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麻倉新レーベル、何で作ったのか聴いてきた

まさかの転身? 麻倉先生はなぜ評論家から音楽プロデューサーになったか

2018年01月08日 13時00分更新

 レーベルの発足は2017年の9月。第1弾のアルバム『エトレーヌ』は1月17日のリリースが決定している。すでに12月から、Amazonで先行予約を受け付けており、取材時点ではジャンル内のランキングで20位程度を占めているそうだ。

 録音と編集にはProToolsを使い、192kHz/24bitのハイレゾ録音データをCD用にマスタリングしたものを、高音質CD(UHQCD)にしてリリースする。春には192kHz/24bitのハイレゾ配信も予定しているが、その場合は別途マスタリングした音源を用いるという。

本当の音を知ってないと評論家はできないでしょ?

 なぜ「聴く立場」から「作る立場」に180度転換してみようと思ったのか。まずはそのあたりから聞いていこう。

麻倉 「なぜ始めたのか。私たちは25年ほど前からCRITICSというバンドの活動をしているのですが、このバンドに一度、情家さんをお招きして共演していただいたことがあります。その時に情家さんの声の魅力や歌詞を大切にする姿勢を目の当たりにしました。そして、CDではその素材が持つ魅力を十分に引き出しきれていないと感じたんですね。これを形にしたいというのがひとつ。

レコーディング風景

 もうひとつはオーディオ評論家は一般的に他人の作った音源を使って機器を評価しています。すでにできあがった音源を使うため、録音した現場にどんな情報があったのかを本当の意味で知っていないのです。どこまで追求すれば、音の本質に迫れるかというテーマを考えたとき、ゼロから企画を作る必要があると考えました。すべての制作工程に立ち会い、音源に本質的に知悉するのが大事なんですね。

 今回はポニーキャニオンのスタジオを使って録音をしましたが、ミックスダウンした曲をそこに置いてあるTAD製スピーカーで再生し、聴いた音を記憶し、その差分で機器再生音の評価をする。そんな職業的な興味や倫理感が根底にあります」

 A面とB面で情家さんの声のどんな個性を引き出していこうと考えているのかについても、少し詳しく聞いてみた。

麻倉 「情家さんの声には面白さがあると思います。情感たっぷりに歌う一方で、男っぽさも感じるし、高域に色気があって、ひとつに限った音色ではない。ここに二人のプロデューサーの方向感の違いが加わったらどうなるか、ここにチャレンジしてみました。私の担当部分は、しっとりと大人のジャズをクラブでまったりと楽しむイメージ。雰囲気があり、優しさ、情感、しっとり感などを表現する。一方潮さんのほうは、20代の演奏家も入っていて、もっとはっちゃけているというか。バンド演奏で鍛えた演奏者のテクニックや進行力の強い音楽性を再現する方向感で構成しています」

 第1弾にジャズヴォーカルを選んだ理由は何だろうか?

麻倉 「専門分野で固めたいと思いました。私が得意な音楽ジャンルはクラシックなんですが、ジャズも好きです。選んだのは音楽的なアプローチが面白く、できることが無限だと思ったからです。クラシックの場合、楽譜や作曲家が中心にあってそれをどう再現するかがポイントになります。演奏家の解釈で表現は変わりますが、ベートーベンの曲はベートーベンなんですね。しかしジャズの場合、選曲・編曲・即興といったクリエイティブな部分がすべて演奏者に委ねられています」

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