週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

定番高音質レーベル2Lから、アリスまで

麻倉推薦:斬新な売り方にも注目したい反田恭平のピアノ

2017年07月30日 11時00分更新

 評論家・麻倉怜士先生による、今月もぜひ聴いておきたい“ハイレゾ音源”集。おすすめの曲には「特薦」「推薦」のマークもつけています。e-onkyo musicなどハイレゾ配信サイトをチェックして、ぜひ体験してみてください!!

『月の光~リサイタル・ピース第1集(96kHz/24bit)』
反田恭平

 反田恭平のコンサートアイデアが面白い。昨年8月の浜離宮朝日ホールでは、前半のライヴ演奏をCD-Rに収録して、終演後に販売した。本アルバムはこの夏秋のツアーの曲目そのもの。つまりこれを聴いて"予習"しようというわけだ。音楽業界はすべてが保守的だが、反田の売り方は斬新だ。

 シューベルト・アンプロンプチュ第一番。ハ短調の冒頭の和音から生じる倍音の多さに驚嘆。さすがハイレゾ。次の右手の単旋律のクリヤーで美的な音。音楽的な意味でのDレンジの広大さと共に、物理音としてのDレンジの広さも刮目だ。ピアノの直接音と間接音のバランスも好適で、タッチのディテールが明瞭に分かると共に、そこから会場に拡がるソノリティの美しさも格別だ。ピアノ音楽は、このような環境で聴きたいと思わせる名録音である。コンサートの予習音源としても効果的だが、現実には、これほどの音の良いホール(秩父ミューズパーク音楽堂)も珍しい。8曲目、反田のテーマソング「献呈」はロマンティックな歌いが、高解像度で捉えられている。2017年4月3-5日、セッション録音。

WAV:96kHz/24bit、FLAC:96kHz/24bit
DENON、e-onkyo music

『Major & minor』
Oslo String Quartet

 高音質レーベルとしてグラミー賞常連のノルウエー2Lの新譜。DSF5.6MHzを聴く。峻烈にして尖鋭な弦楽アンサンブル。音のエネルギーが、まさに文字通り噴出する鮮烈な演奏とその見事な記録だ。

 2Lのレパートリーとしてはベートーヴェン、シューベルトは例外的にベーシックなものだが、演奏自体の若々しさ、溌剌さをウルトライハイクオリティな録音でキャプチャーしている。2チャンネルであっても、豊かな会場的なソノリティは十分に感じられる。一音一音が溌剌と、ヴィヴットに進行し、楽器から発せられた音の粒子が、無重力のようにふわふわと空間に浮いている。細部表現と全体のまとまり感とのバランスもとてもよい。

FLAC:88.2kHz/24bit、176.4kHz/24bit
DSF:2.8MHz/1bit、DSF:5.6MHz/1bit
5.1ch WAV:96kHz/24bit、5.1ch WAV:192kHz/24bit
5.1ch FLAC:96kHz/24bit、5.1ch FLAC:192kHz/24bit
5.1ch Dolby HD:96kHz/24bit、5.1ch Dolby HD 192kHz/24bit
DSF:11.2MHz/1bit
FLAC:352.8kHz/24bit
MQA Studio 352.8kHz/24bit
2L、e-onkyo music

『ブラームス:弦楽六重奏曲 第1番・第2番』
ベルリン・フィルハーモニー八重奏団員

 ヴィオラの土屋邦雄が在籍していた時代のベルリン・フィルハーモニー八重奏団の名アルバム。アナログとDSDが高次元で合い見舞えると、ここまで音楽的感興に溢れた音になるのかと驚嘆。音の芯は剛毅でありながら、その表面はソフトにしてしなやか。

 そんな本楽団の特徴がアナログ+DSDで、余すところなく、捉えられている。ステレオ感も充実し、66年当時の黄金のフィリップス録音の高い水準が痛切に分かる。彼らの音楽的な、そして表現意欲に溢れた奏風は、ロマン派の作品にまことにふさわしい。感情が揺れ動くブラームスの弦楽六重奏曲はまさに最適な作品だ。

 第1番・第2楽章ニ短調: Andante ma moderatoの有名なニ短調のバリエーションはロマンティックで峻厳、そして溢れんばかりの音楽的血潮の熱さ!テーマ旋律のトリルが、何ともチャーミングだ。第一変奏のチェロの旋律に被るヴァイオリンとビオラのオブリガードの麗しさ。1966年1月と1968年10月にベルリン・ヨハネスシュテイフトで録音。

DSF:2.8MHz/1bit
Decca、e-onkyo music

『Contigo en La Distancia』
~遠く離れていても~
喜多直毅×田中信正

 ガット弦(羊や牛の腸が材料)のヴァイオリンとピアノのデュオによる中南米のクラシック曲集。ひじょうに透明度が高く、細部まで鮮明な最新録音だ。音像が微細な部分まで、丁寧に描写され、2つのスピーカーの間に2つの楽器が端正に位置する。

 響きの音色が美しくもクリヤーで、まるで眼前の演奏を聴いているようなインティメットな臨場感だ。直接音、間接音のどちらも解像度が高く、音場に含まれるホールのアンビエントも豊潤。録音会場の三鷹芸術文化センターのコンパクトで端正な音響的特徴が、よく捉えられている。

 ガット弦の表情は細部まで豊かで、表情づけの単位が金属弦より遙かに細かくなり、その分、音楽的なボキャブラリーが豊潤。ピアノの音色も美しい。録音エンジニアはUNAMAS レーベルのミック沢口氏。2016年11月29~30日、リニアPCM192kHz/24bit収録。

WAV:192kHz/24bit
FLAC:192kHz/24bit
5.0ch WAV:192kHz/24bit
5.0ch flac 192kHz/24bit
5.0ch Dolby HD 192kHz/24bit
RME Premium Recordings、e-onkyo music

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事