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情報の非対称性解消で問われるのは不動産仲介業の本質

売却仲介約50万円 マンションマーケットが目指す嘘のない不動産テック

2016年10月28日 07時00分更新

 「不動産の世界は、不動産業者が情報を持ち、不動産を購入する消費者には情報がない、極端に情報が非対称な状況にある。テクノロジーを活用することでその状況を変革したい」と話すのは、マンションマーケット創業者で代表取締役である吉田紘祐氏。

 日本全国のマンションの相場情報を提供サービス『マンションマーケット』と、東京23区のマンションの売却仲介サービス『スマート売却』を展開する同社はテクノロジーを活用することで不動産取引をどのように変えていこうとしているのか、そして今後目指しているビジネスとはどんなものなのだろうか。

 不動産テックスタートアップが目指す業界の変革について聞いてみた。

株式会社マンションマーケット代表取締役の吉田紘祐氏

業者問い合わせをせずにマンション相場を知ることができるサイト

 マンションマーケットは、マンションの相場情報を簡単に、無料で調べることができるウェブサイト。価格情報だけでなく、東京23区の中古マンションの売却仲介サービス『スマート売却』を提供する。チャットを使って担当者であるコンサルタントと会話できるなど、不動産を売却したい消費者にとってはカジュアルに話しを進めることができるうえ、マンション売却時の手数料を物件価格に関わらず、定額49万8000円に設定。一定の価格以上であれば、他社よりも手数料を抑えることができることを強みとして、多くの顧客を獲得している。

 サービスを運営する株式会社マンションマーケットは、2014年5月に設立。同年7月に相場情報サイトのベータ版をオープンした。10月には『スマート売却』の提供を開始し、2015年8月に正式リリースとなった。

 現在は情報提供エリアを全国に拡大し、情報提供のマンションマーケット、仲介サービススマート売却という二つのサービスを提供している。

 創業者である吉田氏は、「従来の不動産業にテクノロジーを活用した、不動産テックが当社のビジネス。これまでは各業者に問い合わせなければ入手できなかった”マンションがいくらで買える/売れる”という情報をサイト上で気軽に取得できるようにした。従来の不動産会社が一方的に情報を持っている業界構造、情報の非対称性を変えたいと思ってこのビジネスを始めた」と設立のきっかけを話す。

 インターネット普及によって情報の流れは大きく変わった。たとえば不動産の世界では、不動産流通機構による「レインズ(Real Estate Information Network System)」という共通のデータベースが構築されている。この仕組みによって、沖縄の不動産業者が北海道の案件を扱うことができるようになるなど、大きな変化が起こっている。

 しかし、吉田氏はまだ変化は不十分だと感じている。「レインズの情報は不動産事業者の中でだけ共有されている。不動産を売りたい、買いたい一般消費者には依然として情報が公開されていない状況が続いている」

 レインズの情報が広く公開されていない理由はいろいろとある。消費者が情報を持つことで、不動産事業者が商売をしにくくなるのではないか。また巨額が動くようなBtoBビジネスにおいては、広く情報が公開されることがデメリットになるのではないかといった懸念があるためとされている。

 「それならば、自分達の手でわかりやすく、情報が手に入りやすいサービスを提供しようと立ち上げた開発したのが、マンションマーケットだった。2014年7月のベータ版開設段階では、提供している情報は、東京都江東区の湾岸エリアの30数棟のマンションのみからスタートした」(吉田氏)

 その後、情報提供だけでなく、実際にマンションを売る人のサポートをする仲介サービス「スマート売却」を開始した。

 マンションマーケットの登録者数、スマート売却の利用者数は公表していないものの、「大変順調に登録者数、利用者数は増加している。好調といっていい数字」だと吉田氏は笑顔を見せる。現在、社員は15人。今期中にはサービスで黒字化する見通しだという。

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