週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

顧客の感情を解析して経営改善を支援するクラウドサービス「Emotion Tech」

2017年03月31日 07時00分更新

鏡を磨くだけでスコアが10ポイントアップした事例も

 NPSのスコア測定は、アンケートに回答してくれた全体の中での推奨者の割合から批判者の割合を引いたもの。たとえば、100人使った人がいて、10人が”そのサービスを探している友達や家族とかに紹介する”とする。そして、”いや絶対紹介しないと言う人が20人いたとする”と、全体の10%-20%でNPSスコアはマイナス10ポイントとなる。

 同社の支援によってNPSを劇的に改善できた事例として、あるフィットネスクラブでのできごとがある。サービスを導入して調査をしてみると、ある店舗のロイヤルティーが他の店舗に比べて低いことがわかった。データを解析すると、「更衣室」での体験がキーになっていることがわかった。さらに、テキストマイニング等の技術で深く掘り下げると「鏡が汚い」ということを解消することが、最もNPSを改善する可能性を持っていることが判明した。

 「では、更衣室の鏡をキレイにしましょうよ、と。それだけでいいから、と徹底してもらい、3ヶ月間取り組んでもらったところ、NPSが10ポイント上がった。鏡を磨いただけで」(今西氏)

 NPSのスコアが10ポイント上がると言うことは、すごく薦めたいというロイヤルカスタマーが10%増えたか、批判的な人が10%減ったか、もしくはその複合ということ。企業としてはとてもよいことで、口コミやリピートが増えるので、収益も上がってくる。

 フィットネスクラブの事例の場合、現場から上層部まで含めて見過ごされていた、「鏡が汚いから行っても気持ち的に上がらない」と言う顧客の小さな声がNPSによる分析で浮かび上がった形だ。

 「集めたデータの中には、必ず顧客の琴線に触れている因子がある。この因子の強さをとらえることが非常に重要で、これがわからないと的外れな施策になってしまう」

 ある不動産会社は、営業マンのサービスクオリティ改善のため、契約が終わった顧客にアンケートを取っていた。そこには、「不動産情報以外の情報提供が少ない」とか、「契約から引き渡しまでの間に放置し、釣った魚に餌やらないのか」といった指摘が多数寄せられたそうだ。しかし、これらを改善にしているのに、一向に効果が出ない。量的に多くても必ずしもロイヤルティーを引き上げる因子にはなってないということだ。

 そこで、Emotion Techの出番。データを因子分解したところ、一番ロイヤルティーに響いているのは、「営業マンそのものに不動産知識があるか、顧客の課題を聞けているか」などの要因が強かったのだ。ロイヤルティーにインパクトしている因子を明らかにし、経営リソースを有効にどこにさくかという課題を、数字ベースの定量的な形で話すことができるのがEmotion Techの強みだ。

 「顧客の声が重要だ」というのはある種常識でもあるので、不動産会社の例もそうだが、自社で情報を収集し、ダッシュボードツールで色々と分析している企業は多い。しかし、そのツールをどういうふうに使いこなすのか、どのようにデータを見るべきなのかという的確なロジックを持っていないケースも多い。

 「我々は、NPSの要因分析をする時も、顧客のKPI(重要業績評価指標)に沿って見せられるのが強み。まずは、収益につながるKPIを置き、それに対して影響している因子を明らかにする。そこに打ち手を打っていけば、KPIが上がり、売り上げも伸びる」(今西氏)

 適切なデータを収集するためには、設問の設計も重要だ。業種やサービスによって、適切な設問は異なってくる。顧客の課題によっても設問は変わってくる。そのあたりのサポートをできるのも同社のサービスが伸びている要因だ。

カスタマーエクスペリエンスが何よりも重要

 2016年5月には調達もしているが、今後あっても調達はもう1回くらいだそう。数年のうちのイグジットを視野に入れており、シナジーのある事業会社と提携する可能性が高いとのことだ。

 「顧客の声を聞いてビジネスをピボットできたのが、事業的には大きかった。それがなければ、従業員活性化に固執していたかもしれない。顧客側へアンテナを立てていたので、NPSの情報が入ってきたときに捉えられたと思う」(今西氏)

 NPSのサービスをローンチしてから2年弱が経過し、導入までのスピード感はどんどん上がっている。そういう意味では、もっと広げていけるという感覚を今西氏は持っている。ビジネスとしても将来性があるが、資本を持つ大手の参入も考えられるのではないだろうか。

 「昨年くらいから、KDDIや楽天、インテリジェンスなどの大企業のトップが、カスタマーエクスペリエンスが何よりも重要だと打ち出している。社内に専門の部署を作るとか、CXO(カスタマーエクスペリエンスオフィサー)を立てるという動きがある。またKPIとしてNPSを使うと公言するところもあり、参入の可能性はあり得る。その際、我々の優位性としては、蓄積したデータになる。あとは特許関係で、そのあたりは今動いているところ」

 日本でNPSを指標としてサービスを自社で作って提供しているところはほとんどないが、アメリカの場合すでに数十社はあるという。その中には、累計で300億円ほどを調達したmedallia(メダリア)などのユニコーン企業もある。これは、アメリカのCXM(カスタマーエクスペリエンスマネジメント)マーケットが立ち上がっているためだ。

 Emotion Techはこの市場を日本で啓蒙していきたい、とのこと。顧客目線の経営は顧客にとっても企業にとってもいいものだと信じ、その文化を創るべく、サービスを広めていきたいと考えている。Emotion Techが大きくなり、ライバルがどんどん入ってくる位の状態をつくりたい、と今西氏は語る。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう