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新世代ナチュラルサウンドを標榜したフラッグシップ、ZYLON振動板採用

レトロな見た目に反して最先端、ヤマハ「NS-5000」を聴く

2016年06月03日 21時30分更新

残響の表現がこんなに美しい機種は初めて、音色も明るく明瞭

 アキュフェーズのセパレートアンプ「C-3850」と「M-6200」×2、ヤマハのUSB DAC内蔵SACDプレーヤー「CD-S3000」を組み合わせたデモも実施された。ケーブルは内部配線と同じ、PC Triple-Cを使用。インコネはバランス接続。

 試聴ソースとしては、ディスク再生とファイル再生の両方が選択された。

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25 (UK盤) ~ Adele
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Ah! mio cor (Handel Arias)

 まずはアデルの『25』から5曲目「Remedy」。マグダレーナ・コジェナーのヘンデル・アリア集(Ah! mio cor)。その後、ハイレゾのファイル再生に移り、女性ボーカルSHANTIの『SHANTI'S LULLABY』(24bit/96kHz)、『天上のオルガン~ バロック音楽を中心にパイプオルガンとポジティフオルガンで聴く大ホールと礼拝堂の響き』から「G線上のアリア」のパイプオルガン演奏(DSD5.6MHz)

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ベスト・オブ・ベスト・アンド・モア~MJO結成25周年記念
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新倉 瞳/エルガー:チェロ協奏曲

 もう一度ディスク再生に戻り、マンハッタン・ジャズ・オーケストラの25周年Blu-spec CD『ベスト・オブ・ベスト・アンド・モア~MJO結成25周年記念』から「シング・シング・シング」のビッグバンドジャズ演奏、最後にチェリスト新倉瞳の『エルガー:チェロ協奏曲』(SACD)が再生された。

 全体を通して強く感じたのは、楽器や声の明るい音色と明瞭さ。そして消える音の美しさだ。

 音の立ち上がりの速さを売りにするスピーカーは多いが、このスピーカーは立ち上がりが速く、エッジが利いているというだけでない。消え去る音の表現にすごく気を使っている印象だ。

 例えば、Remedyでアデルのハスキーな声がすっと消えていく残響の長さ。あるいはSHANTI'S LULLABYで際立つ、子音やブレス、声のちょっとしたかすれ具合などのニュアンスだ。SHANTIの声が、空間にパッと沸き上がったあとすっと消えていく様子が美しい。

 声だけでなく楽器の音も、軽やかにすがすがしく立ち上がるが、消える際の残響に雑味がない点は心地よさにつながる。ここまで爽快な音の消え方をするスピーカーはないのではないか。自然な残響が耳に心地よく、長時間聴いても耳障りにならない。

 またタイミングも正確。必要なものが必要なタイミングで正確に入ってくる印象だ。特に楽器の音色が、本物の楽器らしい点はヤマハならではというべきか。さらに演奏のニュアンスも克明に描写する。例えば、パイプオルガンの音を聞くと、量感だけではなく、ペダルの動きまで明確。演奏の巧拙まで含めてあらわになる印象だ。

 音色の表現は多彩。古楽の弦の音色も、ビッグバンドを構成する多彩なブラス系楽器の音色も巧みに描き分けるオールマイティーさを持つ。音量を上げても破たんしない。Sing, Sing, Singの強烈なドラムの風圧感には圧倒された。

 もちろん声の表現も魅力的だ。歌手の声質や歌い方だけでなく、息遣いや体全体の支えといったニュアンスまで切々と伝わってくる。例えば、アデルの声はこんなハスキーで深くて荒々しかったのかと再認識したし、一方でコジェナーが高音を張り、雑味のない倍音が天へ天へと伸びていくさまも印象的だ。ボーカル曲を聴くと、音像がすこし大きめにも思えるが、その分空間に包まれる感じもある。

 そして、倍音の雑味のなさ、伸び方はメリハリの効いた音の再現にプラスに働いている印象だ。新倉瞳のチェロを聴いても、音色の明るさ、明瞭感、そして空間表現など聴きどころは多い。明瞭で、鮮やかで、軽やかで、癖がない。ヤマハがいう、新世代のナチュラルサウンドを垣間見れた。

 NS-5000の価格は1本81万円。専用スタンドの「SPS-5000」も1台8万1000円で用意されている。本体サイズは幅393×奥行き381×高さ690mmで、重さは約35㎏(1台)。インピーダンスは6Ω。出力音圧は88dB/m/2.83V。再生周波数帯域は23Hz~40kHz(-10dB)とハイレゾ再生にも耐えうる。スパイク部を含んだ、スピーカースタンドの高さは304mm。重量は8㎏。

 なお発売に伴い、内部線材と同じPC Triple-Cを使用したSAEC製スピーカーケーブル「SPC-850」(3.5m×2本)に、着脱式のYラグ/バナナプラグ端子(8個)をセットにしてプレゼントするキャンペーンも実施する。定価6万円相当。全国でのキャラバン試聴会も10月末まで引き続き、計画されているそうなので、興味のある人はヤマハのウェブサイトをチェックしてほしい。

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