お店の味をご自宅で。パナソニックのコーヒー定期便「The Roast」に続くかのように、キリンのビール定期便「KIRIN HOME TAP」がはじまる。専用ビールサーバーを月額2900円でレンタルし、月額4000円で4リットル分の特製ビール「一番搾りプレミアム」を工場から直送。ビールは2リットル単位で追加できる。さながらウォーターサーバーのビール版だ。
KIRIN HOME TAP
月額6900円(税込7452円)~
6月1日サービス開始、申し込み受付中
キリン
https://hometap.kirin.co.jp
よく冷えた1リットルのビールをサーバーにセット。酸化防止加工を施したペットボトルに入っているのが新しい。木製のハンドルを手前に引くとビールが注がれ、奥に倒すと白い泡が静かに流れ出す。ビールはグラスが軽くけぶるほど冷えている。泡はなめらか、冷えているのに香りが強い。おもちゃのビールサーバーとは比べものにならない本格的な味だ。仕事中だが、うまい。
「電源があり、48時間冷たい状態を保てます。金曜日にあけて、週末に楽しんでもらい、2~3日以内に飲みきってもらうイメージですね。ビールは市販のソーダメーカーなどに使われているガスボンベのガス圧で押し出す仕組みなので、電源がなくても使えます。外にもっていっても、ベランダやテラス、グランピング程度なら使えますね」(キリン担当者)
サービス開始前にはサーバーの試作機を作り、応募者200人が試している。
「試された方には『日常のプチハレ』として使われていました。『今までは夫婦で居酒屋に行っていたけど、高級なお総菜を買ってきて、自宅で飲むのが楽しみ』という方もいますし『金曜日に早く帰るようになった』という声も聞きました」
サーバーはキリン技術研究所と、パートナー企業との共同開発。開発期間は約3年。使い勝手が悪いといわれた点を改良しつづけた。
たとえばガスボンベのつけはずし。以前はガスボンベを減圧弁に直接ねじこむ形になっていて、女性では扱いづらかった。減圧弁の機構を金型から起こしなおし、簡単につけはずしができるユニットをつくりあげた。泡出しにも苦労させられた。ハンドルさばきにコツが必要になってしまっていたため、要素部品の調整を重ね、誰でもきれいな泡が作れるような形に改良した。
パーツはほぼ日本製。はじめは海外サプライヤーも検討したが、かなりの成型パーツを金型からつくっていることもあり、結果国産でないとうまくいかなかった。
「デザインは家具のように使ってもらえるよう心がけています。デザイナーは無印良品でプロダクトデザインを担当されていた角田陽太さん。ビールメーカーのサーバーは黒や金のかっこいいデザインが多いんですが、部屋に溶け込むように形も丸く白くしています。サービスのポイントは継続して使ってもらうこと。奥さんに嫌われたら、家での居場所がなくなってしまいますので」
投資を惜しまず開発してきた最大のねらいは家庭に入りこむこと。アマゾンのようなIT企業も、注文スイッチ「Amazon Dash」や自社の流通網を通じ、消費者と直接つながれる場所を作っている。今後のデジタルマーケティングの重要性を考えるとビールメーカーとしても客との接点をもっていなければならないと考えた。今後事業が大きくなればビールサーバーに通信モジュールを搭載させ「IoT化」させる構想もある。サーバーからビールの追加注文ができるようになる可能性がある。
しかしマーケティングはたんなる戦略、サービスはあくまでもうまいビールありき。
「家庭で本格的な生ビールを、というのが、ビール屋としての本心です」
そんなこと言われたら……もう1杯試してみないと。
SPEC
KIRIN HOME TAP
サイズ:幅230×奥行283×高さ355mm
重量:4.6kg
定格電圧:AC100V 50/60Hz
使用環境温度:5〜30℃
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ、家事が趣味。0歳児の父をやっています。Facebookでおたより募集中。
人気の記事:
「谷川俊太郎さん オタクな素顔」「爆売れ高級トースターで“アップルの呪縛”解けた」「常識破りの成功 映画館に革命を」「小さな胸、折れない心 feastハヤカワ五味」
週刊アスキーの最新情報を購読しよう
本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります