研究所から生まれた画期的手法で米をデータ化する
慶應義塾大学先端生命科学研究所が世界で注目を集めたのは「メタボローム解析」と、それを応用した研究の数々だ。
メタボローム解析は生体内にある代謝物を網羅的に解析する手法で、集めた膨大なデータから仮説を導きだす研究をしているという。冨田教授いわく、仮説を立て、仮説に基づくデータを集め、理論立てていく通常の研究と手法が異なるそうだ。
この解析法と研究を発展させ、わずかな唾液や血液からさまざまな種類のがんを早期発見できたり、うつ病の診断にも使われているそうだ。画期的ともいわれるこれらの技術は研究者たちの枠を超え、テレビや新聞にも取り上げられた。
このメタボローム解析、当初は医療に役立てようとしていたが、あるとき農業にも適用できると考えたそうだ。
そして山形のブランド米として全国に発売された「つや姫」の成分を解析、コシヒカリと比較した結果を発表した。発表はつや姫が発売されたわずか1週間後。ブランドとして定着させるために、タイミングを図ってしっかり準備していたのだろう。
研究の結果、こしひかりと比べてつや姫は旨みアミノ酸が非常に多いことがわかったという。データでつや姫の美味しさを証明できたことになる。
研究所では日本酒も解析したと冨田教授は話す。
「プロの利き酒師に飲んでもらい、研究所でもデータ化し、どういう味がするときにどんな成分なのかを解析した。またビンに詰めて、時間の経過も解析した。すると、アミノ酸が減って糖分が増えることがわかった。つまりまろやかになっていくということ。これは熟成だ。こうしたことをサイエンティックに裏付けできた。ちなみに1滴あれば解析できるので、ほとんどは実験廃棄物として処理した。(笑)」
余談だがお酒が好きという冨田教授は示唆的なことも語る。
「日本酒は発酵のプロセス。麹菌や酵母菌を足す工程があるが、私は空気中をただよう土着菌や、人の皮膚に共生している菌などが発酵食品に影響を与えていると思う。まったくおなじ工法なのに場所によって、あるいは毎年味が違うのはそういうことなのではないか」
話が若干それたが、このような環境の中で生まれたのがSpiberという企業だ。
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