面のセンターをホールドすることで画面ロックは解除できる。“ADD APP”の部分はゲームを進めることでインストールできるアプリが徐々に解禁されていく。

一日を変え、一生を変えるカクテルを

 開店前の口癖でもあるこの言葉はゲームにおいて大きな意味を持つ。本作品でバーに訪れる客はジルを含め皆、何かを抱えて生きている。カクテルの影響や、ジルとの会話の中でジル自身も人生を見直すこともあれば、訪れた客の人生も変わることがある。

本作品は三つのチャプターに分かれており、キャラクター毎の個別ルートの他、メインルートである何故バーテンダーになったかというジルの過去を巡る物語となっている。

 そんな本作品は直球な下ネタのオンパレードでもある。冒頭でも書いた売春婦ロボの“ドロシー”を始め、24時間365日自身の生活の全てを配信する女“すとり~みんぐチャン”などはかなり奔放で、酷いときにはとある登場人物が誰と寝たかを邪推するだけで終わる日もあったりする。だが、本作品における下ネタは、居酒屋の唐揚げのレモンと似たような物である。かけるもかけないも好みだが、ないのも困るのである。

 登場人物の幅の広さに加え、性差や性的嗜好のデリケートな問題はスラム街の場末のバーという環境が物の見事に中和している。グリッチシティと言うフィルタを通し、ジルというキャラクターが、今我々が生活している世界での細々とした出来事を改めて見通し、考えるレンズになる。だが、ジルはバーテンダーとして客に対して異を立てることはあまりない。意見を尊重し、そこに自身が思うアドバイスや答えを与える。その雰囲気を気に入った客はまた訪れる。

 ジル自身は妙齢でありながら、まだ大人になることを常に恐れている。だが、プレイヤーである我々も似たような物だろう。本作品の持つ魅力は逆にジルの成長を通して自身を思い返すことにある。日々すり切れた生活をしているとは言わないが、ゲームの世界で雰囲気を飲んでみるのはいかがだろうか?

 一日、いや、もしかしたらあなたの人生も変わるかもしれない。

重苦しいことを書いたがそんな気難しいことは考えなくてもいい。最終的には自分が思うように思考すれば良いのだ。

「VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action」の推奨動作環境は?

 CPUは2Ghz以上、グラフィックメモリーは1GBと、詳しいスペックの記述がないが、CPU内蔵GPU搭載で、Windowsが快適に動く環境下であれば問題は無いかと思われる。

 本作品はPC98のCRTディスプレイを再現するためオプションでスキャンラインを入れることが可能だ。文中の画面写真では視認性のためOFFにしているが、雰囲気を楽しみたい人はONでプレイするといいだろう。

『VA-11 Hall-A: Cyberpunk Bartender Action』
●Sukeban Games
●1500円(2016年6月21日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows
ジャンル サイバーパンク、ビジュアルノベル、良BGM、物語、女性主人公
© 2014-2017 SUKEBAN GAMES LLC

■著者:rate-dat
・Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: ratedat
・Twitter:@rate_dat

■イラスト:石王マサト
・Twitter:@MASATO_Ishioh

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