週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

サラ・オレインや矢野顕子/上原ひろみの新譜も紹介

麻倉特薦、編集が利きにくいDSD音源を、匠の技でジャズ演奏

2017年04月05日 13時00分更新

『ラーメンな女たち -LIVE IN TOKYO-』
矢野顕子、上原ひろみ

 矢野顕子と上原ひろみとは超尖ったアーチスト同志のコラボレーションだ。矢野のデビュー40周年記念プロジェクトとして2016年9月15日、渋谷はオーチャードホールで開催されたレコーディング・ライヴ収録。一夜かぎりの燃えるピアノ・セッションライブだ。

 1曲目矢野顕子作曲の「東京は夜の7時」。左ピアノがアルペジォ的なオブリを弾き、センターピアノが弾けるように答える。矢野のラブリーさ万感のヴォーカルはセンターに確かに定位。音像はタイトで、フォーカスが明確だ。ダブルのピアノサウンドは重なりあい、応えあい、響きあう。予定調和ではない、その場限りの新鮮で、シャープなサウンドは聴き応え十分だ。8曲目「ラーメンたべたい」。バルトークのような細かく、叩き付けるようなピアノバッセージで、くねくねした呪文のような「ラーメン食べたい」が何回となく繰り返される不思議に説得力のあるサウンドだ。ライブらしい響きのソノリティ感があり、でも、意外にヴォーカルもピアノも明瞭なのである。

FLAC:96kHz/24bit
Concord、e-onkyo music

『ミュージック・ブック』
溝口肇

「世界の車窓から」放送30周年記念DSD11.2MHzアルバムだ。巨匠、内沼映二による録音も注目。音色が深く、キメ細かく、美しい。

 音の粒子の表面の、細かな凹凸がきれいに整地されたようなすべらかさと、暖かな音色感ウエットな響きが耳に、体に快感を感じさせる。ピアノの音色も暖かく、タッチ感が明確、明瞭だ。チェロの太さのなかに、繊細なグラテーションと、気持ちの良い伸びある名録音だ。3曲目「世界の車窓から」。ドラムスの軽快なスネアワークと、アコースティックベース、ピアノと共に奏でられるスウイングタッチのライトジャズ。アンサンブルとしての一体感と、ソロを取る時のフューチャー感が巧みにバランスしている。

WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit、DSF:5.6MHz/1bit
DSF:11.2MHz/1bit
キングレコード、e-onkyo music

『ブルックナー:交響曲第8番ハ短調 (24bit/96kHz)』
スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ
読売日本交響楽団

 ポーランド出身の名指揮者、“ミスターS”ことスタニスワフ・スクロヴァチェフスキ(Stanis?aw Skrowaczewski、1923年10月3日 - 2017年2月21日)は、晩年、桂冠名誉指揮者として親しく読売日本交響楽団に客演していた。本ハイレゾは2016年1月21日の東京芸術劇場でのライブ収録だ。2017年5月にも来日が予定されていた。

 微視的でなく、ライブらしい巨視的な録音。各プルトのひとりひとりの音が個別的に録られるのではなく、プルトが合奏して発する重奏的な音が会場に広く拡散し、反射を繰り返し、ようやく客席まで届くという音の飛翔のドキュメンタリーが目で見えるような、ソノリティ重視の録音だ。トータルとしての合奏の多重性というブルックナーが目指した独特な世界観のある部分は、この録音で聴くことができる。スクロバチェフスキー追悼としての作品性が高い名演奏、名録音だ。

WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
DENON、e-onkyo music

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

この連載の記事