経営者兼クリエイターが牽引するVRゲーム開発
第3セッション「VRで生まれるヒットゲーム」で登壇したパネリストの面々は、市場そのものが成熟していない中にあっても、かなり恵まれた環境でVRのコンテンツ制作を手掛けることができている先駆者たちだ。
コロプラの代表取締役社長である馬場功淳氏は、「VRが全ての人のものになっていく」ことを前提に、事業を展開している。コロプラではDK2時代の2014年8月にリリースした「the 射的!VR」を皮切りに、Oculus Rift、HTC Vive向けを含めて現在まで5本のVRゲームをリリース。現在では40~50名規模のVR専門チームで、複数タイトルの開発に取り組んでいるという。
その馬場氏をしても、筆者が囲み取材で直接聞いた所によれば「VRがビジネスの成立する市場となるまでには、1年半から2年はかかると考えている」と、今後しばらくの“VR黎明期”においてはVRコンテンツから直接の利益を上げる想定はしていないようだ。ここが、予算の決済権をもたない非経営者がたのクリエイターにとって辛い所である。
例えば、同セッションで登壇したバンダイナムコエンターテインメントの原田勝弘は、PSVR向けの実験作として有名な「サマーレッスン」の開発や、4月にお台場にオープンした「VRZONE Project i Can」の展開に深く関わっている。それでいながら、VRコンテンツやサービスの企画を決済権者に納得させるには「VRならではの、集団的プレゼン力の弱さという課題が引き続きある」とし、クリエイターの立場として企画実現の難しさを代弁していた。
そんな原田氏が「羨ましい」というもう一人の登壇者が、米国にVR専門の事業会社Enhance Gamesを立ち上げ、PSVRローンチに向けて「Rez Infinite」を開発する水口哲也氏。水口氏は、昨年のPS関連イベントで披露した「Rez Infinite」用の全身体感スーツを「勢いで作った」など、自身がクリエイターであり、経営者でもあることからのフットワークの軽さを語った。
とはいえ、原田氏が代弁するように、多くのクリエイターは予算の決定権を持たないケースが多い。ゲーム関連のスタートアップ企業についても、ハードウェア関連に比べると投資を受けるのが難しい現状もあるようだ。
例えば、投資家マインドが語られたセッションで、グリーの青柳氏は「シリコンバレーでも、コンテンツへの投資は及び腰。市場が先か、コンテンツが先かという、チキンエッグの問題がつきまとっている」といったことを語っている。VRコンテンツの威力は、HMDをかぶって初めて分かる。その魅力を伝え、決裁権者を納得させるのが、従来のゲームより難しい。原田氏がいうように「集団的プレゼン力の弱さ」という課題、そして投資家側にとっては、企画の価値を理解し、投資判断をするための「最後の一歩」をどうするか、という課題がある。
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