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時代に逆らうヒット“お宝”満載豪華本「トレジャーブック」

2016年11月18日 11時00分更新

 お宝本、トレジャーブックという大判の本がある。マニアが喜ぶ“秘蔵のお宝”のレプリカが入った豪華な本で、アメリカなどでは誕生日に贈るギフトブックとして売れているそうだ。モチーフはミッキーマウス、ジョン・レノン、ジミ・ヘンドリックスなどさまざま。未公開の写真、資料、手紙のレプリカなどを大量に収蔵し、本として読むだけでなく、お宝を額装して部屋に飾ったりして楽しめる。

 モノとして楽しむための本。当世流行の電子書籍とは逆を行くアナログな魅力をもつトレジャーブックはいま、日本でも注目を集めはじめている。

 たとえば講談社が2006年に刊行したオードリー・ヘップバーンのトレジャーブック『the audrey hepburn treasures』は7560円と高価な価格にも関わらず、女性を中心に2万5000部を販売した。以降は読売ジャイアンツの長嶋茂雄終身名誉監督など、日本人にもなじみのあるモチーフの本が次々登場している。

 今年12月には『ウルトラマン トレジャーズ』も刊行予定。オンラインショップ・アスキーストアには予約受付開始後すぐファンからのアクセスが集まった。

 長年トレジャーブック制作に携わってきた北川啓二さんによれば、トレジャーブックの編集は「まさに宝探し」。奇跡のような出会いがあって成立する、さながら研究者のように“濃い”書籍編集がヒットのカギになっていた。

ウルトラマン トレジャーズ

●発行発売:エフェットホールディング株式会社
●企画編集:Team Treasures
●仕様:B4変型 ※ハードカバー付
    180P、写真約500枚、収蔵レプリカお宝資料50点(予定)
●価格:1万7000円(税別)
●全面協力:円谷プロダクション、M1号 他
●発売予定日:2016年12月8日
●予約受付期間:2016年9月9日12時〜2016年11月30日
●URL http://ascii-store.jp/p/2016090600001/?aid=expedition2

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ファンからファンをたどる旅

トレジャーブック制作に携わってきた北川啓二さん

 北川さんが初めて出会ったトレジャーブックはジョン・レノン。いまから13年前ジョン・レノンミュージアムに訪れたのがきっかけだ。ミュージアムショップで売っていた一冊の本『ジョン・レノン レジェンド』で初めてトレジャーブックという存在に触れ、ずっしりとした本のページをめくるたびに興奮した。

 「ハンカチが入っていたり、ジョンが幼いころに描いた絵や、むかしの名刺なんかが入っていたりして。これはなんと面白い本だろうと、シアトルにある出版社に連絡をとって『ぜひアジアでの出版契約を結びたい』と話を進めたんです」

 もともと音楽出身で出版業界には疎かった北川さん。一大決心して、このジャンルの書籍の企画制作を始めることにしたのだった。当時、講談社の役員の知り合いの計らいで、冒頭のオードリー・ヘップバーンを皮切りにスター・ウォーズ、ミッキーマウス、世界の野鳥などを立て続けに刊行した。

 その後2008年、小学館から『ジミ・ヘンドリックス レジェンド』を刊行したとき「どうせなら日本ならではのトレジャーブックを作りたい」という思いが浮かんできた。そこで手がけたのが世界のホームラン王、王貞治。やはり王さんのファンだったというぶんか社の社長と一緒になってゼロからつくることになった。この編集がまさに宝探し。もっとも印象深いトレジャーは一通の手紙だったそうだ。


奇跡的に見つかった50年前の手紙

「hide」「阪神タイガース」「王貞治」「長嶋茂雄」など日本独自のトレジャーブックも多数出版

 「北海道に居住されている、ご高齢の養護学校関係者がお宝資料を持っておられるかもしれないというので、北日本新聞さんに電話をしたんです。するとスポーツ担当記者の方が『そういえば50年前にそういう人がいたなあ』と調べてくださり、娘さんご夫婦に連絡をしていただいた。すぐお宅に訪問し、この本の主旨をお話したところ、お宅の奥から『こんな手紙がありますよ!』と見せていただいた。それがおよそ50年前、王貞治さんが巨人でデビューしてまだ間もなく、ホームラン王にもなっていなかった新人選手だった時代の手紙だったんです。

 札幌の養護学校の生徒さんが、当時長嶋さんの大ファンで、是非札幌で試合があるときに、学校に長嶋さんをお呼びしたいと、球団に手紙を書かれたのです。長嶋さんは快くOKを出したのですが、結局事情があって行けなくなってしまい、球団広報担当者が『それじゃ、代わりに王さん!行ってくれないか!』と頼んだところ、王さんも快く引き受けた。そのとき王さんが訪問を承諾する旨を書いたのがこの手紙なんです。その内容が素晴らしくよかった。『せっかく呼んでいただいたんだからこんな自分でよければ待っていてください、必ず行きますからね!』と実に誠意溢れる内容なのです。王貞治さん、まだ20歳だったのですよ。それがすごい!それ以来、王さんとこの養護学校との交流は三十数年間ずっと続き、ほぼ毎年のように養護学校を訪ねていらしたのです」

 そうして家族を通じ、まさにそのとき養護学校に勤めていた先生に連絡がとれた。50年前のこの手紙を預かった北川さんは「ここまでやってもらえたらお返しをしなきゃいけない」と王さんにビデオメッセージ収録を依頼。映像を持って再び養護学校を訪れ、体育館で生徒や先生全員を前に上映会をした。上映会には話のきっかけとなった北日本新聞社も取材に訪れ「数十年振りの王貞治さんからのメッセージ」という形で記事になったそうだ。

 この「王貞治トレジャーズ」には、王さんが巨人へのチーム入りが決まって初めてユニフォームを着たときの写真、王さんの『友の会』第一号など貴重なお宝を集め、出版にこぎつけた。刊行後には予想外の“嬉しい誤算”も。長嶋茂雄終身名誉監督のもとに、この王さんの本を献本したところ『これは素晴らしい本だね、私も協力しますよ!』と事務所から連絡が来た。その後、長嶋監督のトレジャーブックも東京サンケイスポーツ創刊50周年記念として刊行された。売れ行きはというと、北川さんはにっこり笑って「見事に売れました」。

 かくして北川さんはトレジャーブックづくりのノウハウを蓄え、いまはウルトラマンのお宝を編集している。しかし北川さんは少し意外なことを言った。いくらヒットしてもビジネスとしてはトントンになってしまうという。


お宝と一緒に「当時の空気」も伝えたい

 トレジャーブックは調査・収集に膨大な手間と時間がかかる。ウルトラマン本を作りはじめたのは2014年ですでに2年が過ぎている。「ビジネスとしてこんなに時間をかけてどうするのかとみなさん、おっしゃいます」と北川さんは苦笑する。

 しかし同時にトレジャーブックにはただのマニア本とはちがう魅力がなければならないという北川さんの思いも強い。初代ウルトラマンが放送されたのは1966年。ウルトラマン本は「1966年の子供たちへ」というコンセプトのもと、ウルトラマンが制作に至った時代背景や秘話も入れこみたいと意気込んでいる。

 たとえばウルトラマンシリーズには沖縄が重要な意味をもつ。制作者には沖縄出身者も多く、また1966年当時の沖縄は米国統治下にあった。朝日新聞による脚本家・上原正三さんへの取材記事によれば「ウルトラマンが地球を無償で守る構図は、安保体制化での米国と日本、また本土と沖縄の姿の暗示」でもあったという。

 そもそもウルトラマンのベースになった特撮番組「ウルトラQ」も高度経済成長時代の皮肉だったり、円谷プロダクション初代社長の円谷英二氏が大ヒットさせた『ゴジラ』にしてもビキニ諸島沖での水爆実験が暗にモチーフだったり、特撮映画を通して、当時の世相とは切り離すことができない作りになっている。

 とはいえ本は決して堅苦しいものにはせず、今まで以上に「お宝」満載の楽しい一冊にすることで、1966年当時の子供たちに懐かしんでもらいたいと北川さん。

 想定読者はウルトラマンリアルタイム世代の50~60代、毎日毎日、学校でウルトラマンの話をしていた当時の子供たち。彼らが納得するものを作らなければならないと、専門スタッフたちと本づくりが佳境にさしかかっても「このお宝も、あのお宝も入れないと」と忙しい。最後まで専門マニアの意見を重視する編集作業になりそうだが、「オタクの方々の協力がないと、絶対作れないからね。感謝感謝ですよ」と北川さんは楽しそうに話していた。

 『ウルトラマントレジャーズ』は12月上旬発売予定。アスキーストアで予約を受け付けている

ウルトラマン トレジャーズ

●発行発売:エフェットホールディング株式会社
●企画編集:Team Treasures
●仕様:B4変型 ※ハードカバー付
    180P、写真約500枚、収蔵レプリカお宝資料50点(予定)
●価格:1万7000円(税別)
●全面協力:円谷プロダクション、M1号 他
●発売予定日:2016年12月8日
●予約受付期間:2016年9月9日12時〜2016年11月30日
●URL http://ascii-store.jp/p/2016090600001/?aid=expedition2

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書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)

1983年生まれ、家事が趣味のカジメン。来年パパに進化する予定です。Facebookでおたより募集中

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