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生命にかかわる情報を扱う慎重さとベンチャーならではのスピードを両立させたい

医療体験を変えるベンチャー・メドレーが担うミッションとは

医療制度の壁に一石を投じたい

 現在新たに取り組んでいるのは、英国などではすでに実用化に入りつつあるITによる遠隔医療だ。メドレーでは2016年2月、遠隔診療の支援システムである「CLINICS(クリニクス)」を発表した。

 CLINICSを医療機関が導入することで、医師が可能であると判断すれば、PCやスマホを使ってオンラインで診療を受けられる。広く普及すれば、患者の通院負担を減らし、多忙などの理由により通院を途中でやめてしまうというケースも減らすことができる。しかし「実際に取り組んでみると、(技術的にも法整備や規制などの面でも)さまざまなしがらみがあった」(豊田氏)と、開発は複雑な要件を求められた。サービスリリース後も、社内の弁護士や医師、開発チームとともに、最適な遠隔診療のあり方を常に議論しながら、普及を進めているという。

 米国や欧州の企業が、あらゆる業界で起こっている"デジタルディスラプション(digital disruption)"のトレンドそのままに医療の世界でも大きなチャレンジを続けていることについては、「医療に破壊という概念を持ち込む必要はないと思っている。"Do Not Harm"(患者を傷つけてはならない)という医療の大前提の元で、医療システムに必要な変化を起こしていきたい」と語る。

遠隔医療では、ビデオやチャットでの診察のほか、薬の配送など大きく医療の枠組みが変わる可能性がある

 「日本の医療の現場を変えなければならない、この思いは誰もが抱いているはず。たとえば日本の女性の寿命の長さは世界一なのに、医療に対する満足度はものすごく低い。医療は人生の節目に誰もが必ず向き合わなければならないのに、その満足度が低いというのはとても残念なこと。こうした状況を、医療と患者を結ぶプラットホーム作りを通じて、我々は変えていきたい。これまで日本の医療は”変化や多様性を嫌ってきた面”があったのは確か。メドレーはそこに一石を投じるサービスだが、そうした多様性が生まれることを”破壊”と呼ぶかどうかは、まだわからない。ただサービスを支えるシステムに関しては、先ほども言ったとおり”ディスラプティブ”に行くことはありえる。メドレーもAWSクラウド上で提供しているなど、新しいサービスには新しい技術を積極的に取り入れていきたい」(豊田氏)

日本の医療現場のための試行錯誤

 メドレーは、いい意味での「破壊」の可能性を感じるサービスだ。(メディアという立場を完全に棚上げた考えだが、)かつてよりも、ネット上の情報が信頼できないものになっているという部分を感じるところがある人は多いはずだ。Google検索でのサジェスト汚染は叫ばれるが、検索結果自体が特定の形で偏っていることをわれわれは認識しなければならない。

 医療だけでなく、子育てや健康についての情報も、検索上位にあることで確実に「ビジネスでの目的」に利用されやすい。特定の生活習慣を断じて、その解決方法としてモノやサービスを売るというのは最たる例だ。ちょっと調べればたった1つのソースしかないようなことでも、簡単に人はだませてしまう。だが、生命にかかわる医療の分野で、そのような情報汚染はやっかいであり、医療現場にとっても迷惑な話でしかない。現場とは離れたところからだからこそ、間接的に実際の診療にあたっている医師や看護師を補佐できるというあり方がメドレーでは成立する。

 また将来、メドレーをはじめとした医療プラットホームの存在によって「医療情報での非対称性」がなくなった際に現在とは少し違った医療との付き合い方が見えてくる。日本の場合は人口が減少していく中、より効率性の高いやり方が求められてくるはずで、その壮大な準備ととらえてもこのサービスは面白い。

疾患の関連性までビジュアライズされ表示されている

 この1年、代表取締役医師としてひたすらに走ってきたという豊田氏。医療関係者やエンジニアリングチームなど、多くの人を巻き込み、メッセージを発し続けたことで、メドレーは大きな成長を遂げつつある。

 「医師という道を選んだのは高校生のときに人間の脳に興味をもったから。人の手足も感情も司る脳のしくみを一生かけてでも追求したい、その思いから脳神経外科医になった。いまはメドレーのマネジメントが中心のため医療の現場を離れているが、医療に対する思いは高校生のころから変わらない」――試行錯誤を続けながらも生涯をかけて医療にかかわっていくという覚悟が、日本の医療の現場をすこしずつ、だが確実に変えているのは確かなようだ。

瀧口浩平代表取締役社長(左)と豊田氏

●メドレー株式会社
2009年6月設立。瀧口浩平代表取締役社長のもと「ジョブメドレー」での人材事業から創業。
2015年2月より豊田氏が加わり、オンライン病気事典「メドレー」をローンチ。2015年4月には介護施設の口コミサイト「介護のほんね」(グリーより譲渡)、2016年2月にはオンライン通院システム「CLINICS」を開始。
社員数は2015年12月現在で83名。事業拡大に向け、デザイナー・エンジニアを中心に積極的な採用を行っている。

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