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麻倉新レーベル、何で作ったのか聴いてきた

まさかの転身? 麻倉先生はなぜ評論家から音楽プロデューサーになったか

2018年01月08日 13時00分更新

アーティスト全員が集まり、なるべくワンテイクで録る

 エトレーヌの制作にあたって重視したのは「スタジオの熱気を加工せず、カプセル化して届けること」(麻倉氏)。UAレコードはレーベルの方針としてカット編集をしない「ワンテイク録音」(一発録り)にこだわっている。録音後も、基本的に素材を加工せず、最小限にとどめる。「やってもエコーをほんのわずかに加えたりする程度だ」という。

麻倉 「クラシックの録音などではカット編集の手法が良く取られます。一度通しで演奏して、不十分な部分を後から録りなおして編集素材として入れ替えるんですね。これはライブとは対極的な考え方です。完璧な演奏に近づくけれど、ライブならではのノリや流れなどは薄まってしまいます」

 通常の音源では、ボーカルを強く聴きやすくするため、コンプ処理をかけ、音圧を上げていることが多いが、「あるがままの音を届けたい」という考えから、こうした音圧競争には参加せず、エフェクト処理は最小限に抑えた。高音・低域の足し引きやダイナミックレンジの調整などもしていないそうだ。

麻倉 「こだわりは最初にいい演奏をして、いいエンジニアがそれを仕上げ、マスタリングなどの加工をなるべくしないでリリースする点。マグロを釣ったその場で冷凍するので鮮度が違う。そんなイメージです」

 また、最近ではコストや手間の関係で、演奏者ごとに異なる時間や場所で別録りした音源を組み合わせて曲に仕上げるケースも多いそうだが、スタジオに全員が集まった同時演奏にこだわっている。録音時にはポニーキャニオンのスタジオに2日間こもり、ミックスダウンの一曲に3時間以上の時間を掛けて、作成したそうだ。十数本立てたマイクを自在に操り、ミキサーの微細な調整を経てミックスダウンする塩沢氏の手腕には非常に感心したと話す。

 録音に際しては、30インチと大型のバスドラムをレンタルしてきたそうだ。実際に聴いてみると、沈み込むバスドラムのローエンド、あるいはブリブリと鳴らすベースの質感などオーディオ的な意味でも気になる録音となっている。

30インチのバスドラム(左)と普通のバスドラム(右)

低域の量感や再現性も聴きどころだ

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