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産業を革新するSupernovaのDemoDay #1.explosionレポート

「自分をロボットにしてみた」働きたくないFintechサービスが優勝

2016年08月12日 15時00分更新

 10年間で2000億円以上の新産業創出を行うスタートアップを生み出す共創型オープンコミュニティ・Supernova。2015年10月31日まで第1次募集が実施され、定期的に新たな領域に挑戦する起業家を募集し続けている。今回は7月20日に開催された第1回DemoDayのレポートをお届けする。

そもそもSupernovaの起業家育成とは何なのか

 Supernovaには複数の企業が共同参加しており、シリアルアントレプレナー(連続起業家)や各種専門家、投資家、事業会社、技術者など複数のプレイヤーが支援を行っている。今回のデモデイでも、優勝者にはAWS・マイクロソフト・IBMが並んで賞品を提供するなど、特定の事業者によらない形でのアクセラレータープログラム運営を行っている。

 また挑戦領域を”情報革命前からある産業”、いわゆるITが入っていない領域としているのも大きな特徴。さらにその中でも、「あり方が独特であり、産業として評価が見えづらい、技術的・構造的に複雑であり、投資の回収期間も読めない」ような領域での挑戦を後押しすることで、リスク以上の社会的な価値創出を見いだす狙いがある。

 今回のピッチでは、卒業審査に合格した企業も含めて8社が登壇。半年~1年半での急激な成長を狙いとした同プログラムの中で、すでに動き始めている新産業の芽吹きを確認してほしい。

優勝は、「自分をロボットにしてみた」ロボット投信

 当日のピッチで1位に選ばれたのはロボット投信だ。

 同社の狙いは金融に関連するコミュニケーションの最適化であり、手始めに投資信託の領域で自動化システムのサービス提供を開始している。だが、いわゆるFintechで言われるような資産運用の自動化を図った消費者向けのロボアドバイザーというわけではない。

 これまではコールセンターで電話対応していた投資信託の相談を、分析データの提供や自動応答(電話やSMS、さらにはプッシュ通知など)で対応するというものだ。同様な省力化では、タブレットでの最新情報を伝えるものはあるが、高齢者の利用が多いこともあり実際はなかなか使われてないという。

 また投資信託は、株や債券などが複数入り混じっているうえに、配当や為替などを毎日複雑な計算して算出しなければならない。利用者は電話でプロである担当者に窓口経由でいちいち確認している現状だ。

 そのため提供するサービス内容は、電話の応答システムや投資マーケティングデータ配信、マーケット分析となっている。人件費が経費の40%とも言われる大手証券会社においては、電話対応をはじめとするこれらの情報が自動化されることでのメリットは大きい。簡単にはIT化できなかった金融情報の流通自体を自動化させる狙いがロボット投信にはある。

 同社の野口哲代表は、もともと投資信託業界におり、マーケットやマーケティング情報を証券会社に提供していたが、「自分と同じことをロボットが代わりにできないか」と考え起業した。約96兆円とも言われる投信市場において、電話とスマホで効果的に自動化するだけでなく、将来的には、取引窓口で顔認識で対応させるロボットも予定しているという。

 野口哲代表は、「本当にやりたいのは人間そのものの置き換え。人間の業務を自動化するのはよく言われるが、AIを入れてもたとえば従来の銀行業務はうまく稼働しない」と語る。

 銀行で見れば業務の幅が広いため、高性能なAIを導入したとしても、顧客が何を希望するかは断定できない。それを投資信託という狭いジャンルに押し込むことで、機械が判定しやすくなり、自動化できる部分に強みがある。

 「投資信託から横に広げていけば、(最終的には)人間の業務を自動化できる。働くのは好きではないので、家でごろごろしていても、証券マンやエコノミスト水準のコンテンツが自動で生まれる、それがパブリッシュされる世の中が来る。自分はそれをやろうとしている」(野口代表)

”風景”を産業にしてしまうコンテンツプラットフォーマー

 続いて2位に選ばれたのは、4K風景動画配信サービスを手掛けるLandSkipだ。

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 同社が新たな産業として流通させるのは風景だ。「土地に縛られたものをデジタルコンテンツのパッケージで流通させている。春夏秋冬の癒しの絶景動画やVRコンテンツの風景配信。コンテンツホルダーとして空間との相性がいい」と下村一樹代表は説明する。

 正式ローンチも進んでおり、アップルTVアプリやスカパーでの風景を映し続けるコンテンツを放送中。 そのほか広告事業ではマイクロアドとの連携でサイネージに風景を日替わり配信するなどを行っている。

植物工場での収益を最適化する仕組み

 3位に選ばれたのは、植物工場の可能性をプレゼンしたFARMSHIPの安田瑞希代表。

 LED人工光で野菜を生育する植物工場は、栽培環境を完全にコントロールすることができるため、高付加価値をもった栽培の難しい作物を大量安定的に栽培ができるという。

 同社の強みは、ハードではなく、工程・栽培・品質から流通までを管理するマネジメントシステム。広がり始めたばかりだが、そのノウハウをライセンシングすることで、中長期的には大規模工場の収益化を行うとしている。現在の首都圏マーケットシェアでは、大手スーパーをはじめ、都内の有名店舗への農産物実績がすでにある。

各分野での産業革新スタートアップが多数登場

 ここからは残る5社を紹介。まずはオーディエンス賞に選ばれた、製造業×インターネットで産業構造のリデザインをかかげるAperzaだ。

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 設備産業でのメディア、マッチング、コマースを海外も含めて広く展開する。 製造業版の価格.comともいえるような『アペルザ』が8月には始まる予定となっている。

 そのほか、ピッチ登壇企業は以下のとおり。

ClunchStyle

 定期購入しづらい生花を月額のサービス『Bloome LIFE』として展開。メディアと口コミのみだが、インスタグラムなどで波及しているという。個人向けだけでないBtoBの展開も今後は予定している。

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Gifted Agent

 偏りを生かす社会の在り方を探るスタートアップ。

 高機能自閉障害や発達障害者の能力が生かせる経済圏をつくることを目的に、社会の教育の枠組みに収まらない才能を生かすための教育事業を行っている。

 社会の需要と能力がマッチしておらず、75%が優秀な能力があるのに就業できていない現状を打開するため、プログラミングやデザインを教育し、企業にIT人材として紹介するビジネスモデルを展開している。

WhatsMoney

 日本人の67%が使っているという住宅ローンでの課題解決を行う不動産領域でのスタートアップ。

 たとえば5000万円のマンション購入の際、同じ物件でも住宅ローンによって1500万近く違いがある。そのような初期費用が高く、かつ世界一複雑な日本の住宅ローンを一瞬でサーチするサービスを提供する。

PersonalStock

 知識と作品のストーリーを最適化して届けるPersonalStock社によるサービスが『Perzzle』(パーズル)。現在はβ版のクローズドテスト中で本格的なローンチ前。

 「世界初のbot番組プラットフォーム」として、各種コンテンツの流通をより最適化させ、新しい知識や作品の流通を活性化させるとしている。

もっともっとわけのわからない会社を求む!

 Supenovaはここまでの実績として、デモデイまでの投資総額は4億5000万円にのぼっており、選抜企業27社のうち、エンジェルから投資を受けた割合は6割を超えている。Supernovaでは「従来のVC等以上に、実務もこなすエンジェル投資家(Playing Angel)の存在感が強い。日本でもエンジェル投資文化が芽吹いてきている」と発表しており、当初見込み以上の実績が見えているとした。

 Supenovaは産業革新をかかげるだけあり、一度聞いただけでは何がポイントなのかわからないサービスや事業が大きな可能性を秘めていることを会場では示唆。8月期の募集締め切りは終わったばかりだが、運営サイドとしては「もっともっとわけのわからない会社を求む!」と会場で熱く語っていた。挑戦する領域がこれまでにないもので、考えるサービスがまったく理解されないという起業家・イントレプレナーはぜひ門をたたいてほしい。

 また、さらなる新たな試みとしては、大企業での連携を狙ったオープンイノベーション型の多領域特化型アクセラレータも始動するという。東京都が2013年度より実施している「インキュベーションHUB推進プロジェクト」にも採択され、「スタートアップコミュニティを核とした、オープンイノベーション型新産業創出エコシステムの構築」をテーマとした動きが始まるとのことだ。

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