「EVプライオリティモード」を設定
エンジンを回さずに走る領域を拡大
2016年は三菱自動車の問題が日本の自動車業界に影を落とした。いわゆる燃費偽装問題はすべて解決したわけではないが、2017年3月9日に国土交通省へ提出した再発防止策実施状況において、当初の再発防止策31項目の実施を2017年4月1日までに順次対策を実施することを報告している。これにより禊(みそぎ)を済ませたことになるとは言えず、今後も、真摯な「ものづくり」をしているか市場からは厳しい視線にさらされることになるだろう。だからこそ、これから三菱自動車が生み出すクルマの仕上がりというのは気になる。汚名返上をかけてエンジニアが心血注いだ製品だからこそ、厳しい目でチェックしたいとも思うし、それだけ期待もできると感じる昨今だ。
今回、紹介するのは三菱自動車のラインナップを象徴するモデルといえる「アウトランダーPHEV」だ。PHEVとはプラグイン・ハイブリッド・エレクトリック・ビークルの略称で、一般名式的にはプラグインハイブリッドと呼ばれているクルマを示す。つまり外部充電の可能なハイブリッド(エンジンとモーターで走る)カーというわけだ。
いまや流行のど真ん中といえるSUVスタイルのボディー床下には12kWhの総電力量を誇るリチウムイオンバッテリーが敷き詰められ、CHAdeMO(日本生まれの急速充電規格)と200Vコンセントからという2種類の外部充電に対応。スタイルにふさわしく、前後に定格出力が同スペックの駆動モーターを配した4WD(四輪駆動)となっていて、カタログスペックでは60km以上もバッテリーに溜めた電気だけで走ることができる。
一方、フロントには総排気量2.0リッターのガソリンエンジンが搭載され、バッテリーの電気を使いはたした後にはエンジンで発電機を回して充電しながら走ることが可能となるし、急加速や高速域ではエンジンの力をダイレクトにタイヤに伝えて走ることもできる。このあたりの制御は自動的に行なわれるため、ユーザーは難しいことは考えずに、アクセルペダルを踏んでいるだけでモーター駆動によるスムーズな走りを味わうことができるのだ。
三菱のアウトランダーPHEVは最近出たクルマというわけではない。そのデビューは2013年1月とちょっと前。しかし自動車というのはマイナーチェンジによって性能を磨き上げていくもの。今回、試乗することができたのは2017年2月に一部改良と新グレードを追加した最新モデルである。その改良における主な変更点は、バッテリーマネージメントとシャシー性能(サスペンション)の強化だ。
前者についてはバッテリーからの出し入れ両面でブラッシュアップしている。まずバッテリーからの出力は、従来比で10%ほど多く電力を引き出せるようにしているのがトピックス。4年間の経験で、バッテリーの寿命に影響を及ぼさない範囲で、電気のみで走れるシーンを増やしている。
充電では制御の改良がポイント。CHAdeMOを用いた80%までの充電において、これまでは30分かかっていたところが、25分で済むようになった。充電器が使い放題の契約であれば5分短縮しただけの話に見えるが、時間による従量課金制の充電器では少しでも充電時間が短いほうが経済的。リアルにプラグインハイブリッドを運用しているユーザーほど、このメリットは理解できるだろう。
また、プラグインハイブリッドを選ぶような環境意識の高いユーザーから「エンジンをできるだけ使わずに走りたい」という声がある。そのリクエストに応えるべく、今回の一部改良では可能な限りエンジンを(発電のために)始動させず、EV走行を優先させる「EVプライオリティモード」が新設定された。これまで設定されていなかったことも意外だが、エンジンをかけないということは、特に暖房がほとんど効かないために難しい面もあったのだという。現在は、電気温水ヒーターをオプション設定しているので、EVプライオリティモードを多用したいと考えているユーザーには、ぜひ装着してほしいとのこと。
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