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サラ・オレインや矢野顕子/上原ひろみの新譜も紹介

麻倉特薦、編集が利きにくいDSD音源を、匠の技でジャズ演奏

2017年04月05日 13時00分更新

『ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO-』
矢野顕子、上原ひろみ

 矢野顕子と上原ひろみとは超尖ったアーチスト同志のコラボレーションだ。矢野のデビュー40周年記念プロジェクトとして2016年9月15日、渋谷はオーチャードホールで開催されたレコーディング・ライヴ収録。一夜かぎりの燃えるピアノ・セッションライブだ。

 1曲目矢野顕子作曲の「東京は夜の7時」。左ピアノがアルペジォ的なオブリを弾き、センターピアノが弾けるように答える。矢野のラブリーさ万感のヴォーカルはセンターに確かに定位。音像はタイトで、フォーカスが明確だ。ダブルのピアノサウンドは重なりあい、応えあい、響きあう。予定調和ではない、その場限りの新鮮で、シャープなサウンドは聴き応え十分だ。8曲目「ラーメンたべたい」。バルトークのような細かく、叩き付けるようなピアノバッセージで、くねくねした呪文のような「ラーメン食べたい」が何回となく繰り返される不思議に説得力のあるサウンドだ。ライブらしい響きのソノリティ感があり、でも、意外にヴォーカルもピアノも明瞭なのである。

FLAC:96kHz/24bit
Concord、e-onkyo music

『ミュージック・ブック』
溝口肇

「世界の車窓から」放送30周年記念DSD11.2MHzアルバムだ。巨匠、内沼映二による録音も注目。音色が深く、キメ細かく、美しい。

 音の粒子の表面の、細かな凹凸がきれいに整地されたようなすべらかさと、暖かな音色感ウエットな響きが耳に、体に快感を感じさせる。ピアノの音色も暖かく、タッチ感が明確、明瞭だ。チェロの太さのなかに、繊細なグラテーションと、気持ちの良い伸びある名録音だ。3曲目「世界の車窓から」。ドラムスの軽快なスネアワークと、アコースティックベース、ピアノと共に奏でられるスウイングタッチのライトジャズ。アンサンブルとしての一体感と、ソロを取る時のフューチャー感が巧みにバランスしている。

WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit、DSF:5.6MHz/1bit
DSF:11.2MHz/1bit
キングレコード、e-onkyo music

『ブルックナー:交響曲第8番ハ短調 (24bit/96kHz)』
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
読売日本交響楽団

 ポーランド出身の名指揮者、“ミスターS”ことスタニスワフ・スクロヴァチェフスキ(Stanis?aw Skrowaczewski、1923年10月3日 - 2017年2月21日)は、晩年、桂冠名誉指揮者として親しく読売日本交響楽団に客演していた。本ハイレゾは2016年1月21日の東京芸術劇場でのライブ収録だ。2017年5月にも来日が予定されていた。

 微視的でなく、ライブらしい巨視的な録音。各プルトのひとりひとりの音が個別的に録られるのではなく、プルトが合奏して発する重奏的な音が会場に広く拡散し、反射を繰り返し、ようやく客席まで届くという音の飛翔のドキュメンタリーが目で見えるような、ソノリティ重視の録音だ。トータルとしての合奏の多重性というブルックナーが目指した独特な世界観のある部分は、この録音で聴くことができる。スクロバチェフスキー追悼としての作品性が高い名演奏、名録音だ。

WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
DENON、e-onkyo music

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